2017 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03178
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
藤本 由香里 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (50515939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Jaqueline BERNDT 京都精華大学, マンガ学部, 教授 (00241159)
椎名 ゆかり 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 講師 (10727796)
伊藤 剛 東京工芸大学, 芸術学部, 教授 (30551519)
夏目 房之介 学習院大学, 文学部, 教授 (70351301)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マンガ / 海外市場 / 文化の伝播 / スタイル / 海外マンガ / ローカルマンガ / グラフィックノベル / 表現論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究代表者の藤本が在外研究から帰国したため、これまで破竹の勢いで進んできた海外調査もイタリアのみとなった。 しかし長年の調査の結果、日本マンガの海外展開のブレークスルーとなったのは1992年の台湾の著作権法改正であったことが明らかになり、その成果を含めた論文を「海賊版マンガから正規版への移行過程と残る諸問題――台湾とタイの事例を中心に」として共著で出版した(藤本)。これは本科研費の研究テーマ「Manga<Style>の海外への伝播と変容」にとっても基礎となる大きな発見であり、メンバー全員で共有した。 また藤本はマレーシア、フィンランドの調査結果を調査レポートとして発表するとともに、ずっと調査してきた「マンガの読み方向」の問題を、ハワイの国際学会で発表した。一方、欧米各国を巡回する「マンガ北斎漫画」展の監修者であるベルントは同展覧会の巡回に伴ってカタログに解説を書き、各国の国際学会やシンポジウム等に招かれ、意欲的に多数の発表を行った。「描く!マンガ展」の監修者である伊藤剛も、同展の国内巡回に伴いゲストレクチャーを行い、夏目は中国・タイ・イタリアで行ったアンケートの分析を続けるとともに、論文や講演を通して「マンガ表現論」の再考を行った。本年度、椎名はもともとのフィールドであるアメリカでの分析に対する対象項として、逆に日本における海外コミック受容の言説史の調査を集中して行い、本科研費の研究会で発表した。 また本年度は、アメコミの表現とマンガスタイルがミックスされた作風で知られ、その形式で描かれてハリウッド映画化もされてヒットした『スコット・ピルグリム』の作者であるブライアン・リー・オマリーを招いて、椎名を聞き手として明治大学で大学院特別講義を行った。講義自体は明治大学大学院の授業の枠を使ったが、終了後も引き続きオマリー氏に話をうかがうことができ、貴重な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度までは研究代表者の藤本が在外研究中で、この研究に注力することができた。そのため、海外調査自体はめざましく進展したといえよう。 しかし、在外研究から戻ってからは、学内で振られた仕事が予想以上に膨大で、調査のまとめの作業をするための時間がなかなか取れず、その部分では予定よりも遅れている。 また、代表者の藤本が動ける時間が限られていたこともあり、全体の研究会の予定をなかなか合わせることができず、予定の回数開くことができなかった。 とはいえ、かねてからの懸案だった「マンガの描き方」の海外版の担当者を呼んで詳しく話を聞く、という研究会は、ようやく今年開催することができ、海外各地でもっともよく見かけるシリーズ『How to draw Manga』の海外展開の担当者を招いて、そもそもの企画の立ち上げから、海外展開がどのようになされていったか、国ごとに売れ行きの違いはあるのか、この間、売れ行きの傾向は変わってきたのか、等について詳しく聞くことができた。 全体に本年度は、研究を先へ先へと進め続けるというよりも地固めの年であり、めざましい進展はなくとも、落ち着いて研究を整理し、先に繋げる、という年であったと位置づけられる。 何回か開いた研究会の中で、最終年度にどういうシンポジウム、学会を開いていくのかという案はほぼ固まってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、各人がそれぞれの研究のまとめに入ると共に、国際学会・シンポジウム、講演会等を、日本とスウェーデンで複数回行う。 まずスウェーデンでは5月に、ストックホルムコミック祭(SIS18)においてベルントが企画したMangaをめぐる1日のセッションでは、藤本が日本のBLマンガの発展過程とその海外展開についての発表を行うほか、アルゼンチン出身で現在はポーランドで「劇画」スタイルの作品を発表する作家BERLIAC氏、日本でマンガスタイルのエッセイが大ヒットしたスウェーデン人マンガ家オーサ・イェンストローム氏等による発表を行う。また9月には、日本・スウェーデン外交関係樹立150周年記念の意味も持たせた国際学会”Manga, Comics and Japan: Area Studies as Media Studies”をベルントの仕切りでストックホルム大学で大々的に行う。 一方、日本では、まず11月に、日本の少年マンガのスタイルで描いた『ラディアン』が日本で出版され、この秋NHKでアニメ化が決まったフランス人作家トニー・ヴァレント(カナダ在住)を中心に、同じくフランス人のレノ氏、スペインのケニー・ルイス氏等、マンガスタイルの影響のもとで作品を描く複数のヨーロッパ人作家を迎え、国際シンポジウムを行う。この時には、第二部としてアメコミへの造詣も深い日本のマンガ家・内藤泰弘氏を迎え、アメリカにおける日本マンガスタイルの影響について語っていただく予定である。 そして、本科研費による我々の研究の総決算として、2019年3月上旬に、それぞれの研究成果をパネルに分けて2日間にわたって行う。この際には、アメリカから、早い時期に日本マンガの表現上の特徴の分析を含む『マンガ学』(邦訳名)で世界的に有名になったスコット・マクラウド氏をKey Note Speakerとして招く予定である。
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Remarks |
上には、研究代表者と共同研究者の実績のうち、Webで読めるもののURLを挙げました。本科研費研究会自体のHPはありません。
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Research Products
(41 results)