Research Abstract |
昨年度,我々は健康なアユ,コイ,ニジマス,ワカサギ,ウナギの好中球活性酸素産生能(RBA)を測定し,他魚種に比ベアユは極めて高いことを明らかにした.本年度研究では,アユまたはコイの腹腔に大腸菌死菌を接種し,菌接種前の腎臓中にストックされている好中球(腎臓好中球)と腹腔に遊走した好中球(腹腔好中球)のRBAを比較することで,炎症に伴うアユの好中球primingをRBAの観点から調べ,さらにコイの好中球primingと比較した。 【材料・方法】腎臓・血液・腹腔から白血球浮遊液を作製し,PMAを刺激剤としてフローサイトメトリーおよび化学発光法にて好中球RBAを測定した. 【結果】腎臓好中球の多くは菌接種後,血流を介して腹腔に移動し,腹腔好中球数は12時間後にピークになった.この時のRBAを測定したところ,腎臓好中球と比べ明らかに高く,腹腔好中球のRBAが亢進したことがわかった.一方アユでは,腎臓好中球の段階で高く,さらなるRBAの亢進は認められなかった.また,protein kinase C阻害剤存在下でRBAを測定したところ,コイ腎臓好中球に比べ,腹腔好中球のRBAは大きく阻害され,炎症に伴いPKC経路が活性化しIBAが亢進したと考えられた.一方,アユでは両好中球のRBAに違いは無かった.さらに,PMA以外の刺激剤(ザイモザン,オプソニン化ザイモザン,ザイモザン処理血清など)を用いた場合でも,コイ腎臓好中球と比べ腹腔好中球のRBAは明らかに高かったが,アユでは腎臓好中球ですでに高く,腹腔好中球との違いは認められなかった. 以上のことから,コイ好中球は,炎症時にプライミングされRBAが亢進するのに対して,アユ好中球は,腎臓に貯蔵されている段階ですでに高いRBAを発揮できる状態にあると考えられた.
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