2016 Fiscal Year Annual Research Report
Education for Disaster Risk Reduction from the Viewpoint of Sustainable Development
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15H02915
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
藤岡 達也 滋賀大学, 教育学部, 教授 (10311466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜井 愛子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00636003)
大辻 永 東洋大学, 理工学部, 教授 (20272099)
山口 克彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (30251143)
五十嵐 素子 北海学園大学, 法学部, 准教授 (70413292)
村田 守 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80239532)
榊原 保志 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90273060)
佐藤 健 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (90290692)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自然災害 / 防災教育 / ESD / STS / 科学的リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
国内においては,東日本大震災発生後の被災地の復興教育,防災教育等の展開を教育行政・教育現場の取組状況と成果,課題を中心に掌握,整理,分析した。まず,福島県では,科研分担者,福島県内の教育委員会,教育現場の研究協力者とともに同県の中でも災害発生の可能性が異なる7教育事務所をブロック的に捉え,地震・津波による災害,火山噴火による災害,台風・集中豪雨による河川の氾濫や洪水,さらには,土石流・地すべり・崖くずれなどの土砂災害,雪害,また事故災害としての原子力災害について,これまで発生した自然災害をもとに今後の防災教育の在り方を分析後,教材・プログラム開発を行い,教員研修等で実施した。また,宮城県においては,仙台市,石巻市などの学校教育現場を中心に,復興教育・防災教育をアクションリサーチ的に取り組みを進めた。 一方,平成28年度においても,4月に熊本地震,10月に鳥取県中部地域を中心とする地震が発生した。これらの学校を中心とした被災状況をこれまでの視点から分析する中で,科学的リテラシー育成と関連付けた避難訓練の構築など,新たな学校教育の課題も明確になった。同時に滋賀県,徳島県,長野県などにおいても,地域で発生した過去の自然災害を分析するとともに,地域の特殊性,国内の普遍性を踏まえた教材やプログラムを開発し,教員研修や学校の授業で実施した。 国外においては,東アジア~東南アジアを中心に日本の防災教育の教訓等をもとに教育貢献の可能性について,現地での調査,実践授業を踏まえて分析,考察した。特に,ネパールやカンボジア,モンゴル,フィリピンなどでは,日本の自然災害に対する防災教育に関する支援の必要性が明確になった。具体的には,学校教育での体系的な自然災害に関する情報や教材が不足しており,日本で開発した教材を用いた現地での実践が今後も期待されていることが明らかになり,次年度の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災発生後の福島県や宮城県等の被災地での復興教育や新たな防災教育の構築についての教材開発や教育プログラムを開発し,それらにもとづいた研究授業や教員研修などの実践は概ね順調である。これらの意義をESD(持続発展教育)の観点から分析するとともに,被災懸念地域での新たな教育開発や発信が課題となっている。また,被災地で明らかになった防災教育等についての課題のアプローチを被災懸念地域でどのように自然科学を学際的に取り組み,人間が自然に関わる社会科学的な観点も取り入れるかが新たな問題となった。 一方で,平成28年4月には熊本地震が,10月には鳥取県で中部地域を震源とした地震が発生した。これまでの地震とは,防災教育の視点からも異なった面もあった。しかし,両地域の地震については,本研究の趣旨からも無視することができず,情報収集,現地調査の設定などで,若干時間がかかってしまった懸念もある。また,集中豪雨や台風の影響による洪水・氾濫,土石流・崖崩れなど,日本各地で生じうる自然災害についても各地域の実情に合わせたプログラムの開発を行うことができた。また,自然災害発生後の二次災害,例えば,原子力災害や火災等についても無視できないことが明確になった。 海外においては,国際情勢の動向もあり,対象とするアジアの国の選定が先方の国の状況のため,予想より時間がかかった。しかし,国によっては防災教育を一つの課題と位置づけた取組を行っている。防災教育に対するアジアの国の意識の温度差も逆に明確になってきたと考えられる。 研究成果については,学会発表など中途経過をそれなりに発信できていたと思える。しかし,教育現場の危機管理や地域への啓発,教育等,本研究目的からも自然災害に関する防災教育の在り方を発信する方法については,さらに検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
新学習指導要領においても防災教育を充実させることが一層期待されている。東日本大震災発生後,地震や津波だけでなく,集中豪雨や台風,豪雪,土砂災害,火山噴火の可能性など,多くの対応すべき自然災害の発生が各地で見られる。本研究の成果が行政の対応に示唆するだけでなく,学校教育,地域教育が一層重視される中,学校を中心として,家庭,地域に防災教育や人材育成をどのように図るかの大きな課題に応える必要がある。新学習指導要領では「生きる力」の育成の具体化が謳われ,これには防災教育が大きな意味を持つことを実践例から明確にする。 さらに,「国連持続可能な開発のための教育の10年」後もESDの継続的な取組が望まれているが,学校,地域等の教育活動において,必ずしも浸透しているとは言えない。今後,本研究によって,ESDと防災教育の関連性を理論的に構築する必要がある。また,近年,日本各地においてもジオパークの活用が見られる。ジオパークの持つ教育・啓発には,防災教育に関連する内容も多い。特に本研究では,ジオパークの特質を活かして,災害だけでなく,自然の恩恵についての面も取り上げた教材,教育プログラの開発を進める必要もある。 近年,教員養成系の大学では,より理論と実践の融合が求められる教職大学院が設置され,平成30年度ではほぼ全都道府県で教育が行われる。次期教育にも学校安全,学校危機管理として防災教育が位置付けられるように教職大学院でも関連する科目等を立ち上げ,実施し,検証する。 持続可能な国際社会の構築にとっても,自然災害は大きな脅威となりつつある。日本での実践や開発した教材,プログラムを各国,各地域においても貢献可能なことを検証する。具体的には,モンゴル,カンボジア,マレーシア,ネパールなど,現地の自然環境,社会的条件等を踏まえて,アジアを中心にアクションリサーチ的な実践的研究を進展する。
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Research Products
(11 results)