2016 Fiscal Year Annual Research Report
調理加工という反応場で生成する高機能ポリフェノールの検出と抗生活習慣病への利用
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15H02892
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
増田 俊哉 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (10219339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 啓敏 香川大学, 農学部, 教授 (00188442)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 焙煎加工 / コーヒー / キサンチンオキシダーゼ阻害 / ピロガロール / 微量定量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度発見した,食材の高温加熱加工において発生する機能の発現に関わる物質的エビデンスの取得を行った。先進諸国において顕著に増加し,若年層の罹患率も増えている生活習慣病,痛風,およびその前段階である高尿酸血症の軽減,予防効果が期待できるキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害機能を示した焙煎コーヒー豆(コーヒーノキ種子高温加熱加工物)に特異的に存在するXO阻害物質の解明を行った。なお,開始に当たって,すでに見いだしていた阻害物質クロロゲン酸ラクトンの,焙煎段階の異なるコーヒー豆中の含有量とXO阻害活性との相関解析を行ったところ強い相関は見られず,それ以外の活性成分の存在が予想されたことから検討を開始した。同ラクトンを除去した焙煎豆熱水抽出物を調製し,阻害活性を測定したところ,より疎水性の小さなフラクションに新たに強い活性が確認された。そこで,本フラクションを大量調製し,各種クロマトグラフィーを繰り返すことにより,微量でありながら強力な活性を示す物質としてピロガロールを単離し,同定した。このピロガロールのXO阻害活性はIC50にして0.7μmol/Lと非常に強い活性であった。なお,ピロガロール自体はシンプルな構造化合物であるが,強力なXO阻害活性を有することを初めて発見した。ピロガロールは生豆には存在せず,焙煎豆のみに存在するポリフェノールである。(すなわち本研究の目的に合致する焙煎加工特有の生成物)しかし,微量含有のため,複雑な成分を有する焙煎後のコーヒー豆中のピロガロールを定量する微量定量法を確立し,焙煎度の違うコーヒー豆抽出物を用いて,その寄与度を推定した。その結果,クロロゲン酸やそのラクトンよりも,ピロガロールの寄与がはるかに大きいことを確認した。この内容は,コーヒー研究の報告の多いアメリカ化学会の食品部門誌である,J. Agric. Food Chem. 誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の目的に掲げた,焙煎コーヒーにのみ存在するXO阻害物質の特定と定量,ならびに寄与度の評価結果を得ることができ,その成果を論文発表にすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
コーヒー豆の焙煎加工によって特異的に生じる機能性物質の検出と特定を引き続き行う。なお,コーヒー豆そのものにとらわれず,焙煎加工で変化すると考えられるコーヒー生豆自体の含有成分(クロロゲン酸,カフェ酸や各種糖質)に着目し,その高温加工反応による機能性成分の特定を進め,複雑な成分混合物である高温加工食品における発生機能性物質特定の効率を加速する。
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Research Products
(5 results)