Research Abstract |
平成17年度は,越境漂着ごみに悩む長崎県対馬市と内湾域における周辺都市起源ごみに悩む兵庫県淡路島の漁業者,水産加工業者を対象に聞取調査を実施した。 対馬市では,漂流している網やロープによるイカ釣り道具の破損,定置網への大型ロープや網,流木の絡まり,旋網・底曳網でドラム缶の混獲,全ての漁業種においてスクリューへの漁網,ロープ片,釣り糸などの絡まり,ビニール袋によるエンジン冷却用取水口の閉塞,流木による漁船の損傷などの被害が報告された。水産資源への影響としては,荷造用ストラップバンドの魚体への食い込み,漂流漁網の魚への絡まりをみることがあるという。また漂流漁網がひじきに絡まり、それらを根こそぎ引き抜いてしまうという事例もあった。水産加工業者の話では,アオサへのビニール,漁網,廃油ボール,プラスチック破片,発砲スチロールなどの異物,特に発砲スチロールの混入が14〜15年前頃から顕著になり,ひどいときには乾燥アオサ1kgを洗うのに1人で7時間もかかるという。海岸で採取される海草類は,漁業者から購入後,加工前に異物除去コストが莫大なため,経営的に大変厳しい状況にあるという。 また大阪湾に面する淡路島佐野漁協では,昭和40年代から海の汚染に悩まされており,特に冬に大阪や神戸から流れてくる重油による海苔への被害が大きかったという。50年代には産業廃棄物や大型廃品(自動車,単車,冷蔵庫,テレビ,家庭用ガスボンベ等)の不法投棄が目立つようになり,エビ漁場としての海底が荒れていたが,現在は20年前頃に比べるとかなり状況がよくなっているという。しかしこの調査後,同じ淡路島の洲本漁協から「底曳網の中はごみだらけでその中から少しの魚を探すといった感じの日がほとんどだ」という情報も入手した。このように現在の海洋ごみ問題は,漁業を基盤とする地域の人々の仕事や生活のあり方を変えるまでに至った。
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