2018 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ農村における技術の内部化プロセスの解明と循環型資源利用モデルの構築
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15H02591
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊谷 樹一 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (20232382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 修一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00322347)
近藤 史 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (20512239)
瀧本 裕士 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (60271467)
荒木 美奈子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (60303880)
勝俣 昌也 麻布大学, 獣医学部, 教授 (60355683)
黒崎 龍悟 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (90512236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アクションリサーチ / 家具材 / 木挽き製材 / 植林 / サプライチェーン / センダン科樹木 / ドイツ植民地 / 林業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、林業振興を本格化するのに先立って、木材サプライチェーンの実態について調査した。ここで対象としたのはセンダン科の外来樹木Cedrela odorataとToona ciliataの2種である。これらの樹種はドイツ植民地期にタンザニアに持ち込まれたのち、キリスト教の宣教師が教会建設にあたって各地に植林していったが、当時は天然林がまだ豊富にあったため木材用の植林は地域に浸透しなかった。調査村では数世帯がT. ciliataを植えていたので、その樹木を使って、育林・伐採・製材・運搬・加工・家具製作・販売までの工程を実践し、そこに潜む課題を明らかにしていった。調べてみると、T. ciliataは乾いた環境煮も適し、木材は強度とシロアリ耐性を有し、軽軟で加工しやすいことから家具材や建材に向いていることがわかってきた。生産量が少ないため市場では知名度が低いが、材木商は都市部では家具用のハードウッドが慢性的に不足していて、センダン科木材の潜在的な需要に気づいていた。木材の供給量を増やすためには、植林に対する農家のモチベーションを高める必要がある。2018年度に実践した試行は、木材を町で売ることによる大幅な増収を示し、それが林業へのインセンティブを高めた。また、木挽き製材に多くの時間と経費がかかっていることもわかった。その他、安定的な木材生産には、植林地の確保、家畜食害の防御、強すぎる市場からの保護が課題になる。アクションリサーチのあと、調査村でセミナーを開催し、その成果を全村民で共有するとともに、林業への取り組みについて協議した。調査に参加した住民グループは、C. odorataとT. ciliataの苗を合計2,000株用意し、公用地をもつ村政府、小学校、診療所に配布し、残りを村人に販売していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、a)農業の集約化、b)自然エネルギーの活用、c)林産資源の利用という枠組みのなかで生業を多様化し、生業間の連繋を高めることで農村の経済基盤を整え、それらの生業を統合して環境の持続的な利用と保全を実現する循環型資源利用モデルを構築しようと考えていた。ところが、2016年に調査村で牛肺疫が流行して多くのウシが病死し、翌2017年にはアフリカ豚コレラがタンザニア中・南部地域を襲って養豚は壊滅状態に陥った。さらに2018年は当該地域で牛炭疽が発生し、ウシだけでなく人にも多くの犠牲が出て、アフリカにおける潜在的な感染症のリスクを改めて思い知らされた。こうした惨劇を目の当たりにして、生業間の連携を高めるという本モデルの基本方針は変更を余儀なくされた。これまでの家畜の飼育・管理方法を早急に見直す必要に迫られるともに、畜力への強い依存から脱却して、小さい畑の生産性を高める農業の集約化や多角化をより積極的にモデルに組み込むことにした。その結果、経済基盤としての林業を根付かせるという目標がより明確になった。植林するT. ciliata樹木から木材を切り出したあと、端材は畜舎などの建材として、葉はヤギとウシの飼料として、細い枝は挿し木用の種茎、太い枝は燃料として多用途に活用することができる。一方、籾殻用に開発したコンロは、インゲンマメの莢など、他の作物残渣の燃焼にも応用できることがわかった。家畜の舎飼いを徹底し、家畜糞尿と灰などを畑に施用することも農業集約化への一助になるだろう。生業構造の中軸に林業をおき、そこから放射状に他の生業を配置するという循環型資源利用モデルの骨組みができあがりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、循環型資源利用モデルの中枢を担う林業を地域にしっかりと根づかせるために、センダン科の樹木C. odorataとT. ciliataの生産基盤を整えていく。この2つの樹木は、種子が劣化しやすく発芽率がすぐに低下してしまうが、切り株や根からは新梢が旺盛に萌芽し、南米では枝や再生枝を挿し木して増殖するのが一般的だという。こうした栄養繁殖をうまく使えば苗の生育を早めて家畜の食害を減らすことができるだろう。枝打ちや剪定によって幹を太くまっすぐに育て、また樹冠投影面積を小さく仕立てることでて作物との混作も可能になる。この地域におけるセンダン科樹木の栽培方法を確立することで、植林経験のない農家も林業に参入しやすくなるであろう。 2018年度に実施したアクションリサーチで、樹木の伐採から木工家具の販売までの工程のなかでもっとも時間と経費を要したのが製材作業であることがわかった。無電化村では木挽き製材されるが、これが重労働なのである。本年度は、製材の動力化と丸太の運搬方法を確立して、大量出荷を可能にする体制を整えていく。さらに、保有する土地の多寡に関係なく誰でも林業に参加することで、地域全体で家畜や野火を監視し林を保全することができると考えている。 広域調査で、T. ciliataの木材出荷したことのあるという地域を訪ねた。そこも独立前後にキリスト教の宣教師によってこの外来樹が持ち込まれた地域で、かつては立木が散在していた。ところが2010年代に、都市の材木商がやってきて成木をすべて買い取って伐採してしまったため、今ではほぼ完全に姿を消してしまった。経済成長を続けるタンザニアでは、地方都市の近郊に住宅地が広がり、家具材の需要が急速に高まっていて、市場の強すぎる要求から樹木を守る方策を検討することも、持続的な経済基盤を維持するためには重要である。
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Research Products
(46 results)
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[Presentation] Estimation of change in groundwater recharge sources due to turbidification of river water by landslide using multiple tracers2018
Author(s)
Yoshioka, Y., Nakamura, K., Ito, M., Takimoto, H., Sakurai, S., Horino
Organizer
PAWEES-INEPF International Conference 2018 (Nara, Japan)
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