2015 Fiscal Year Annual Research Report
ベクトル電場波形整形パルスによる時間反転対称性の破れた量子系の生成と制御
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15H02117
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
三沢 和彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香取 浩子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10211707)
岡 隆史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (50421847)
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 准教授 (90271527)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ベクトル電場波形整形 / キラリティ電磁場 / 時間反転対称性の破れ / 時間分解偏光分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、テラヘルツ周波数帯で任意のキラリティを有する電磁場を生成し、それを用いて物質の時間反転対称性を破ることにより、静磁場を印加しただけでは実現し得ない動的な量子状態を実現することを目的とする。本研究は電磁波制御技術を物性物理学へ応用するためにテラヘルツ周波数帯まで拡張することで、固体物理学に光科学の立場から新たな手法と視点を持ち込むものである。目的を達成するために以下の手順を予定している。 ①ベクトル電場波形整形技術の高強度化と高機能化、時間分解偏光分光法の確立、②時間反転対称性の破れた量子系生成条件の理論的検討、③2次元電子系試料の作成と評価、及び反強磁性体試料の合成と評価、④時間分解偏光分光法による動的に誘起された時間反転対称性の破れの測定、⑤2次元電子系での光誘起量子ホール効果の測定と最適条件の探索、⑥反強磁性体での光誘起磁化の測定と最適条件の探索、⑦ベクトル波形整形パルスによる時間反転対称性の破れた量子系の制御 このうち平成27年度は再生増幅器で生成された高強度パルスに対応したベクトル電場波形整形技術を構築し、パルスエネルギー270μJ、偏光回転周波数0.1~3.0 THzの高強度高機能なねじれ偏光パルスの生成を達成した。またこの波形整形されたパルスをテラヘルツ周波数のベクトル電場に変換するための光学系も完成した。時間反転対称性の破れを観測するための測定系の構築に着手し、低温強磁場環境を整備し試運転の段階まで完成させた。今後はこれらの個別に開発した実験系を1つにまとめ、対象となる試料を選定し、動的に量子状態を制御し時間反転対称性の破れを観測する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は上記の計画の①~③までを完了する予定であった。①に関してベクトル電場波形整形技術の高強度化と高機能化は達成した。時間分解偏光分光法の構築に関して、物品は揃えたが未だ完成はしていない。②の時間反転対称性の敗れた量子系生成条件の理論的検討によって、必要な実験条件としてパルス電場強度2MV/cm以上、温度環境4.2~100 K、また磁場による時間反転対称性の敗れ確認のため磁場環境2T以上と算出され実験環境構築における指針を示した。③に関して、2次元電子系試料は完成しているが時間反転対称性の敗れた量子系を実現するには伝導帯の電子密度の制御が重要であることが明らかとなったのでその改良中である。④における測定環境の整備は前倒しで行い、低温環境整備はテラヘルツ周波数透過窓を設置すれば完了する。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で研究開発に大きな問題は生じていないため引き続き上記の予定どおり遂行していく。開発が遅れている時間分解偏光分光法の確立については研究体制を強化し早急に実現する。キラリティを有するテラヘルツ周波数帯の電磁場によって時間反転対称性を破ることはあらゆる物質において起こる普遍的な現象である。したがって本研究に加えて、真空中の電子線などより基本的な系においてこの現象を実証する研究計画も同時並行で進め、その普遍性と関連性も検証していく。
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[Journal Article] Circularly polarized near-field scanning optical microscope for investigations of edge states of a two-dimensional electron system2015
Author(s)
Shintaro Nomura, Syuhei Mamyouda, Hironori Ito, Yusuke Shibata, Tomoya Ohira, Luno Yoshikawa, Youiti Ootuka, Satoshi Kashiwaya, Masumi Yamaguchi, Hiroyuki Tamura, Tatsushi Akazaki
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Journal Title
Appl. Phys. A
Volume: 121
Pages: 1341-1345
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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