2018 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02345
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横山 啓一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, マネージャー (60354990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 哲弘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (20373235)
永島 圭介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 上席研究員(定常) (60344438)
黒崎 譲 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (60370392)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 有機非線形光学結晶 / C60薄膜 / セシウム原子 / トラジェクトリー計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
【光反応の研究】 有機非線形光学結晶から発生する THz波に対して、同一の有機結晶を用いたEOサンプリング法により発生直後のテラヘルツ波形の時間プロファイルを測定できることを示した。その結果、実証実験に必要な0.1-0.5THzの低波数領域で従来の報告より一桁近く高いスペクトル振幅を観測し、その結果を学会発表した。この知見を基に測定領域をTHz発生結晶に密着させた光反応実証用の反応セルをデザインすると共に、今後必要になる高強度クロムレーザーを播磨に構築するため多重パス増幅器及びパルス拡張・圧縮器構成品の製作を行った。また、テラヘルツ波の制御を目的とした多層膜デバイスの研究を継続した。高強度レーザー場中でのLiCl分子の振動回転励起パルス波形の最適制御理論による計算を行い、2光子過程の影響を評価した。その結果を学術誌において発表した。また原理の一般化・拡張を目指した研究会を開催し、原理となっている量子ウォークの専門家らと議論を行い、実験の現状や原理的課題について情報を共有した。 【回収反応の研究】 C60へのセシウムの吸着挙動の研究として、C60薄膜中のセシウム原子の深さ方向の濃度分布を光電子出射角依存性により測定し、加熱により濃度分布が変化する様子を調べた。その結果、200℃、10分程度の加熱で表面近くのセシウム濃度が大きく減少する可能性が示唆された。今後さらに実験を繰り返し、回収時のセシウムの吸蔵挙動の予測に繋げる。これまでの成果の解析結果をまとめて学術誌及び国際会議で発表した。また、回収率を低下させる恐れのあるセシウム原子交換反応について、トラジェクトリー計算により反応速度定数を見積り、影響を抑えるための条件設定に必要な情報を取得した。その成果を学術誌において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光反応の研究に関しては、査読付き論文1報、学会発表3件、執筆中論文1報、回収反応の研究に関しては、査読付き論文2報、国際会議1件の成果発信を行った。光反応の研究では、有機結晶を用いて発生直後のテラヘルツ波のスペクトル測定により、実証実験に用いる反応セルのデザインが可能になった。一方、播磨でのクロムレーザー整備については、多重パス増幅器などの設計とパルス伸張・圧縮の光学系を製作した。 完成に向けて順調に進んでいる。セシウム固定化回収実験に関しては、C60薄膜中のセシウム深さ方向分布の加熱時の変化を捉えることに成功した。今後も高温でのセシウム吸蔵挙動を観察し吸着材としての特性を評価する。その基となるデータが得られたことは有効な結果といえる。また、回収を阻害する同位体交換反応の速度定数をトラジェクトリー計算により評価したことはプロセス設計に有効である。これらの状況を総合的に勘案して本研究は順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
光反応の研究では、有機結晶を用いるテラヘルツ波波形計測及びテラヘルツ波利用技術開発に関しては、京大ナノハブ拠点のクロムレーザーを利用して進める。同時に、テラヘルツ波の高強度化及びそれを利用した同位体選択的加熱の原理実証に備えて播磨でのクロムレーザーCPAシステム整備も継続する。回収反応の研究では角度分解XPS測定を用いてC60へのセシウム吸蔵状態の温度依存性の調査が可能なことが分かった。今後さらに詳しく高温下で吸蔵状態を調べ、回収材としての可能性を見極めていく。
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Research Products
(7 results)