2015 Fiscal Year Annual Research Report
リニアモータを用いた脳機能障害診断を革新するハプティクス研究
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15H02236
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桂 誠一郎 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00401779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福澤 一吉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00156762)
吉澤 浩志 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70318070)
板口 典弘 札幌医科大学, 保健医療学部, 研究員 (50706637)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人間支援 / 抽象化理工学 / モーションコントロール / リニアモータ / 脳機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は力触覚の検出と呈示に関するハプティクス技術を脳機能障害の診断支援に結びつけることを目的としており、本年度において次のような研究実績を得ることができた。 1. ハプティック診断システムのための多自由度リニアモータドライブの設計と試作 ハプティック診断システムは、感覚系と運動系の定量評価を行うためのものであり、本研究では特に上肢による書字動作の抽出を目的として開発された。開発したシステムはアクチュエータに力分解能・周波数応答が良く、かつコアレス・コギングレスのリニアモータを採用した。さらに、多自由度駆動を実現するための機構についてもパラレル型、およびガントリ型から構成される複数の異なるタイプのシステムを開発し、操作性や精度に関する基本性能の比較を行った。 2. ハプティック診断システムの力制御系の開発 ハプティック診断システムの開発後、力制御系の実装を行った。本研究では、モーションコントロールにおいて確立されている外乱オブザーバを援用し、力覚センサレスで高精度かつ広帯域な力触覚情報の取得を実現した。本研究ではリニアモータを駆動する電流制御系を周波数帯域の観点から新たに設計し直し、力覚検出周波数帯域の向上を実現している。制御系構築後、健常者および非健常者による予備試験を実施し、動作データの抽出を行った。予備試験では、点から点への到達運動や円運動から動作データ(軌道・力加減)をそれぞれ取得し、ヒューマンインタフェースとしての評価を行い、設計にフィードバックすることで操作性向上を図った。さらに、人間の腕の筋骨格特性である手先スティフネスについて三次元計測を実施し、健常者群のデータベース作成に着手した。 なお、本年度において12回の研究ミーティングを開催し、研究代表者、分担者、協力者間での成果の共有、逐次確認を行い、工学、神経心理学、神経内科学の密な連携の下で研究を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発したハプティック診断システムにより、三次元での手先スティフネスを従来手法と比べて格段に簡易かつ精度良く計測することが可能になった。これは研究代表者の有する「応用抽象化と総合デザイン」方法論が基盤となっているためである。特に、人間の動作の抽出・再現に関する一連の技術開発に対して日本学術振興会賞を受賞しており、その優位性は高い。この高いレベルでの総合デザイン方法論を運動機能の計測に応用することにより、構築されるシステムそのものも高性能化が見込まれ、当初の計画以上の成果が得られることが期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降においては、初年度に開発した「ハプティック診断システム」の試験に基づいた電気-機械系の改良ならびに作用力・反作用力分離のための零距離バイラテラル制御の方法論を確立する。また制御系実装後、健常者群のデータベース化を行い、脳機能障害患者の診断補助へ向けた特徴量の抽出を行う。 最終的には電気機器システムを直接人間の状態把握に応用するという方法論を一般化し、工学と神経心理学、神経内科学をつなぐ学理を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(27 results)