2003 Fiscal Year Annual Research Report
病態時の薬物消化管吸収の変化におよぼす薬物トランスポーターの影響
Project/Area Number |
15790092
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
成橋 和正 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (50293387)
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Keywords | トランスポーター / 遺伝子発現変動 / 消化管障害 / 胆汁鬱滞 / メトトレキサート / ロイコボリン / PepT1 / MRP2 |
Research Abstract |
病態時に消化管での薬物輸送能が変化するのか、その時、薬物トランスポーターの発現量は変動するのかどうかを検討するためにモデル動物を作製し検討した。 消化管障害時モデルラットを抗癌剤メトトレキサート(MTX)大量投与により作製し、ロイコボリン(LV)投与による救援時のトランスポーターの遺伝子発現変動と、in vivoにおける薬物吸収能との相関性について検討した。小腸粘膜重量はMTX投与で減少しLV救援で増加し、それぞれ、小腸形態の障害・回復がみられた。内部標準遺伝子であるGAPDHに対するPepT1ならびにP-糖タンパク質(P-gp)の相対的発現量は、いずれも障害時で減少、救援回復時で増加した。小腸全体での発現量を発現数として解析するために、擬似的ではあるが、相対的発現量に粘膜湿重量を掛け合わせたところ、発現数変動はより顕著なものとなった。PepT1の良好な基質であるセファレキシン経口投与後のAUCは、消化管障害時では減少し、救援回復時では上昇がみられた。さらに、両者の間には有意な相関性が得られたことより、本障害・救援モデルラット小腸でのPepT1発現数の変動が、in vivoでのセファレキシン吸収量を規定する要因の1つとなっていることが示唆された。 また、胆汁鬱滞モデルとして胆管結紮ラットにおける消化管のトランスポーター遺伝子発現量を定量した。結紮により、肝機能検査値は異常を示した。小腸でのASBT遺伝子発現量は結紮3日で上昇し、その後、低下した。一方、 MRP2 mRNAの発現量は結紮4週間で低下した。小腸組織でパラアミノ馬尿酸は分泌指向輸送を示し、この分泌方向の輸送はアニオン性化合物により阻害され、MRP2欠損ラットEHBRでも、結紮4週間ラットの小腸組織でもこの分泌方向の輸送が低下した。したがって、胆管結紮による小腸MRP2遺伝子の発現量の低下は、機能的な低下を伴っている可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 成橋和正, 安田幸代 ら: "MTX投与時のLV救援効果に対する消化管の機能的ならびに分子的評価"第13回日本医療薬学会年会講演要旨集. 167 (2003)
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[Publications] 成橋和正, 安田幸代 ら: "消化管障害時・回復時のトランスポーターの発現と薬物吸収能の相関性"第18回日本薬物動態学会年会講演要旨集. 289 (2003)
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[Publications] 中村多妃子, 成橋和正 ら: "胆汁鬱滞モデルラットにおけるトランスポーター発現量の変動"第18回日本薬物動態学会年会講演要旨集. 289 (2003)