2016 Fiscal Year Annual Research Report
運動+乳製品摂取の生活習慣病・熱中症予防効果:遠隔型大規模研究体制の確立
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15H01830
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
能勢 博 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (40128715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 京一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20173156)
上條 義一郎 和歌山県立医科大学, みらい医療推進センター, 准教授 (40372510)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 運動処方 / インターバル速歩 / 乳製品摂取 / 生活習慣病予防 / 熱中症予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、加齢に伴う体力(筋力)の低下が生活習慣病・熱中症発症の根本原因であることを示唆する結果を得た。さらに、健常中高年者を対象に、「インターバル速歩+乳製品摂取」が体力向上・生活習慣病予防・体温調節能改善に有効であることを示唆する結果を得た。そこで、生活習慣病「患者」を対象に、「インターバル速歩」+乳製品摂取の生活習慣病「治療」における有効性、体温調節能の改善効果を個体・遺伝子レベルで検証する。そのための大規模研究体制を確立することを目的とした。 研究計画としては、限られたスタッフでも遠隔で大規模研究できるように、インターネットを用いて体力、運動量、体温調節能を測定できるシステムを開発する。それを用いて、高血圧患者、糖尿病患者を、それぞれ対照群と乳製品摂取群に無作為に分け、彼らにインターバル速歩トレーニングを6か月間実施し、その間の運動量を記録する。乳製品摂取群は日々のトレーニング直後に乳製品を摂取させる。トレーニング前後で、高血圧症、糖尿病の症状、体力、体温調節能のほか、加齢、炎症反応、ミトコンドリア活性に関係する遺伝子の活性を測定する。乳製品摂取群では対照群に比べ、体力向上、高血圧・糖尿病の症状改善、体温調節能向上が亢進すること、それらを裏付ける遺伝子活性の変化が得られることを期待した。 H28年度には、①携帯端末対応型携帯型運動量測定装置の開発、②運動中の核心温推定方法の開発、③携帯型発汗計の開発、④「運動+乳製品摂取」が生活習慣病の症状に及ぼす効果について研究を行い、ほぼ計画通り研究は進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①携帯型運動量測定装置の開発:従来我々が使用している活動量計はPC端末から歩行データを転送し、運動指導のサービスを受けるものであったが、それを携帯端末で使用でも使用できる機器およびそのためのアプリを開発した。 ②運動中の核心温の推定:携帯型運動量測定装置の出力から核心温を推定する数理モデルの作成に成功した。 ③ 携帯型発汗計の開発:個人の体温調節能を評価する上で、体へ一定の温熱負荷を行った時の発汗感度を測定する。ところが、従来の発汗計は、皮膚表面に密着した一定面積のカプセル内を一定流速の乾燥空気で還流し、出口の空気の温湿度を測定して、発汗量を算出した。この方法では、空気還流量の圧搾空気またはコンプレッサーが必要のため、装置が大きくなって、フィールドで使うには不便であった。そこで、今回、我々は、カプセルを2階建てにし、その間は空気が流れやすい網目状の板で仕切り、上部にシリカゲルを充填し、下部に小さいファンと温湿度計を設置した。その結果、皮膚表面から汗を含んだ空気のシリカゲルに向う流れができ、汗の分泌量が従来の換気カプセル法と同様の精度で測定できることが明らかとなった。 ④「運動+乳製品摂取」が生活習慣病の症状に与える効果:6ヶ月間のインターバル速歩と乳製品摂取は炎症促進遺伝子のメチル化を亢進した。また、6ヶ月間のインターバル速歩+乳製品摂取は血漿量を増加させ 、それは体温調節能させる。そこで、6ヶ月間のインタ-バル速歩+乳製品摂取は、炎症促進遺伝子のメチル化を亢進し、生活習慣病(高血糖、高血圧)の症状 を改善し、血漿量を増加させ体温調節能を改善するか、を検証した。その結果、ほぼ仮説を支持する結果を得た。 以上、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
①携帯型運動量測定装置の開発:すでにプロトタイプは、オムロンヘルスケアから販売されているが、従来のPC対応型と比べ、ボタン数が少なく、高齢者には使いにくい、という評価を得ている。そこで、まず、従来の活動量計のように高齢者にも使いやすく、かつ、携帯端末からも歩行記録の送信が行える機器開発を民間企業と共同で行う予定である、さらに、現在の携帯端末は3軸の加速度計、高度計を装備しているので、それを直接利用するアプリも開発中である。 ②運動中の核心温の推定:運動中のエネルギー消費率から産熱率を算出できるが、そこから核心温を精度よく推定できる数理モデルの作成に成功した。現在、民間企業と共同で、この装置を衣服に埋め込み熱中症予防に役立てることを計画している。 ③携帯型発汗計の開発:すでに、シリカゲルを利用したプロトタイプは完成しているので、これを現場で使いやすく、かつ、大量に生産できるものに改良する必要がある。現在、共同開発を引き受けてくれそうないくつかの企業と交渉中である。 ④「運動+乳製品摂取」が生活習慣病の症状に与える効果:すでにインタ-バル速歩を6ヶ月以上実施し、もうこれ以上効果が望めない中高年者でかつ高血糖症、高血圧症の症状を有する30名を「乳製品摂取群」と「プラセーボ摂取群」の2群に等分し、さらに6ヶ月間のインターバル速歩を実施し、その前後で、それぞれの症状を群間で比較した。その結果、「乳製品摂取群」で、動脈コンプライアンスの上昇、血糖値の調節が亢進する結果を得た。今後、炎症反応性遺伝子のメチル化を測定する予定である。あわせて、これらの変化と血漿量、体温調節能との関連を解析する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Impact of 5-aminolevulinic acid with iron supplementation on exercise efficiency and home-based walking training achievement in older women2016
Author(s)
. Masuki S, Morita A, Kamijo Y, Ikegawa S, Kataoka Y, Ogawa Y, Sumiyoshi E, Takahashi K, Tanaka T, Nakajima M, and Nose H
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Journal Title
J. Appl. Physiol.
Volume: 120
Pages: 87-96
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Effects of hypervolemia bu protein and glucose supplementation during aerobic training on thermal and arterial pressure regulations in hypertensive older men2016
Author(s)
Kataoka Y, Kamijo Y, Ogawa Y, Sumitoshi E, Nakae M, Ikegawa S, Manabe K, Morikawa M, Nagata M, Takasugi S, Masuki S, and Nose H
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Journal Title
J. Appl. Physiol.
Volume: 121
Pages: 1021-1031
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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