2003 Fiscal Year Annual Research Report
武満徹の映画音楽における語法の継承性と実験性の解明
Project/Area Number |
15720023
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
小泉 恭子 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (10273822)
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Keywords | 武満 徹 / 映画音楽 / 新音楽学 |
Research Abstract |
本研究は、武満徹が残した芸術音楽への評価や研究が年々積み重なっていくのに対し、まだ学術研究において顧みられることの少ない武満の映画音楽作品という領域に焦点を絞り、その語法を、「継承性」と「実験性」をキーワードに明らかにすることを目的としている。初年度の平成15年度は、武満がもっとも多くの作品を手がけた篠田正浩監督の映画への音楽のうち、武満自らが脚色も担当した「心中天網島」(1969)の音構造を詳細に分析した。まず、文楽や歌舞伎の「心中天網島」と比較し、映画において新しく加えられたシーンを取り上げ、そこにつけられた音・音楽の特徴について考察した。本作品のサウンドトラックは、「日本伝統音楽」「日本以外の諸国の伝統音楽」「人間の声」「効果音」の4種の音・音楽から構成されるが、団扇太鼓や拍子木、大長寺の鐘の音といった効果音については、その構成法のヒントをミシェル・ファーノの映画音楽手法に得ていることがわかった。また、サウンドトラックで重要な役割を果たす琵琶の音色や奏法については、研究者自身が実際に薩摩琵琶の演奏に携わることで、その独自性や三味線との相違点などについての技術的・美学的理解を深めた。以上の研究成果は、平成15年7月にCanadaのMontreal (McGill University)で開催されたInternational Association for the Study of Popular Music, 12th Biennial Conferenceで口述発表した。発表原稿は、帰国後のリライトと英文校閲を経て、同国際学会のプロシーディングス(平成16年発行予定)、に掲載予定である。 さらに、武満が1960年代の映画音楽の作曲において影響を受けたと考えられる国内外の音楽家や映画監督、思想家についても調査を行った。とくに、ピエル・パオロ・パゾリーニの映画における音楽について考察し、武満の映画音楽への影響を検討した。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Kyoko Koizumi: "Film music of Toru Takemitsu : Sound and Silence in Double Suicide (Shinju Ten no Amijima)"The Proceedings of the IASPM 12^<th> Conference, McGill University, Montreal. (2003年9月受理, 発行予定). (2004)