2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H02949
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
中尾 七重 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (90409368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 盟児 広島国際大学, 工学研究科, 教授 (20249973)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
門叶 冬樹 山形大学, 理学部, 教授 (80323161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古建築 / 放射性炭素年代調査 / 合掌造り民家 / 瀬戸内海町家 / 文化財保存修理工事 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、合掌造り民家年代研究と瀬戸内海沿岸町家年代研究、喜多方市文化財調査および文化財保存修理工事にかかる放射性炭素年代調査を行った。中尾が神奈川県の川崎市立日本民家園の協力を得て、重要文化財江向家住宅および神奈川県指定山田家住宅の放射性炭素年代調査を実施した。中尾・坂本・宮澤智士(研究協力者)・安井妙子(研究協力者)が公益財団法人文化財建造物保存技術協会の協力を得て富山県高岡市の重要文化財勝興寺本堂式台、富山県南砺市の協力を得て重要文化財羽馬家住宅、重要文化財岩瀬家住宅、重要文化財村上家住宅、白川村教育委員会の協力を得て岐阜県指定山下陽朗家住宅および村営好々庵の放射性炭素年代調査を実施した。中尾・坂本・藤田が竹原の吉井家住宅および南家住宅の放射性炭素年代調査を実施した。喜多方市文化財調査は中尾が新宮熊野神社所蔵の福島県指定一木造神像・喜多方市指定木製狛犬の放射性炭素年代調査を行った。中尾が重要文化財高室家住宅(山梨県)・重要文化財勝興寺式台門(富山県)・重要文化財安岡家住宅(高知県)・東寺上土門(京都府)の文化財保存修理工事にかかる年代調査を行った。中尾・光谷拓実(研究協力者)が飯香岡八幡宮(千葉県)の千葉県指定神輿の年輪年代調査を行った。 放射性炭素年代調査では中尾・藤田がそれぞれ建物を選定し、中尾・藤田・宮澤が痕跡復原調査と部材選択し、中尾・坂本が試料採取を行った。試料は坂本が国立歴史民俗博物館年代学研究室で有機溶媒洗浄を実施し、グラファイト化とAMS測定は門叶が山形大学高感度加速器質量分析センターで行い、坂本が炭素年代値の解析を行った。中尾・坂本が最外層暦年代から部材年代を導き出し、部材年代をもとに、中尾が建築年代・改造年代を判定した。 日本建築学会大会、日本文化財科学会、奈良文化財研究所保存科学研究集会、喜多方市文化財シンポジウムで研究成果の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合掌造り民家7棟の放射性炭素年代調査を実施し、以下の知見が得られた。1.五箇山と白川郷で地域的な年代差は見られない。2.規模の大きさによる年代差は見られない。3.梁と柱で年代の異なる事例が見られる。重文旧江向家住宅は、柱が17世紀後半で梁が17世紀前半の年代となった。重要文化財羽馬家住宅は、柱が17世紀中頃で梁が17世紀末となった。岐阜県重要文化財旧山下陽郎家住宅は、柱が17世紀前半と17世紀後半、梁が18世紀前半となった。これは当該合掌造り建物が古材を再利用して建てられていることを示唆している。4.重文村上家住宅、重文岩瀬家住宅、神奈川県指定旧山下家住宅、神奈川県指定旧山田家住宅はいずれもこれまで想定されてきた建築年代よりも古い部材年代が得られている。調査対象はいずれも柱と梁で、合掌造りを特徴づける叉首などの小屋材ではない。合掌造りの合掌屋根の成立基盤が養蚕にあり、元禄を合掌造り成立期とするならば、これらの合掌造り古遺構の年代調査部材(柱・梁)は古材である可能性がある。5.合掌造り建物が古材を多用しているのであれば、現在、合掌造り1棟につき数部材しか年代調査を行っていないため、得られた部材の年代が建築年代に関連付けることができるかどうかは不明である。 瀬戸内海町家2棟の放射性炭素年代調査を実施した。文化財修理工事にかかる建築調査の一環として放射性炭素年代調査を実施し、当該期の炭素年代データを蓄積すると同時に、文化財建造物の復原変遷調査に有用な情報提供を行い社会貢献を行った。新宮熊野神社・飯香岡八幡宮の建築年代に関わる神像・狛犬・神輿等の年代調査を実施した。重要文化財丸岡城(福井県)年代調査、重要文化財宝城坊本堂(神奈川県)年代調査に協力し技術供与を行った。学会・シンポジウムで研究発表を行い、広く研究成果を社会に還元した。
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Strategy for Future Research Activity |
合掌造り民家年代研究は、これまでの合掌造り民家の年代観を覆す結果が得られているので、17世紀中期以前に建築年代が遡る可能性のある神奈川県指定山田家住宅・神奈川県指定山下家住宅・重要文化財勝興寺式台の追加調査を行う。柱・チョウナ梁等軸部部材に加えて、敷梁・叉首等小屋材の調査を行う。白川村教育委員会松本継太主事(研究協力者)の協力を得て、白川郷に残る合掌造りの古遺構の年代調査を行う。現時点では、17世紀に真宗道場を兼ねて建築された集落上層農民の住まいが、18世紀初めより養蚕の盛行を背景に小屋構造を改変し、長大な叉首を持つ合掌造りへと進化したとする仮説を立てている。事例研究を重ねて、仮説の検証を行う。 引き続き、喜多方市文化財調査に協力する。また、埼玉県神社年代調査、和歌山県橋本町家年代調査、重要文化財丸岡城年代調査、重要文化財宝城坊本堂年代調査に協力を行う。
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Research Products
(20 results)