2015 Fiscal Year Annual Research Report
次世代積雪物理量測定技術開発と精密積雪物理モデルに基づく雪氷圏変動監視手法の確立
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15H01733
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
山口 悟 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 雪氷防災研究センター, 主任研究員 (70425510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庭野 匡思 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (10515026)
青木 輝夫 気象庁気象研究所, 気候研究部, 室長 (30354492)
的場 澄人 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30391163)
中村 一樹 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 任期付研究員 (50725231)
石元 裕史 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 室長 (70281136)
本吉 弘岐 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 主任研究員 (70571462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 積雪の光学的特性 / 比表面積 / 微細構造 / 雪氷圏変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
積雪の光学特性を表す物理要素として比表面積に着目し、防災科学技術研究所 新庄雪氷環境実験所(以下新庄)の低温実験室(人工雪(樹枝状結晶、氷球))ならびに北海道東部の積雪域で、メタン吸着(BET)装置、波長1.3 μmのレーザ光反射率を用いたIceCube装置、近赤外(NIR)カメラ(波長0.9μm)、μ-CT装置ならびに目視観測に関する比較観測を行った。その結果、BET装置とIceCube装置は比較的良い一致が見られた。また、NIRカメラは、BET装置に比べてバイアス誤差はあるものの、一回の測定で積雪断面の2次元測定が可能で野外観測において大きなメリットがあった。目視観測は観測者依存性があり、BET装置やIceCube装置に対して測定値のばらつきはあるものの、大きな違いはなく、短時間、軽量、無電源など多くのメリットがあった。 光散乱粒子モデル開発のための計算機資源の準備を行うとともに、マイクロCTデータを用いた積雪粒子モデル構築のための基礎データを得た。 2015/2016冬期に、北海道大学低温科学研究所、新庄並びに防災科学研究所 雪氷防災研究センター(以下長岡)の3か所において、気象観測並びに断面観測を継続して行った。また札幌、長岡においては、積雪断面観測と同時に不純物測定のための積雪試料採取も行った。それと合わせて長岡の露場の観測小屋に光学式気中パーティクルカウンターを設置した。融雪期初期に積雪表面に不溶性不純物が濃縮するプロセスを明らかにするために、積雪中の不溶性不純物濃度を少量の試料で測定するポータブル濁度計を用いる測定方法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
防災科学技術研究所 新庄雪氷環境実験所で行った実験を基に、積雪の微細構造に関するマイクロCTデータのサンプルを入手し、画像処理とシミュレーションによって個別粒子を抽出することができた。また整備した計算機環境で幾何光学近似法を用いた抽出粒子散乱特性のテスト計算を行った。 気象観測並びに積雪断面観測は、当初予定していた頻度と精度で実施できた。北海道大学 低温科学研究所においては、融雪期の積雪表面における不純物濃度の濃縮プロセスを詳細に調べるための新しい分析方法の検討を行った。また防災科学技術研究所 雪氷防災研究センターにおいては、積雪中の不純物濃度の測定のための積雪不純物のサンプルを収集するとともに大気中のエーロゾルのモニタリングを開始した。 積雪粒径の測定手法の相互比較では大まかに、BET装置とIceCube装置の精度が比較的信頼できそうであることが分かった。しかし、野外での測定を考えると両手法ともに測定時間や設置などの制約があるため、NIRカメラや目視観測の利用も併用する価値がある。おおまかな分類ができたと言う点で今年度の目標には達成できた。IceCube装置は重量が約20kgあり、野外観測は可能であるが、設置に時間を要し、移動観測は事実上不可能である。そこで本研究では小型、軽量、可搬型の同装置を開発した(Hand-held IceCube装置)。本装置を上記や野外観測でテストした結果、積分球内部の硫酸バリウムが水溶性のため、耐久性に問題のあることが判明した。また、熱・光学式のカーボン分析装置による測定は予定通り実施できた。 このように本研究計画の初年度に予定していた基礎データの収集はほぼ達成された。次年度以降、その解析に本格的に着手し、成果の論文発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
放射伝達理論に基づく高精度光散乱粒子モデルの開発に関しては、積雪の微細構造に関するマイクロCTデータの解析事例を増やし、積雪粒子の特徴的な形状とその散乱特性、そのサイズ依存性などを明らかにする。それらを基に積雪向け光散乱粒子モデルを改良し、雪氷表面物理量を衛星データから抽出するために必要なシステム開発の試作を行う。 積雪変質モデルに関しては、札幌、新庄、長岡で取得した過去10年分の気象・雪氷データを用いて、計算の実行並びにモデルの精度検証を行う。なお積雪断面観測から、積雪の高密度化と焼結プロセスにタイムラグがあり、低温環境の乾雪に特徴的な傾向である可能性が見出されつつある。それに関してこれまで取得されたデータを使い、モデル化に向けて、詳細なプロセスを考察する。さらに積雪内部における不純物の移動形態を室内実験から明らかにし、その定式化を試みる。 詳細な積雪物理量(積雪不純物濃度並びに積雪粒径)の測定を行うための手法に関しては、積雪中の不溶性不純物濃度の簡便な測定法を確立し、融雪期の積雪表面における不純物濃度の濃縮プロセスを明らかにする。さらに異なった雪質の積雪に対して、昨年に続いて比表面積の測定装置の相互比較実験を野外及び低温実験室で実施する。また、昨年度試作したHand-held IceCube装置の耐水対策として、窓板の設置などの改善を実施する。 札幌、新庄、長岡における気象・雪氷モニタリングを継続するとともに、冬期の不純物サンプルと大気中のエーロゾルデータと比較することで大気中の粗大エーロゾル粒子と積雪不純物の関係を求める。
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Research Products
(10 results)