2016 Fiscal Year Annual Research Report
宗教思想研究の基礎概念再考―mysticism及び関連概念の理論的・系譜学的研究
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15H03162
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
久保田 浩 立教大学, 文学部, 教授 (60434205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴岡 賀雄 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60180056)
深澤 英隆 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30208912)
前田 良三 立教大学, 文学部, 教授 (90157149)
江川 純一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (40636693)
阿部 善彦 立教大学, 文学部, 准教授 (40724266)
渡辺 優 天理大学, 人間学部, 講師 (40736857)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宗教学 / 宗教思想 / 知識社会学 / 概念史 / 系譜学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は<近代的>宗教と<近代的>学問との間の、概念形成上の相互作用を検討するために、メンバーが遂行するミクロな事例研究の現場から生まれてくる理論的反省を共有し、共同での理論形成に向けて集中的に議論していった。前年度は「神秘主義」概念の成立と展開を中心に検討してきたが、本年度はそれを踏まえつつ、「神秘主義」「スピリチュアリティ」「スピリチュアリズム」概念に関わる諸問題にまで対象を広げた。具体的には、全体研究会(2回)において以下の三つの問いについて集中的に議論した。まず、体験主義的に捉えられがちな「神秘主義」概念を再検討するために西洋近世の事例から、「神秘主義」の一面に、体験主義には還元できない経験の学知としての信仰理解が認められるのではないか。次に、近代ドイツの「美的モデルネ」と「民族主義宗教」を「スピリチュアリティ」の観点から分析することが可能ではないか。第三に、近代ドイツにおける「スピリチュアリズム」を巡る議論の中で、「神秘主義」「アニミズム」等の諸概念が、宗教的・学問的言説の両者において生み出され、或いは使用されることによって、近代的概念として確立してきたのではないか。そして最後に、本年度の課題の一つであった比較文化的観点から、日独の文献学の成立過程の中に見られる文化的ネイティヴィズム・文化的本質主義と「神秘主義」との思想的関連についても検討した。一方、理論的枠組みの構築を目的として、ほぼ毎月、勉強会を開催し、N・ルーマンの知識社会学とM・ド・セルトーの「神秘主義」論の検討を継続し、更に本年度は、本研究課題の成果の一つとして計画している「宗教理論」に関する事典編纂のための勉強会も定期的に開催し、宗教を理論化するという営為に関わる諸問題と取り組んだ。そして各メンバーは、これまでの研究成果の一部を論文、学会発表等の形で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、定期的に会合、研究会及び勉強会を開催し、本研究課題に関わるメンバーの個別研究の内容と進捗状況について共有し、かつ方法論と理論的枠組みについて共同で検討することができた。また海外共同研究者との連携も、特に次年度に計画されている国際ワークショップ等の具体化を念頭に置きつつ、各メンバーの海外での資料蒐集の時期と併せて、海外共同研究者と共同研究の内容と実施方法について会合を行って計画を深め、具体化することができ、その実現に向けて手続きを進めている。以上から、本研究課題は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も引き続き、関連諸概念の成立と展開に関する実証的かつ批判的研究を、第一次資料の分析に基づき継続して行い、その進捗状況を共同で確認する作業を定期的に行うこととする。但し今年度以降は、そうした全体会議としての研究会等と並んで、先述した「宗教理論」に関する刊行物の実現に向けてより具体的に動き始め、宗教の理論化に伴う諸問題に関する会合を、研究会に準じた勉強会という形で重ねていく。また、27年度に実施した国際シンポジウムの継続企画を29年度に行う計画であるが、海外共同研究者の都合と、これまでの研究進捗状況並びにそこで明らかとなった新たな関連トピック(現在のヨーロッパにおける宗教事情を背景とした宗教思想形成の問題、キリスト教研究における宗教理論化の問題、近代化と宗教・宗教学の制度的関連についての問題等)の発見を考慮して、当初の計画を以下のように発展させた形態で実施することとする。即ち、前回のシンポジウムで行った統一的主題に基づく共同の検討作業ではなく、以上のトピックごとに、テーマを分けて別個にワークショップ形式で行うことにより、それぞれのトピックについて詳細な議論が展開できる場を設定する。そうすることで、これまでの研究成果との有機的な継続性が担保されると同時に、各メンバーが明らかにしてきた課題領域と全体で検討してきた総合的理論化の作業を多角的に構成する可能性が開かれると考えられるからである。研究成果の公表については、前年度までと同様、学会等での発表の機会を積極的に利用していくこととする。
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Research Products
(27 results)