2015 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌脂質代謝の解析に基づく新規機能性脂質の創出
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15H02441
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 順 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70281102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 剛 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10550311)
岸野 重信 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40432348)
菅原 達也 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70378818)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 脂質代謝 / 乳酸菌 / 機能性脂質 / プロバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌における脂質代謝の解析に関して、乳酸菌Pediococcus sp. AKU 1080における脂肪酸代謝を解明すべく、リノール酸を基質とする反応に供したところ、3種類の水酸化脂肪酸が生成した。得られた水酸化脂肪酸を分取・精製し、GC-MS, NMR分析等に供した結果、10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid、13-hydroxy-cis-9-octadecenoic acid及び10,13-dihydroxy-octadecanoic acidと同定した。本反応を詳細に検討したところリノール酸のΔ9位を水和する酵素とΔ12位を水和する酵素の異なる2つの水和酵素の関与が示唆された。また、本菌はリノール酸同様に分子内にΔ9位とΔ12位のシス型二重結合を有するα-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸にも作用し、それぞれに対応した水酸化脂肪酸を生成する事を明らかにした。 また、腸内細菌脂質代謝産物の生理機能に関し、Transient receptor potential vanilloid 1 (TRPV1) に着目した検討を行った。TRPV1は交感神経活性化を介してエネルギー代謝を亢進することから、肥満や生活習慣病の予防において有効な標的分子であると考えられており、近年では他の食品成分によっても活性化されることが報告されている。そこで、本研究では食餌脂肪酸の乳酸菌代謝物のTRPV1活性化能及び、それを介した生体内でのエネルギー消費亢進作用について検討した。TRPV1活性化作用について、培養細胞を用いたカルシウムイメージングにより評価したところ、食餌脂肪酸乳酸菌代謝物のうち、リノール酸由来の代謝物、10-keto-12-cis-octadecenoic acid(ketoA) が最も強い活性化能を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に計画していた以下の課題、①多様な腸内細菌脂質代謝の解析と代謝産物の同定、②代謝中間体のメタボローム解析、③代謝産物の生理機能解析(脂質代謝制御)、に関して、それぞれ目標を達成する成果を得ている。すなわち、①に関しては、乳酸菌Pediococcus sp. AKU 1080における脂肪酸代謝を解明し、異なる二重結合位置への変換反応を起点とする多様な脂肪酸代謝を明らかにした。②に関しては、これまでに得られた腸内細菌脂質代謝産物について、高圧UPLC システムと三連四重極型質量分析計を連結したmultiple reaction monitoring 解析システムにおける分析プロトコールを確立した。③に関しては、肥満・生活習慣病の改善効果が期待されるTransient receptor potential vanilloid 1 (TRPV1)に対する活性化因子として、腸内細菌脂質代謝産物である10-keto-12-cis-octadecenoic acid(ketoA)を見いだした。以上のように、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は順調に進んでおり、平成28年度の当初計画をそのまま遂行する。すなわち、平成27年度の研究を継続するとともに、代謝産物の生理機能解析を重点的に展開する。取り組みの例を以下に示す。 ①代謝産物の生理機能解析:メタボローム解析において存在が確認された主要な代謝中間体に関し、生理機能を生活習慣病との関連が深い脂質代謝制御に関する解析を行う。すなわち、LXR受容体を介した脂肪酸合成制御、ならびに、腸管バリア機能制御・炎症抑制作用、に関連した生理機能解析に取り組む。 ②新規機能性脂肪酸の生産プロセス開発:関連酵素の高機能化を通した新規機能性脂質の生産プロセスを開発する。オキソ脂肪酸、水酸化脂肪酸、部分飽和脂肪酸や共役脂肪酸など、申請者が新たに見いだした腸内細菌由来の脂肪酸代謝酵素機能を活用しないと生産できない希少脂肪酸の合成を効率化する。 ③高代謝活性菌の選抜とプロバイオティクス機能評価:健康を増進しうる生理活性が見いだされた代謝物の生産を促進しうる高代謝活性微生物を乳酸菌に探索、選抜する。続いて選抜菌について、培養条件等、高活性菌体を得る条件を検討する。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] 10-Oxo-trans-11-octadecenoic acid generated from linoleic acid by a gut lactic acid bacterium Lactobacillus plantarum is cytoprotective against oxidative stress2016
Author(s)
Furumoto, H., T. Nanthirudjanar, T. Kume, Y. Izumi, S.B. Park, N. Kitamura, S. Kishino, J. Ogawa, T. Hirata, T. Sugawara
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Journal Title
Toxicol. Appl. Pharmacol.
Volume: 296
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Gut microbial fatty acid metabolites reduce triacylglycerol levels in hepatocytes2015
Author(s)
Nanthirudjanar, T., H. Furumoto, J. Zheng, Y.L. Kim, T. Goto, N. Takahashi, T. Kawada, S.B. Park, A. Hirata, N. Kitamura, S. Kishino, J. Ogawa, T. Hirata, T. Sugawara
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Journal Title
Lipids
Volume: 50
Pages: 1093-1102
DOI
Peer Reviewed
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