2015 Fiscal Year Annual Research Report
災害・復興政策の比較ジェンダー研究―多様性に通ずるレジリエンス構築に向けて
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15H03144
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
原 ひろ子 城西国際大学, 国際人文学部, 客員教授 (90120831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 恵子 城西国際大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40327250)
大沢 真理 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (50143524)
池田 恵子 静岡大学, 教育学部, 教授 (60324323)
魚住 明代 城西国際大学, 国際人文学部, 教授 (90228354)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジェンダー / 災害・復興 / レジリエンス / 多様性 / 災害リスク削減 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年5月20日に開催されたカナダ日本研究学会の分科会にて、研究代表者と分担者の大沢が、本研究の問題意識の表明を含む報告を行った。また16年2月に代表者が国際シンポのパネリストを務めた。5月に第1回研究会を開催し、3月までに8回の研究会を重ねた。研究会では、2008年に全国知事会が都道府県・市町村に実施した「防災分野における男女共同参画の推進に関する調査」および「女性・地域住民から見た防災施策のあり方に関する調査」の概要、およびその後に浮上した課題を確認した。また、2015年3月に採択された国連防災世界会議の仙台防災(災害リスク削減)枠組の特徴と国内政策に取り入れるうえでの課題を把握した。 本研究では、狭義の防災施策だけでなく、地域の社会的包摂に努める施策(地域包括ケア、生活困窮者自立支援、子ども・子育て新システム、子どもの貧困対策、地方版まち・ひと・しごと創生総合戦略)と災害リスク削減の取り組みとの接合を調査する必要があることを合意した。地方創生総合戦略の実施は2016年度からであるため、この面のヒアリングは改めて16年度に行うこととした。 国際的な枠組みが国内の基礎的自治体の施策にどのように取り入れられているか、半構造化面接を行うための質問票を、全国知事会調査の設計にも携わった専門家の助力を得ながら、12月までに策定した。また、カナダ、フィリピン、ドイツ等での調査に備えて、この調査票の英語版を作成した。 12月24日から16年1月2日に分担者の池田恵子がバングラデシュにて、災害管理救援省、カリキュラム・教科書委員会、女性部、計画委員会、UNDPのヒアリング、地域防災施策の視察。代表者がコロラド大学自然災害研究センターを訪問し、交流と文献調査。国内では掛川市(16年2月10日、3月25日)、流山市(2月3日、3月16日)、釜石市(2月25-27日)にてヒアリングを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、カナダ調査につき、研究分担者が渡航せずに現地の大学院生等に委託する方法を想定しつつあった。半構造化面接の調査票を12月までに確定し、国内基礎的自治体3か所(掛川市、釜石市、流山市)とバングラデシュの調査を遂行できたことは、計画通りである。自治体のみならず関係機関や住民団体等へのヒアリングも実施できたことは計画以上といえる。他方で相当額が未使用となったことは、順調とはいえない。 未使用の事情として、16年2月の国際シンポで代表者がパネリストを務めた際に本研究の調査票英語版を提示し、アメリカから来日した専門家に助言を求めたところ、現地の大学院生等への面接委託では十分な調査が困難との意見があり、代表者がコロラド大学等で意見交換のうえで判断することとした。コロラド訪問が3月初旬となったため、繰越申請を行わず相当の額が未使用となった次第である。 また、ジェンダーに配慮した防災教育・トレーニングプログラムの調査については、3月までに予備的な調査を行い、仙台防災行動枠組(2015年3月)に対応したプログラムが2016年度以降に実装されるのを待って調査することが望ましいと判断した。これも未使用額の発生につながった。 地域の社会的包摂に努める施策(地域包括ケア、生活困窮者自立支援、子ども・子育て新システム、子どもの貧困対策、地方版まち・ひと・しごと創生総合戦略)と災害リスク削減の取り組みとの接合を調査する方向に進みつつある点は、2008年の全国知事会調査に対して本研究が課題の探求を深めている側面である。これも、地方版総合戦略の実装が2016年度以降になることから、2015年度においては予備的な調査に止めた次第である。また、災害の記録(文字、現物、音声、映像)の収集と保存および公開につき、専門の記念館や一般の図書館、民間の記録等の重要性も研究課題として、改めて意識することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
6月に第1回の全体会合を行い(城西国際大学)、分担および作業見通しを確認する。自治体レベルの半構造化面接調査の調査票の再検討を行い、国内・国外での実地調査の計画を立て、カウンターパートへの申し入れを行う。東北三県以外の過去の被災自治体のほか、大災害を経験していない国内自治体に対しての調査も行う。 調査項目としては、兵庫行動枠組の理念や項目の行動計画への反映、および実施度合いに注目すると同時に、仙台防災枠組がどのように反映されつつあるかを検証する。兵庫行動枠組の理念である「減災」を担保する事業や、それら事業への予算付けと成果などを検証すると同時に、仙台防災枠組の取り入れられ方を検証する。東日本大災害の被害や復興過程から明らかなように、基礎的自治体レベルの住民参加を組み込んだ行動計画とその実施状況の検証は、重要である。 分担者の魚住はチェルノブイリ原発事故直後のドイツ政府の対応、オランダにおける災害対応に関する調査を行い、加えて日本国内では、南紀地方の対応策の検討を行う。分担者の遠藤は東日本大震災の津波遺児家庭の調査を行ってきており、災害・復興政策に関する新聞報道分析を行う。 ジェンダーに配慮した防災教育・トレーニングプログラムについては、協力者の村松、青木および藤原が、全国の女性センターとの緊密なネットワークを活かして、実施する。 国外では上記のドイツ・オランダのほか、カナダとフィリピンでの調査を行う見込みであり、バンクーバー市、オタワ市などの基礎的自治体、トレーニングに携わるNGO等について、現地の専門家の協力を得ながら、研究代表者・分担者等が一定期間をかけて実施したい。
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Research Products
(10 results)