Research Abstract |
海底堆積ゴミが沿岸漁業に与える影響を明らかにするため,小型機船底曳網の漁場である鹿児島湾と博多湾およびチリメンジャコの原料となるイワシ類の仔稚魚を対象とした「バッチ網」漁場である鹿児島県吹上浜沖を対象に,海底ゴミの組成調査と聞き取り調査を実施した。 [方法]鹿児島湾での調査は,設計網口幅8m,目合(袋網)20.2mmの簡易式底曳網を用いて,湾内8定点(水深70m〜227m)において2004年1月から10月までに計39回の曳網調査を行った。入網物は,船上で生物と生物以外の入網物(以下,ゴミと称す)に分け,ゴミ全てを研究室に持ち帰り乾燥させた後,自然物(軽石,流木,葉等)と人工物(プラスチック類,ガラス類等)に分類し,最大長,個数,重量を記録した。博多湾での調査は,2004年5月8日に行われた「博多湾漁場クリーンアップ作戦」で海底から回収されたゴミを同じく分類した。吹上浜沖では,バッチ網に混入するゴミの実態とチリメンジャコへの加工過程におけるゴミの影響について聞き取り調査を実施した。 [結果]鹿児島湾では,508個,8,477.5gの人工物を回収した。人工物で最も多かったアイテムは,フィルム状プラスチック破片(48.6%),続いてテグス・ロープ類(30.5%)であった。博多湾では1,520個の人工物が回収され,その内訳は,プラスチック袋類が21.6%,飲料缶が19.9%,飲料瓶が15.5%と鹿児島湾と大きく異なった。飲料瓶を色別に分類すると,中国製の緑色瓶がその76.2%を占め,漁場内に錨泊する中国鮮魚運搬船からゴミが投棄されていることが明らかになった。吹上沖では,チリメンジャコに微小なプラスチック類や陸上植物等が混入することが明らかになった。漁網へのゴミ混入による被害は,漁具の破損や回収物の処分費用の負担といった問題に留まらず,漁獲物を傷つけ商品価値をなくす重量物や油分を含むものの存在や,分別作業量を増大させ,食品の安全性に影響を及ぼす微小なゴミによる問題も明らかになった。
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