2015 Fiscal Year Annual Research Report
サブミリ波の2帯域同時受信機で明らかにする高光度赤外線銀河のガスと星形成の物理
Project/Area Number |
15H02074
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
伊王野 大介 国立天文台, チリ観測所, 准教授 (60425402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小麥 真也 工学院大学, 基礎・教養教育部門(公私立大学の部局等), 准教授 (90548934)
菊池 健一 国立天文台, チリ観測所, 主任研究技師 (90358739)
武藤 恭之 工学院大学, 基礎・教養教育部門(公私立大学の部局等), 助教 (20633803)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電波天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤外線で非常に明るい銀河(Luminous Infra-Red Galaxies: LIRGs)は、全光度のほとんどをダスト放射しており、その多くが銀河衝突による爆発的星形成やガスの中心流入によって発生する活動銀河核(AGN)と深く関係しているが、豊富に存在すると考えられる高密度ガスの性質や理解は観測装置の制限によりほとんど進んでいない。本研究では、高密度ガスのトレーサーであるCO(4-3)やCO(3-2)などを同時受信できる装置をASTE望遠鏡に搭載し、ASTEから観測可能なLIRG 103天体の分子ガススペクトルを取得し、銀河衝突における星形成活動・AGNと高密度ガスの関係を調べることを主目的とする。
当該年度においては、観測のためのカートリッジ受信機を搭載するためのマルチバンド受信機冷却システムの設計・製作および性能評価を行い、所望の冷却能力や剛性を有することを試験的に確認することに成功した。このマルチバンド受信機冷却システムは、345GHz帯と460GHz帯の2系統のミクサおよび冷却増幅器の低雑音動作に必要な極低音環境を提供する冷却能力と、アンテナの動きに伴う重力変形を最小限に抑える剛性を有する必要があり、慎重に検討した。
上記装置を用いた本格的な観測を進めるための準備研究として、現存のASTE 345GHz帯受信機を用いた衝突銀河のプレサーベイを進めている。これは、様々な衝突段階にある天体をCO(3-2)輝線で観測し、星形成活動とCO(3-2)輝線の関係を調査するものである。衝突の段階によって、星形成効率の違いが見えるなどの新たな科学的知見が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルチバンド受信機冷却システムの設計、製作、および評価試験は順調に進んでいる。また、準備研究もおおむね順調に進展しており、初期成果もでている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、カートリッジ受信機の動作に必要なウォーム・カートリッジ・アセンブリ(WCA)の調達を行う。 WCA には高精度発振器と電気回路が搭載され、カートリッジ受信機の極低温部で冷却される超伝導ミクサに局部発振信号を供給する機能を持つ。局部発振信号の純度はカートリッジ受信機の性能に直結するため、高い検出感度を実現するためには、WCAにはALMA望遠鏡で使用されているものと同等以上の性能が求められる。 同時に、超伝導ミクサや極低温低雑音増幅器のバイアス供給回路などの調達と整備を進め、カートリッジ受信機のサブミリ波性能(雑音温度、イメージバンド抑圧比、ビームパターン、安定性等)の確認試験を実施するためのシステムの構築を行う。 上述の開発や性能評価を進める一方で、観測の準備やパイロットサーベイ、理論考察を平行して進めていく。アーカイブに存在するデータに関しては、本研究の目的に即した形で準備しておく。
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Research Products
(10 results)