2016 Fiscal Year Annual Research Report
心房細動維持機構の可視化と計算科学に基づく新たなアブレーション治療戦略の構築
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15H01801
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐久間 一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50178597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70262912)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 助教(学内講師) (80396259)
山崎 正俊 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (30627328)
稲田 慎 姫路獨協大学, 医療保健学部, 准教授 (50349792)
小林 英津子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20345268)
中川 桂一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00737926)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体制御・治療 / 心房細動 / カテーテルアブレーション / スパイラルリエントリ / 光学マッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
佐久間・本荘・山崎・中川・小林は心臓突然死につながる不整脈の効果的な治療の実現に向けて、心臓内に発生する旋回興奮波(spiral wave : SW)を効果的に停止させるための通電刺激の効果機序の理解と最適刺激条件の検討を目的とし、昨年度までの研究で提案した位相分散解析によりウサギ摘出心臓灌流標本の光学マッピング結果で観察されるSWの定量的解析を行った。その結果位相分散の高い部分にSWの移動軌跡が高い確率で存在することを示唆するデータを得た。また通電刺激時に通電により位相分散が高い領域が発生し、SWが移動し解剖学的ブロックラインに衝突して消滅する現象を確認した。また興奮後面付近への点通電刺激が複数のSW中心を誘発し、SW中心同士の相互作用によりSW中心の位置が移動するという、点通電刺激によるSWシフトのメカニズムを明らかにしている。また心筋組織のバイドメインモデルを用いたコンピュータシミュレーションにより、同様の現象が生じることを確認した。また、過去に収集した心臓を冷却した状態でのSW発生時の膜電位光学マッピングデータを解析し、同様の傾向があることを確認するとともに、冷却効果を心筋細胞の電気生理学モデルに取り入れたコンピュータシミュレーションを行い、位相分散の高い領域にSWの移動軌跡が高い確率で存在することを明らかにした。 芦原・中沢・稲田はコンピュータシミュレーションによる知見を駆使し、臨床的に計測可能な多電極双極表面電位マッピングデータから、心房内の電気的興奮状態をその再分極相も含め再構成する手法を提案し、カテーテルアブレーション部位の決定のための支援データをする研究を進めている。この推定結果の妥当性を検証するための光学マッピングと電極マッピングの同時計測系を佐久間・本荘・山崎が製作し、推定アルゴリズムの検証を行う準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心房細動時に観察される旋回性興奮のダイナミクスを解析する新しい手法として、位相分散を用いた手法を提案しその有用性を明らかにしている。本手法はこれまで観察されてきた現象を、体系的に理解できる可能性が示唆されており、過去の研究で得られた様々な条件(通電条件、薬剤負荷条件、冷却条件等)でのウサギ摘出心臓灌流標本を用いた膜電位光学マッピングデータをこの手法を用いて解析する作業を進めている。その結果位相分散解析が、SWダイナミクスの挙動を解析・推定する上で有用な情報を与えることが示されつつある。通電刺激や心筋組織の興奮伝播の電気焼灼による伝導のブロックの作成が、どのように旋回性興奮のダイナミクス変化をもたらすのかを解析する一定の手段を得たものと考えている。慢性心房細胞動物モデルの開発に関しては、その基本的な動物モデル作成手法はできており、実験的な検討を行う前段階にある。 光学マッピングは心筋細胞膜電位の再分極相の情報を得ることを特徴とするが、臨床応用できないことが、研究成果の臨床展開上の大きな課題である。芦原・中沢らが別途開発したコンピュータシミュレーションによる知見を駆使した、臨床応用可能な多電極双極表面電位マッピングデータから心房内の電気的興奮状態をその再分極相も含め再構成する手法は、本研究成果を臨床展開する上で重要な技術であることから、マッピング技術に関してはこの推定結果の妥当性を検証するための光学マッピングと電極マッピングの同時計測系による検討に研究に力点を移した。 基礎研究成果の展開の観点から、重要となる心房の解剖構造を考慮した、興奮伝播シミュレーションシステムの開発と治療戦略立案への展開に関しては、興奮伝播モデルを組み込む前段階までの準備が進んでいる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、位相分散解析を用いた解析手法の有用性を、慢性心房細動モデルも含むウサギ摘出灌流モデルを用いた膜電位光学マッピングデータを用いてさらに検討を加える。検討結果に基づき効果的なSW停止手法を考案し、SW停止に有効と考えられる種々の電気刺激プロトコル、カテーテルアブレーション手法の効果の検討を実施する。 前述の解析から示唆される、旋回性興奮停止戦略を出発点とし、シミュレーションモデルにより旋回性興奮の位置や、大きな位相分散を有する領域に対して様々な位置にカテーテルアブレーションによる焼灼領域を設定し、旋回性興奮挙動がどのように影響を受けるかを検討する。その際に心房の解剖学的構造を再現したシミュレーションモデルを用いることも試み、より信頼性のあるコンピュータシミュレーションによる検討を行う。また得られた適切な焼灼戦略を、摘出灌流心標本を用いた実験系で実験的に評価する。これらの研究成果を総合的に検討し、旋回性興奮・巣状興奮部位の標的焼灼に基づく新たな心房細動焼灼治療戦略を提案することを試みる。 また、コンピュータシミュレーションによる知見を駆使した、臨床応用可能な多電極双極表面電位マッピングデータから心房内の電気的興奮状態を再分極相も含め再構成する手法について、その妥当性をウサギ摘出灌流モデルを用いた光学マッピングと電極マッピングの同時計測により検討する。さらに得られた結果に対して位相分散解析にもとづく解析手法を適用し、本研究で得られた知見を臨床応用への展開を模索する。 本研究で得られた本年度中に数本の投稿論文を発表する。
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Research Products
(43 results)
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[Journal Article] Calmodulin/CaMK II inhibition improves intercellular communication and impulse propagation in the heart, and is anti-arrhythmic under conditions when fibrosis is absent2016
Author(s)
Takanari H, Bourqonje VJ, Fontes MS, Raaijmakers AJ, Driessen H, Jansen JA, van der Nagel R, Kok B, van Stuijvenberg L, Boulaksil M, Takemoto Y, Yamazaki M, Tsuji Y, Honjo H, Kamiya K. Kodama I, Anderson ME, van der Heyden MA, van Rijen HV, van Veen TA, Vos MA
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Journal Title
Cardiovascular Research
Volume: 111
Pages: 410-421
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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