2004 Fiscal Year Annual Research Report
高度情報化社会を構成する画像提示機器の視覚系への影響の定量評価法と予防基準の確立
Project/Area Number |
15591868
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 康夫 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (40221329)
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Keywords | IT / 視運動性眼振 / 近見反応 / 瞳孔運動 / 立体映像 / ヴァーチャルリアリティ / 仮想現実感 / 回旋 |
Research Abstract |
本研究の学術的な特色、独創的な点は、視覚情報提示機器が視覚系に及ぼす影響を主観的なインプレッションではなく、反射性の眼球運動、瞳孔運動のパラメータを複数組み合わせることで客観的に評価することであり、特に随意的には生じ得ない回旋眼球運動を高精度の三次元眼球運動記録をもとに解析することと、視覚調節への影響を他覚的計測が可能な瞳孔運動として解析、評価することにあった。しかしながら、回旋眼球運動では、立体映像負荷が内包する輻湊と調節の乖離が不随意的に生じる視運動性眼振の利得に影響を与えると予想したのだが、刺激平面の水平視差の存在が利得を低下させるという影響は認めたもの、調節の影響は認められず、輻湊と調節の乖離の影響は少ないことが明らかとなった。これに対して、近見反応時の瞳孔運動検査が新しいIT技術の中核となる画像提示機器の視覚系に与える影響を評価するための方法として非常に有用であることが明らかとなった。特に、人工現実感を構成するうえで重要な3次元(立体)映像負荷の影響評価指標としては、これまで報告されている調節のステップ応答検査よりも鋭敏であることが示唆された。近見反応時の瞳孔運動検査において、われわれが定義した縮瞳散瞳時間比(平均瞳孔径より縮瞳している時間に対する散瞳している時間の比、squeeze ratio, SQRT)は視覚系に与える影響の客観的な評価に適していると考えられた.また、近見反応は、高齢者でも測定することが可能であることから、高齢者をも含めた広範囲の被験者を対象とする人体影響を評価する統一された検査指標となりうるものと考えられた。この指標は、種々の機器の視覚系への影響を定量的に評価する方法の確立、また、悪影響を予防する基準の確立のたたき台となりうるものである。
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