2018 Fiscal Year Annual Research Report
Consevation and Preservation of Contemporary Art: For the Construction of Network of Ideas, Methods, and Informations
Project/Area Number |
15H01871
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 温司 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50177044)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 葉子 慶應義塾大学, アート・センター(三田), 教授 (00439225)
青山 勝 大阪成蹊大学, 芸術学部, 准教授 (10319832)
金井 直 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (10456494)
上村 博 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (20232796)
前川 修 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (20300254)
並木 誠士 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (50211446)
池田 祐子 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 主任研究員 (50270492)
平芳 幸浩 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (50332193)
山下 俊介 北海道大学, 総合博物館, 助教 (50444451)
篠原 資明 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (60135499)
塚田 全彦 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (60265204)
藤本 かおり (田口かおり) 東海大学, 創造科学技術研究機構, 特任講師 (60739986)
石谷 治寛 京都市立芸術大学, 芸術資源研究センター, 非常勤講師 (70411311)
加治屋 健司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70453214)
橋本 梓 独立行政法人国立美術館国立国際美術館, その他部局等, 研究員(移行) (70524073)
桝田 倫広 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 研究員 (70600881)
秋庭 史典 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80252401)
池野 絢子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (80748393)
牧口 千夏 独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館, 学芸課, 主任研究員 (90443465)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 現代美術 / 保存・修復 / アーカイヴ化 / 再制作・再構築 / パフォーマンス・アート / メディウム |
Outline of Annual Research Achievements |
ルチオ・フォンタナ作品の研究と再制作で知られるマリーナ・プリエーゼ教授(カリフォルニア美術大学)を招いて、年度末(3月18日)に京都大学にて国際シンポジウム「現代美術の再制作/再構築」を開催した。プリエーゼ教授は自身が担当した1960年代フォンタナのインスタレーション作品の再現が持つ問題点を具体的に分析した。金井の司会のもと、加治屋は東大生協の宇佐美作品の破棄をめぐる問題点を指摘、木内真由美(信濃美術館)は松澤宥《プサイの部屋》が孕む保存と解釈の困難さを報告した。さらに上崎と池野は、過去の美術展の記録化や再現をめぐる美学的で政治的な側面を分析した。分担者(金井、加治屋、池野)と協力者(上崎)のほか、多くの美術館のキュレーターや修復家等が参加して、再制作が抱える問題について積極的な意見交換がなされた。岡田は、NYのMOMAやグッゲンハイム美術館等で作品調査をおこなった。橋本はNYのラウシェンバーグ財団においてアーカイヴ調査を、田口は本務校にて国際シンポジウム「勅使河原蒼風の時代 近現代美術の保存・修復・再制作をめぐって」を開催した。桝田は京都大学東南アジア研究所にてフィリピンのパフォーマンス/インスタレーション的楽曲について基礎調査を、渡部は広島市において個人コレクションの保存環境について調査を、金井はヴェネツィア・ビエンナーレ図書館・アーカイヴにおいて、過去のビエンナーレ展示について資料調査を、塚田は引き続き京都服飾文化研究財団所蔵の現代素材服飾品の調査分析をおこなった。渡部も引き続きメディア・アートのアーカイヴ化の問題について調査をおこない、研究会(情報科学芸術大学院大学)などに参加した。青山はフランスのニエプス博物館などで初期写真の保存状態などを調査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、とりわけ1960年代のインスタレーション作品の「再制作」や「再構築」という、新しいテーマで国際シンポジウムを開催することができた。アメリカ合衆国から招へいしたマリーナ・プリエーゼ教授は、自身の監督・キュレーションのもとで近年おこなったルチオ・フォンタナのインスタレーション作品の再構築をめぐって、記録の欠如、マチエール調達の不可能性、作品解釈をめぐる美学的問題など、様々な問題点を指摘した。これを踏まえて、保存や修復とは別に、「再制作」はいかにあるべきかに関して、今後さらに活発な議論が期待される。各分担者による研究・調査はおおむね順調に進んでいると思われる。桝田は最近とりわけ、「パフォーマンスの再演と展示」というテーマに取り組んでいる。渡部は、メディア・アートのアーカイヴ化をめぐって作家も交えた研究会に積極的に参加している。金井は過去のヴェネツィア・ビエンナーレにおける展示形態について、池野は20世紀イタリア美術の近年における展示状況の調査を続行している。橋本はアメリカの現代美術館や各財団において現に起こっているアクチュアルな問題に接することで、日本のケースに役立てようとしている。青山と前川は写真や映像をめぐって、秋庭は展示の美学的で修辞的な問題について引き続き考察を進めている。田口は、実際の修復・保存の経験を活かしながら、国際シンポジウム等を積極的に企画して、国際的なネットワークを徐々に構築しようと試みている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度として、以下のように研究・調査を進めたいと考えている。まず、田口を中心に企画され、岡田を実行委員長として、京都大学総合博物館の全面的な協力のもとで準備されてきた展覧会「タイムライン」を無事開催し、できるだけ多くの観客にみてもらい、成功に導くこと。本展覧会は、現代美術における様々なマチエールやメディウムの経年変化をテーマとするもので、多様な素材を用いて作品を制作したことで知られる井田照一(1941-2006)の《タントラ》を中心に、若い気鋭の作家3人と1グループの多彩な作品から構成されている。会期中、本科研の主催で、京都大学総合博物館において、二度の公開シンポジウムを企画している。第一回目(5月12日)は、若い現代アーティスト数名を登壇者に、多様化する素材とその耐久性、経年変化等について、どのような考え方をもって制作に当たっているかを議論する。第二回目(6月8日)は、美術館のキュレーターや修復家を招いて、美術館の現場の立場から、修復・保存・再制作等のテーマについて、ディスカッションと意見の交換をおこなう。 さらにこれらとは別に、アーティスト、キュレーター、修復家、批評家という、現代美術をめぐってそれぞれ立場の異なる人が、意見を交わし合い、場合によっては論争できるようなシンポジウムの場をぜひ実現したいと考えている。 最後に、5年間の成果を踏まえて、分担者、協力者、海外協力者の論文等からなる報告書を作成する予定である。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 平芳幸浩2018
Author(s)
『マルセル・デュシャンとは何か』
Total Pages
304頁
Publisher
河出書房新社
ISBN
978-4-309-25609-2
-