2017 Fiscal Year Annual Research Report
図工・美術科教員の教師力養成のための教員研修プログラム構築とその効果に関する研究
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15H01988
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小澤 基弘 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40241913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 猛 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70281061)
萩生田 伸子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (70292638)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 図画工作 / 教員研修 / 教師力養成 / 表現の自覚性 / 創造性育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度については、当初の予定通り、現場小学校教員2名に対して、毎週当該学校に出向き、ドローイング(主観的素描)についての実習を1年間に渡り継続して行った。つまり、美術的経験値の殆どない現場小学校教員が、1年間に渡り継続的にドローイング制作経験を行うことによって、自らの裡に「表現への自覚性」が育成され、それが結果的に図工指導力や今日視力に直結するという仮定のもとに、2名の現場教員に対して実験的に施行したものである。その効果検証については、研修前と一年の研修後の二度にわたり、小学5年生に対して行っている授業における一つの題材について、その題材導入部分のシャドウ授業を二人の先生にしていただき、それぞれをビデオに記録した。つまり、前後2度×2名の画像記録であり、それぞれが10分程度のものである。また、毎回の研修の後に同一のアンケートに記入いただき、毎回の研修の振り返りをしていただいた。つまり、シャドウ授業の映像とアンケート(約15回分)が、分析データとして獲得された。ビデオ画像を記録した理由は、ドローイングという主観的素描、いわば表現の原点に相当する制作体験の継続的な積み重ねが、図工教師の教師力向上に大きく寄与することを、客観的に立証するためである。立証方法として、それぞれのビデオを児童に示し、その間の児童の「瞬き」の回数に着目する。この研究は平成30年度に行う予定であるが、平成29年度に購入したアイトラッキングカメラを使用して、児童に被験者になっていただき、瞬きの回数をチェックするというものである。瞬きの回数は、その児童の映像注視の度合いを測る指標として活用できる。つまり、注視すればするほど瞬き回数は少なくなるのである。それを手立てに教師力の向上を客観視することが可能となる。平成29年度はその実験のためのプレ実験もまた行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
図工教員の教師力向上について、これまで様々な方策を検討し、研修を行ってきた。まずは図工授業において教師が困惑する諸問題を明らかにし、それぞれに対してどう対処したら効果的かを検討し、それを教員研修の場に反映させようと試みた。ただ、一般校においては、時間的な問題があり教員研修の機会がなかなか得られず、仮説的プログラムの施行は容易ではなく、その頻度も十分ではないと感じている。したがって、簡易に研修が可能な方策を検討し、ハンドアウトできる簡潔なガイドブック(「図画工作のあれこれ」)を作成し、全国で行われている教員研修の場で配布していただき、その効果をアンケートで検証した。この結果の分析は現在進行中である。本研究の教員研修の主眼は、知的理解と同時に体験的理解が重要と考えている。体験的理解とは美術表現をほとんど行っていない現場教員に対して、制作体験を啓蒙することである。とはいえ高度な制作を志向させることは難しいので、いわば落書き、つまり主観的素描である「ドローイング」体験を継続させ、教師それぞれに「表現への自覚性」を獲得させ、その結果児童の図工時の表現に対して的確な判断を下すことが可能となるとの仮定のもとに、現在その実験を進行中である。その結果がどのようなものになるのかで、本研究の成果の如何が問われることとなる。こうした段階に本研究は達しており、十全とはいえないまでも、当初から計画した研究進行について、現場教員の時間的制約という壁を痛感してはいるが、概ね図工教師力向上のための仮説的プログラムの施行とその効果検証については、順調な進み具合であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に示したように、制作体験を研修の軸とすることによって、教員の図工教師力の向上にそれが資するものであるとする仮説の実証が今年度本研究の最大の課題であり、成果となる。そのためには、今年度は視線計測とその分析の専門家である研究協力者の支援のもと、平成29年度に獲得した現場教員のデータの分析に挑むことになる。その方策は、前述したようにアイトラッキングカメラを活用して、児童の「瞬き」の回数を計測することで、研修の客観的効果検証とする。美術的経験のほとんどない現場教員(2名)に1年間ドローイングの実践研修を継続した前後で、同じ授業導入がその前後でどう変化するのか、それを被験者である児童の瞬きの回数から導き出すというプランである。児童の個人情報に関わるので、その扱いは倫理規程に基づき慎重に行うものとする。児童に入る前に、予備実験として大学生でまず施行し、実験の手続きや問題点を明確化したのちに、本番である児童に対して実験を行うこととする。本研究は平成30年度で最終年を迎えるので、これら一連の研究経過とその成果について、学会等で公開すると同時に、実際に教員に配布可能なパンフレットにそれをまとめて、教員研修のための一つの手立てとして活用できることを考えている。
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Research Products
(4 results)