2015 Fiscal Year Annual Research Report
環境マイクロバイオームの動態計測に基づく集団感染機構の解明と制御
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15H02277
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 信介 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00142240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 宇 工学院大学, 建築学部, 教授 (50370945)
永野 秀明 東京都市大学, 工学部, 講師 (50610044)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 建築環境・設備 / 空気環境 / 建築公衆衛生 / マイクロバイオーム / 集団感染 / 遺伝子解析 / 行動観察 / エージェントシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「環境マイクロバイオームの動態計測に基づく集団感染機構の解明と制御」と題す。集団内での病原物質のミクロな伝搬機構を明らかにし、建築公衆衛生の観点から、その伝搬を制御し感染防止に役立てることを目的とする。本研究ではウイルスや細菌の含まれるサンプルから病原物質を個別に同定せず、まず①サンプルを微生物叢(Micro-Biome、マイクロバイオーム)として全ゲノム解析し、その特徴的な遺伝子に着目して伝搬を解析し、次に②人の行動観察よりその病原物質の伝搬可能性を整理し、③その結果を反映した人の行動シミュレーションにより病原物質の伝搬予測を行う手法を開発する。特に①や②に関しては前例のない、先駆的な試みとなる。当面、大学の建物を対象とするが、将来は小学校や老健施設など集団感染に脆弱な建物とする。 研究は、①室内環境や人体に存在する微生物叢(マイクロバイオーム)の信頼性を確保した解析手順を確立し、②特定の個人スペースにおいて、被験者の口腔中や手のひら表面、着衣表面のマイクロバイオームと、被験者周辺空気中、スペース内の家具や取手等の表面のマイクロバイオームの相関から、被験者から放散伝播される微生物叢が周辺に与える影響および伝搬性状を調べ、③接触感染につながる被験者の単位時間内の行動を統計的に安定となる程度、観察、集計し、④既存の人流シミュレーション手法に、人の行動観察データ、人のマイクロバイオームの周辺への伝播性状の統計値を反映し、感染拡大のシミュレーションを可能にし、⑤このシミュレーションの信頼性を観測データに基づき検証し、⑥老健施設など実務的な建築でのデモを行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究助成は、申請額の約75%であり、当初、購入しマイクロバーオーム解析に用いる予定の次世代シーケンサーの購入は断念した。その代替えとして、次世代シーケンサー解析を必要とする分析に関しては、これを備えている民間ラボに外注することととした。これに伴い、次世代シーケンサーを用いたマイクロバイオーム解析は、そのサンプル数に関し大きな制約を受け、当初計画10%以下に削減せざるを得ない状況になっている。しかしながら、次世代シーケンサーの代替えとしてリアルタイムPCRおよびこれに付随する分析装置を購入し、全遺伝子解析は断念したもののターゲット遺伝子の解析はかのうとなり、民間ラボへの全遺伝子解析の外注と合わせて、当初計画目的をある程度、満たすことが可能となっている。 現在は、マイクロバイオームの室内環境中での浮遊及び付着真菌の採取法に倣い、オフィスを想定したワークプレイス(研究代表者の研究室を想定)及びそのワークプレイスで活動する被験者の口腔および手のひらのマイクロバイオームを採取し、リアルタイムPCRを用いたゲノム解析を行い、そのマイクロバイオームの分析を行う。マイクロバイオームの採取は浮遊及び付着の両者に対して、①アルコール除菌する前、②除菌後に人がいない状況で一定時間(数時間程度)経過後、③人がデスクワークする状況で一定時間経過後など、条件を変えて行い、問題点、改善点を抽出しサンプル法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に引き続き、オフィスを想定したワークプレイス(研究代表者の研究室を想定)及び被験者のマイクロバイオームを採取し、マイクロバイオームの分析を感染症の伝搬拡大の機構を解析する。特に空気・飛沫伝搬に関しては、CFD(計算流体力学)解析を、また接触感染に関しては、人の行動シミュレーションの解析を利用して、マイクロバイオームの解析に基づく実験結果と対比させ、人から放散されたマイクロバイオームの室内環境下での伝搬を解析する予定である。現時点では、次世代シーケンサーを活用する全遺伝子解析こそ、十分に行えないが、平成27年度購入したリアルタイムPCRを活用して、定量的にマイクロバイオームの拡散動態の検討を行えるものと考えている。 平成29年度には、研究のまとめとして、継続的に室内環境下におけるマイクロバーオームの動態に関してデータを蓄積するとともに、前2年の研究成果を生かして、マルチエージェントシミュレーションに、人の行動に起因する感染症を拡大させる行為を組み込み、行動シミュレーションに基づく感染症伝播に関するシミュレーションモデルを作成する。
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Research Products
(5 results)