2015 Fiscal Year Annual Research Report
サプライチェーンが産み出す価値と環境・資源ストレスの統合的ホットスポット分析
Project/Area Number |
15H01750
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森口 祐一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30157888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
醍醐 市朗 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20396774)
福島 康裕 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40345096)
中谷 隼 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40436522)
松八重 一代 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50374997)
菊池 康紀 東京大学, プラチナ社会総括寄付講座, 准教授 (70545649)
栗島 英明 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (80392611)
工藤 祐揮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (90391094)
中島 謙一 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (90400457)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サプライチェーン / ホットスポット / 環境・資源ストレス / 機能 / 国際物質フロー分析 / 地域間産業連関表 / ニッケル / 産業廃棄物 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. レアメタルを含む資源やエネルギーの分野の専門家と,それらの安定確保の問題やサプライチェーンに潜む様々なリスク要因について議論した。また,欧米におけるLCAの動向に精通した専門家から,社会LCAのデータベースや評価指標の最新動向について情報提供を受けるとともに,サプライチェーン管理への適用可能性について議論した。 2. 持続可能性を評価する際に,機能(社会価値)を設定するための枠組みを構築することを目的とした。資源の有限性や機能とのデカップリング,資源効率や環境効率に関する世界的な動向をレビューした上で,サプライチェーンの機能評価についての検討を進めた。 3. 国際的な鉱物資源のサプライチェーンについて,潜在的なリスク要因を広範に把握するための枠組みを設計した。さらに,ニッケルを対象とした事例収集を進めると共に,鉱山や製錬所の所在情報や要因別リスク情報の整理を進めた。また,ニッケル鉱石の産出国における生態系の多様性を背景に,採掘に伴う土地改変をストレス要因として分析した。 4. 国内の地域間産業連関表を用いて,地域別・部門別の需要や供給に起因する,地域別・種類別の産業廃棄物の発生量を評価した。各地域における各最終需要部門に起因して,どの地域のどの内生部門に需要が発生し,どの地域で各種類の産業廃棄物がどれだけ発生しているか,6 次元の分析を行った。 5. 研究分担者が確立してきたサプライチェーンの脆弱性評価の枠組みをベースとして,ストレス要因のホットスポット分析のソフトウェア実装に着手した。本年度は,任意の製品に対してストレス要因となる国内生産プロセスや輸入原料を特定し,対象製品からストレス要因までの経路をサンキー図によって可視化できる,ソフトウェアのプロトタイプを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. ストレス要因の定義・指標開発:当該分野の専門家との情報交換・議論を通して,鉱物資源や社会的影響に関わるストレス要因についての現状や,指標開発の状況を調査することができた。対象とする評価領域の選定および指標開発は,当初の研究実施計画では本年度に完了させる予定であったが,研究分担者間の議論の結果,事例分析を通した個別具体的な検討を先行させることとしたため,次年度以降も継続することとした。 2. 社会価値の定義・指標開発:環境効率や機能的価値に関する世界的な研究事例のレビューと,研究分担者間の議論を通して,サプライチェーンの社会価値についての検討を進めた。今後,具体的な事例分析と対応させつつ,サプライチェーンの社会価値を体系化することが課題となるが,初年度の概念整理としては十分な進捗があったと言える。 3. 事例分析:概念的なストレス要因の定義・指標開発に先行して,個別具体的な事例分析を進めることとした。そのため,国内ストレスおよび国外ストレスの事例分析(産業廃棄物の地域間分析,ニッケルの国際サプライチェーン分析)が,当初の予定よりも前倒しで進行している。その他の事例分析(黄リンの国際サプライチェーン分析,水素エネルギーキャリア,地域におけるバイオマス利活用,中国における大気汚染物質のホットスポット分析)についても,統計データの調査・入手などの基礎的な準備が進んでいる。 4. ソフトウェア実装:当初の予定では,ソフトウェアの実装は最終年度に計画されていたが,研究グループ内で実用性や発展性を高めるための議論を進めるために,本年度中にソフトウェアの基本設計およびプロトタイプの作成を完了させた。このソフトウェアは,様々なストレス要因の指標に対応できるように汎用性を確保しているため,次年度以降の事例分析の進行にも寄与する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 事例分析:本年度中に着手したものの継続を含め,次年度は以下の事例分析を実施する。ストレス要因や社会価値の結果は,指標開発およびソフトウェア実装にフィードバックする。 A) 輸入資源(ニッケルおよび黄リン)のサプライチェーンに内在する多様なリスク要因を対象として,事例情報の収集を進めるとともに,モデル解析や代理指標の活用の可能性を検討する。 B) 本年度に実施した誘因-発生の地域間分析に引き続いて,産業廃棄物の広域移動量の統計を用いて,発生-処分の地域間分析を進める。 C) 種子島を事例として,自然資源に依存した閉鎖系地域におけるサプライチェーン(アクター間の物質フローおよび移輸入)の構造を記述する。それらを前年度に作成したホットスポット分析のソフトウェアに入力することで,地域規模の事例への適用可能性を検討する。 2. 指標開発:事例調査や外部の研究者や実務者との議論を通して,現状および将来的なサプライチェーンの潜在的なストレス要因および社会価値の把握を進める。上記の事例分析からのフィードバックと合わせて,本研究課題で対象とする評価領域を選定する。また,様々な製品や原料について,国内の生産地域や輸入相手国の偏在性と,それらに固有のストレス要因に着目し,要因ごとに指標を定義および算定する。次年度中に,国内の生産地域の分布と地震などの災害による被害想定地域を重ねた指標,輸入相手国のシェアを国ごとの政治的安定性などの指標によって重み付けした指標などを開発・算定する。 3. ソフトウェア実装:本年度に作成したプロトタイプを,上記の国内ストレスおよび国外ストレスの事例分析に適用することを通して,実用性や発展性を高めるなどソフトウェアの改善の方向性について議論する。次年度中に改善版を作成し,研究グループ外の実務者などに試行してもらうことで,最終年度におけるソフトウェアの完成および公開を目指す。
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Research Products
(6 results)