2004 Fiscal Year Annual Research Report
顎口腔疾患の分光学的診断技術に関する基礎的,臨床的研究
Project/Area Number |
15592102
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
佐野 和生 福井大学, 医学部, 教授 (20145270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 憲雄 福井大学, 医学部, 助手 (40209961)
小笠原 利行 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (20260565)
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Keywords | ラマン分光法 / 分子のfingerprint / マッピング |
Research Abstract |
ラマン分光法は非侵襲的で、常温下で微小領域の分子や結晶に関する情報を得ることができる手法である。測定するサンプルに特別な処理も必要とせず、スペクトルの測定であれば短時間でデータを得ることができる。また、再現性が高いことも特徴である。スペクトルは、分子のfingerprintととも呼ばれ、分子の様々な特徴がスペクトル上の決まった吸収帯にピークとして現れる。さらに、スペクトルの帰属する分子の存在を半定量北することが可能である。マッピング表示は測定領域を図示化しており、分子の分布を視覚的に認識する際に非常に有用である。 唾石症は、唾液腺によくみられる疾患である。唾液腺内やその排出管内に唾石が形成されることにより生じる。唾石の成因については、剥離した上皮や細菌塊などの有機物が核となり、その周囲にカルシウム塩が層状に沈着し形成されると考えられているが、正確なメカニズムはいまだ解明されていない。昨年度の歯牙の分析において、960cm^<-1>のリン酸ラマンスペクトルは、ピークが強くリン酸の分析に有用であることを確認した。この事象は、石灰化物をラマン分光法にて分析した関係論文においても同様であった。唾石の主成分はリン酸カルシウムであることから、唾石中でのリン酸の分布についてリン酸ラマンスペクトルを用いて分析した。唾石の中央にリン酸をあまり含んでいないスポットが確認され、その領城を中心にリン酸は同心円状に分布していた。またこの中心部のリン酸の低領域は顕微鏡像においても唾石の中心に位置し、同心円伏構造の中心であり、唾石の核であると考えられた。よって、分析に用いた唾石は何らかの有機質を核に持ち、その周囲に同心円状にカルシウム塩の沈着が生じ形成された可能性が高いことが示唆された。 今後は、癌組織を用い、その癌組織に特徴的なスペクトルをとらえ、正常組織との識別や、癌組織から正常組織への移行部に関して研究を進める予定である。
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Research Products
(2 results)