2015 Fiscal Year Annual Research Report
再興・布教から霊場化へ―増吽関連の寺院経蔵調査を中心に―
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15H03181
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 一麿 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (10420415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 博志 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50224259)
伊藤 聡 茨城大学, 人文学部, 教授 (90344829)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 木山寺 / 資料展示 / 地域連携 / 覚城院 / 寺院蔵書調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
木山寺で資料展示及び、講演会を開催した。展示資料は木山寺・木山神社所蔵の彫像・棟札・絵画・典籍・版木、計120点余り。その大半が調査で発見された資料群であり、初公開である。同時に木山寺客殿にて、関連講座を開催した。これらは本研究での学術資料調査が起点となり、所蔵者である寺社、及びその関係住民、更に地元教育委員会や博物館の協力を得て行った。学術面のみならず、学術資料調査が果たす地域貢献として大きな成功例と成り得た。更に、関係書籍の出版計画へと発展し、28年秋刊行に向けた調査・執筆にも取りかかっている。木山寺経蔵の悉皆的調査を通して、木山寺経蔵の全体像が把握されるに随い、近隣寺院や高野山との繋がり、善覚稲荷信仰の起源と広がり、神仏習合の木山宮内での諸相、神仏分離の混乱期の様相、など多義に亘る研究の進展に期待が高まっている。 覚城院の蔵書調査は、その状態改善と点数の把握を主目的として行った。本堂内収蔵の典籍群を現在は29函に振り分け、内15函までに目を通すと同時に、塵払い・頁開き・配列整理などを行い、典籍番号の付加を行った。状態改善が優先の為、蔵書全体の特徴などは未だ不詳なるも、中世写本率が高い事、塔頭の金光寺や伊予実報寺からの流入本が多い事などが指摘できる。 増吽関係資料の収集として、明石市の密蔵院を訪問、増吽に関係する寺伝を聴聞した。また岡山県の長福寺所蔵の伝増吽筆十二天絵像、及び同時代筆の両界曼荼羅のデジタル撮影を行った。更に、徳島県の蓮光寺でも、増吽筆との裏書が残る不動明王絵像と両界曼荼羅の実査を行った。 以上のことは、第1回日本語の歴史的典籍国際研究集会「可能性としての日本古典籍」にて、「増吽年譜雑考-安住院・覚城院蔵書調査を通して-」と題した発表や、日本学術研究支援協会-JARSA( http://jarsa.jp/kiyama2015/ )に掲載するなど一部報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
木山寺での資料展示は開創1200年の記念事業として行うものであった為、科研費の採択決定から半年で行わねばならなかった。その為、集中的に木山寺・木山神社の調査を行った。展示に資する典籍を選定する為、調書作成や撮影などは後回しにし、典籍を中心に一通り目を通す事を優先的に行った。同時に、地元の教育委員会や博物館に協力を要請した。更に分担・連携研究者以外にも、適任と思われる研究者に調査への参加を促し、短期間で出来うる限りの準備を行った。当初は既知の文化財に多少追加した程度の展示も止む無しと考えていたが、殆どが初公開となる貴重な資料展示となり、新聞掲載やケーブルテレビでの特別番組作成に至るまで企画が拡大した。加えて、その成果の出版計画も進行する事になり、事業規模・成果ともに当初の想定を上回るものとなった。 木山寺での調査や成果公開の方法は、他の寺院にも応用可能であり、次年度以降の覚城院をはじめとする調査に活きる経験を積むことができた事は非常に有意義であった。 覚城院をはじめとする増吽関連寺院の調査も研究実績の概要に記した如く、概ね順調に推移している。今後木山寺で行った活動をモデルとして、覚城院宝物と増吽関係資料の展示報告の開催を目指して、資料調査・収集と環境整備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
木山寺の研究書を平成28年秋に刊行する。その編集・執筆及び確認調査を行う。その後は木山寺所蔵典籍の目録作成を主目的とした調査を継続して行う。 覚城院の調査は、現在行っている保存状態の改善と典籍番号付加の為の作業を継続しつつ、香川県立ミュージアム寄託の什物に関しても折を見て調査・撮影を行う予定である。 安住院の写本目録は、補訂作業を粛々と続けているが、前科研で調査対象外にしていた大量の版本の調査も開始する予定にしている。 西福寺の総合目録作成に関する作業を開始する予定である。 その他の寺院での活動を含め、これらの作業は、諸般の事情を熟慮の上、優先順位を決めて行っていく。 企画・範囲・人員・成果等の何れにおいても研究が好転しているのは喜ばしいところであるが、一方で財源の不足は深刻化している。財団助成や分担者による隣接研究の科研申請等も行っているが、保証の限りでは無く、次年度以降は本科研の前倒し申請を現実的に検討していく。
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Remarks |
INDEX 1.開催趣旨 2.基本情報 3.主な展示品(出展リスト) 4.リレー講座 5.会場へのアクセス(送迎バス) 6.木山寺・木山神社の沿革と概要 7.同時開催イベントのご案内 8.開催報告
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Research Products
(8 results)