2016 Fiscal Year Annual Research Report
図工・美術科教員の教師力養成のための教員研修プログラム構築とその効果に関する研究
Project/Area Number |
15H01988
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小澤 基弘 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40241913)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 猛 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70281061)
萩生田 伸子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (70292638)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 図画工作・美術科 / 教員研修 / 教師力育成 / 表現の自覚性 / 創造性育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度のさいたま市内小学校教員へのアンケートを元にして、「図画工作のあれこれ:Q&Aと用具の解説から知る授業の基本」(日本文教出版刊行)および「もう少し詳しく!図画工作のあれこれ」の2冊を作成し、教員研修の際の配布物とした。また、教員研修の際に行う3つの柱、1)ドローイングを軸とした実技講習(表現と省察)、2)用具画材および技法講習、3)上記2冊子および「うみだす教科の図工美術」(東京学芸大学連合大学院教員研究プロジェクト)の3冊による講義講習、を策定し、夏季教員研修会において1)を中心に実施した。 また、研究分担者の岡田猛とともに、国際シンポジウム「Tokyo International Symposium 2016"Art learning and Creativity;Contemporary Issues in Formal and Informal Settings"」を東京大学において主宰した(2016年11月19、20日東京大学小柴ホール・福武ホール)。このシンポジウムは、「芸術に関する教育・学習」をテーマとしており、大学などのformalな場面において研究や実践を行っている科学者・教育実践者、また美術館といったinformalな場面において研究や実践を行っている科学者・教育実践者を世界中から集めて開催されたものである。このシンポジウムは、講演およびディスカッションとポスターセッションの2つから構成され、美術学習と創造性の育成との相関について、学校教育のformal leaningの場と、学校外例えば美術館等でのワークショップのようなinformalな場での教育という二つの側面から、美術教育と創造性の涵養について考察するものであった。この成果は本科研研究の教員研修の際にその理論的背景を考える上で重要な提言を数多く得られるものとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現場教員へのリサーチに基づき、現在、図画工作科の授業を推進するにあたって、何に行き詰まっているか、教師が直面する図画工作に関わる問題点を明確化し、それに従って教員研修プログラムを現在構築している。「研究実績の概要」でも示した通り、そのリサーチの結果を『図画工作のあれこれ』および『もう少し詳しく!図画工作のあれこれ』という小冊子にまとめた。また同じリサーチに基づき『うみだす教科の図工美術』という冊子も東京学芸大学連合大学院教員研究プロジェクトとの連携によってまとめた。これら3冊の冊子は、教員研修の際に参加教員に対して配布するためのものであり、1日あるいは数日しか行われ得ない教員研修を補完する上で重要な道具となり得る。それらが達成されたことが、まず上記区分を判断する理由となる。 また、研修にかかわる図工教育と創造性育成との関係性を理論的に裏付けるための国際シンポジウムの主宰(東京大学において)も、上記区分とする大きな理由の一つである。”Art Learning and Creativity”と題して開催したが、世界各国から美術教育の専門家を9名招き、英語を通してそれぞれ発表をしていただき、それらを研究分担者である岡田猛とともに総括した。このシンポジウムから得られた議論内容は、図工美術科の教員研修プログラムの理論的背景を構築する上で、極めて大きな意義をもたらすものであった。講演を行った方々は、世界各国において芸術教育に精力的に関わっている著名な研究者・教育実践者の11名である(小澤、岡田を含めて)。各国の芸術教育の現状や芸術教育の在り方、今後の展望など、講演者・参加者全員を交えた活発な議論・交流が行われた。この成果は、教員研修の内容を考察する上で極めて重要な提言となった。 以上2点の理由において、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断されると自己点検した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、教員研修の実践とその成果検証を主に行うことになる。研修の中でも主にドローイング制作実践をベースとした教員研修を行い、その成果を認知科学的な方法で測定する。具体的には、大学で図画工作・美術を専門に学んできていない現場小学校教員2名に対して、3ヶ月間ドローイングを手立てとした実技研修を毎週一回ずつ継続して行う。その研修の前後で、その2名の教員の図工授業の変化を測定する。測定の方法としては、研修に入る直前および研修直後に、小学校6年性の図工授業の一題材の授業導入(約10分)を2名分ビデオ録画する。それらを別のクラスの児童に見てもらうのであるが、その際にアイトラックを使用して、児童の「瞬き」の様子を記録する。瞬きの回数が少なければ少ないほど、児童がその授業に対して集中して聞いていることの証となる(この研究は研究協力者である野村亮太氏のこれまでの研究成果を踏まえている)。研修前後の、同じ授業導入部分を児童が見て、その瞬きの回数を測ることで、その授業導入の教育的効果が測定可能となる。前後でそれを比較することで、研修の成果の有無を判断することが可能となる。こうした研修成果の効果測定は、おそらく図工美術教育の世界では初の試みとなるだろう。 また、小学5年生の版画制作のプロセスを記録し、そのプロセスを現場教員、大学における美術の専門教員、図工美術を学ぶ学生、専門外の学生等に示し、それぞれがそのプロセスから何を感じ、自分ならばどのように指導するかを検証比較する。その比較検証を通して、現場の図工教員が身につけるべき指導上の留意点を明らかとする。この検証は昨年度から継続的に行なっているものである。上記以外に、今年度は研修の3つの柱、1)ドローイング研修、2)画材技法知識研修、3)児童の作品の評価等に関する研修 を複数実施する予定であり、質問紙調査等からそれらの効果を測定する。
|
Research Products
(9 results)