Research Abstract |
「疲労の蓄積」,「精神集中度の低下」など,ヒューマン・エラーが原因した農作業事故を未然に防ぐ方策として,前年度は生理心理学分野で研究されている指尖脈波のカオス処理法を利用した新たな耳朶脈波による「生体情報診断システム」を開発し,主として静的作業における精神負担について検討した。その結果,精神集中が要求される作業では,アトラクタが変形し,リアプノブ指数が増大することが分かったので,本年度は,さらにこれを確かめるため,室内及び野外において静的並びに動的作業を行い,本システムが作業者の精神心理状態把握に有効か否かについて検討した。 2台のカオス解析システムを用い,同一被験者が同一作業を同時に行ったときの指尖及び耳朶脈波を測定し,脈波振幅,アトラクタ,リアプノフ指数を調べた。(1)微弱電流を通した狭小溝に沿って鉄筆を接触しないようトレース作業を行った結果,耳朶脈波の方が精神集中度を明確に表すこと,(2)市販の計算ドリルを用い,計算・安静後,クラッシック音楽を聴かせると,リラックス状態となり,リアプノブ指数は小さくなることが分かった。また,(3)傾斜転倒台に乗用型草刈り機を載せ,これを等高線方向,上り方向及び下り方向へ向け,傾斜角を0°〜30°まで連続又は断続的に変化させた結果,連続昇降の方がリアプノフ指数が大きく,またアトラクタも比較的大きくなり,心的影響の大きいことが確認された。これは実際の傾斜地走行で感ずる緊張感をよく表しているものと考えることができる。さらに,(4)刈払機を用い,塀際作業を行った結果,リアプノブ指数は6000rpm時で3.5程度,8000rpm時で4.7程度と大きくなり,塀際作業では精神負荷の大きいことを具体的数値で示すことができた。
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