2016 Fiscal Year Annual Research Report
未知汚染物質の網羅的探求:今日のLC/MSと多変量解析の利用でどこまで探れるのか
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15H02853
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40274740)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、解析モデルの構築と、構築した解析モデルの検証(バリデーション)を完了した。そこで平成28年度は、構築した解析モデルを実サンプルに適用してその有効性を検証した。 実サンプルとして、ここ数年間の国内使用量が多い農薬である土壌燻蒸剤DDに着目し、その構成成分である(E)-1,3-dichloropropene(DCP)を塩素処理して生成する変異原性物質の探索を実施した。塩素処理する際、塩素添加率を変化させたサンプルを4~5サンプル調製した。調製の際、DDを含まないコントロールサンプル、DDを含むが塩素処理を実施しないブランクサンプルを調製した。調製したサンプルの変異原性を、Ames変異原性試験により評価した。 従来の研究成果から、DCPを塩素処理したサンプルをエレクロトスプレーイオン化法(ESI)を用いてイオン化しても、LC/MSで測定して得られるピーク数が少ないことが明らかになっている。このため、生成する変異原性物質がカルボニル化合物であると仮定して、塩素処理サンプルを2,4-dinitrophenylhydrazine(DNPH)で誘導体化して測定した。誘導体化したサンプルの物質を、高分解能・高質量精度・高感度LC/MSを用いたプリカーサーイオン分析により探索した。得られた探索結果のカラム保持時間の誤差を補正し、サンプルユニークなイオンを抽出した。その後、平成27年度に構築した解析モデルを用いて解析を実施した。 その結果、DD塩素処理サンプル中の主要な変異原性物質と考えられるピークを特定することに成功した。最終年度は、得られた物質の同定を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度当初に立てた計画をすべて実施することができた。また、実施した結果、最終年度に未知物質の同定に取り組むことができるようになり、本研究の目的を達成する見込みが得られた。以上により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で対象としたDNPH誘導体は、UV吸収を示すと考えられる。このため、LC/MSの測定結果をOPLSなどの多変量分析で解析した結果発見された物質もUV吸収を示すと考えられる。平成28年度は、その確認が十分に行えなかったので、平成29年度に同物質を同定する前に、その確認を実施する。
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Research Products
(2 results)