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2018 Fiscal Year Annual Research Report

原料由来の膠の性質と用途に関する研究

Research Project

Project/Area Number 15H02950
Research InstitutionMomoyama Gakuin University

Principal Investigator

山内 章  桃山学院大学, 国際教養学部, 客員教授 (90174573)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 田中 重光  地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (20509822)
山内 朝夫  地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究主任 (80416304)
木曽 太郎  地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究主任 (90416313)
Project Period (FY) 2015-04-01 – 2020-03-31
Keywords文化財科学 / 環境材料 / 材質分析 / 天然素材 / 古典的膠 / DNA
Outline of Annual Research Achievements

①膠と推測した塊片は分析の結果アラビアゴムであった。この歴史的資料は葛飾北斎の弟子平松葛斎所用絵具箱に収蔵されていた。分析により江戸時代末期に画材として使用されたアラビアゴムの現物をわが国で初めて確認し、アラビアゴムを使用した彩色を非破壊分析で確認する方法の研究に着手した。
②DNAに着目しPCR法を中心として膠の動物種の推定を行うことで、動物種が未記載の市販膠の原料を整理することが出来た。分析の結果、チョウザメの浮袋として販売され、それを原料に作られた膠がヨーロッパオオナマズ由来であること、原料はウサギ皮と表示された膠がウシ由来であること等を確認し、市販膠の原料表示が曖昧で信用度が低いことが分かった。文化財修復材料に適した性質の膠を選択する指針作りが必要である。DNAについては、原料生産や膠の調製時に薬品処理される等厳しい条件で製造された膠は動物種を推定できないものもあった。エゾシカは皮および膠から動物種を同定できたが、ホンシュウシカは膠からの動物種の推定は困難であった。一方、ホンシュウシカの水素及び酸素の安定同位体分析比が保存期間や抽出条件によって異なることが判明した。
③酵素処理後の質量分析は膠の動物種を同定できる可能性があることが分かった。
④シカ膠は古来の使用実績がありながらこれまで詳しい分析が実施されなかったことから、アミノ酸分析を行った。シカ膠は水に溶解し易く清澄な膠で、ウシ等のゼラチンのアミノ酸組成文献値と細かい違いがあった。魚由来のゼラチンは哺乳類と比べヒドロキシプロリンが少ないことが融点の低さの要因となっており、物性とアミノ酸組成の関連は無視できない。膠においてもアミノ酸組成に着眼したことは新規性ある研究を生み出す可能性がある。
⑤ある量のキチンを添加した塗料は、添加しない塗料や多量添加した塗料よりも、カビを抑制する働きがあることが分かった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究で作成した膠(原料は、ウシ・エゾシカ・ホンシュウシカ・ウサギ・二ホンイノシシの皮・ニベの浮袋)について、ホンシュウシカ以外は、DNAを利用し原料動物種を同定できることが判明した。ホンシュウシカは皮から動物種を同定できたが膠からは動物種の同定は困難であった。また、薬品処理されるなど厳しい条件で製造された膠についてはDNAから動物種を推定できないものもあったが、市販膠についてもDNAの分析が可能であり、DNAを利用した同定の意義が再確認された。その過程において市販のチョウザメ膠とされていたものがヨーロッパオオナマズ由来であったこと、「原料はウサギ皮」と表示された膠がウシ由来であったこと等がDNAによる分析で判明した。この結果、動物種由来の膠の性質に関する従来の見解(例えば、低湿度環境に置かれた場合、ウシ由来の三千本膠は亀裂を生じるが、ウサギ膠の形状は安定している)が揺らぎ、再検討する必要性を示せた。
安定同位体分析(13C、15N、18O、D)は膠原料動物種の同定に有効なツールになるだけでなく、ホンシュウシカの安定同位体分析の結果に見られるように、保存や抽出条件を反映する可能性があることが分かった。
膠の物性に関しては、Ⅹ線を利用した固化膠の構造解析を行い、抽出条件(時間・温度・回数)や動物種によって構造が異なることが示唆された。また、膠を構成するアミノ酸と物性の関係に着眼したことは、膠の物性に関する新規性ある研究に繋がると考えられる。
膠の防カビ処置に関しては、ある量のキチンを膠塗料に添加することで、カビを抑制する効果があることが分かった。環境や人体に優しい天然素材キチンの研究は今後の課題として進めてゆきたい。
以上のことから、本研究はおおむね順調に進んでいると考える。

Strategy for Future Research Activity

膠原料の動物種の同定については、①DNAに着目しPCR法を中心とした膠原料動物種推定の方法に進展が見られたので、30年度から引き続き深層学習に基づいたプログラムの構築とソフト制作を目指す。②製造方法や経年劣化によってDNAの分析が適さない試料が認められることから、酵素分解産物を質量分析する方法の同定への適応について引き続き検討する。
物性評価については、①ゲル融点の違いなどが生じる原因に迫るため、X線などを利用した分子構造に基づく研究を進める。②その上で、アミノ酸組成など分子論的観点から、動物種による物性の違いの要因を浮かび上がらせるよう努める。
歴史的資料の膠原料の動物種の同定については、彩色の制作年代が明らかで且つ未修理の彩色資料について、これまで立ち上げてきた同定方法(PCR法を中心とした動物種の推定や安定同位体分析等)を試みる。それを踏まえて歴史的試料に相応しい分析方法や条件を探る。
これまで、膠に含まれるアミノ酸と膠の性質を関連付ける研究はなかった。30年度にホンシュウシカ皮膠のアミノ酸分析を行い、コラーゲンの骨格を形作るグリシン、疎水性のアラニン、水素結合に関与するセリン、コラーゲンの安定性に寄与するヒドロキシプロリンに着目した。本年度は自主製造した、黒毛和牛皮膠・ニホンイノシシ皮膠・ニベの浮袋の膠のアミノ酸分析を行い、膠の性質の理解につなげるだけでなく、生理活性をはじめとした今後の研究に繋げるデータを収集する。
本年度は当該研究の最終年度である。研究成果を自主企画による公開研究会や関連する学会で速報するとともに、外部の意見を取り込むことで研究方針や問題点を明確化する。また、海外で研究成果を積極的に公表し、膠の情報収集を行う。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018

All Presentation (1 results) Funded Workshop (1 results)

  • [Presentation] 古典的膠及び市販膠のDANを利用した原料推定と安定同位体分析2018

    • Author(s)
      山内章・木曽太郎・山内朝夫・田中重光
    • Organizer
      文化財保存修復学会第40回大会
  • [Funded Workshop] 「台灣和日本的傳統畫材」研討會2018

URL: 

Published: 2019-12-27  

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