2015 Fiscal Year Annual Research Report
英語シャドーイングで話者の顔動画をみる効果:NIRSによる脳内処理機構の解明
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15H03229
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
門田 修平 関西学院大学, 法学部, 教授 (20191984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野呂 忠司 愛知学院大学, 文学部, 教授 (40218376)
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20347785)
長谷 尚弥 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50309407)
中野 陽子 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20380298)
氏木 道人 関西学院大学, 理工学部, 教授 (20369680)
中西 弘 東北学院大学, 文学部, 准教授 (10582918)
風井 浩志 関西学院大学, 理工学部, 理工学部研究員 (80388719)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シャドーイング / 近赤外分光法 / 眼球運動 / 顔動画 / 第二言語習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1年目は、実験の準備期間と位置づけ、まず1つには、英語その他の言語における音声知覚の運動理論(motor theory of speech perception)やマガーク効果(McGurk effect)、さらには近年とみに関心が高まっているミラーニューロン(mirror neurons)など、関連する先行文献の調査を行った。 その上で、平成23年4月~27年3月の共同研究でも活用した、関西学院大学理工学部人間システム工学科に設置済の近赤外分光法測定装置(NIRS:島津FOIRE-3000)によるNIRSデータ収集とともに同時計測を行う非接触型アイカメラ(眼球運動測定装置)を選定し、最終的にEYELINK急速眼球運動解析装置(ゼロシーセブン・ELM-BASE)を購入した。前者のNIRS装置は、生体に安全な近赤外光を送光ブローブにより脳内に照射し、大脳皮質で吸収・散乱を起こした光を受光ブローブにて集光することで、大脳皮質の神経活動に伴い変化する酸素化ヘモグロビンの相対的変化量をリアルタイムで計測するものであるが、このNIRSにより測定される脳内処理活動と、学習者の眼球(視線)運動がどのような連関性を示すか探るための装置を導入したことになる。 以上に加えて、平成27年度は、研究テーマ『英語シャドーイングで話者の顔動画をみる効果』の詳細な理論的考察を行った。この考察の結果、実験の統制条件について、①不一致条件はやめる、②静止画+音声および音声のみを統制条件として、③動画+音声の実験条件とともに比較検証することにした。 以上が平成27年度の研究実績概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、NIRS(近赤外分光法測定装置)およびアイカメラ(眼球運動測定装置)を用いて、主に次の2つの実証研究を遂行しようとするものであった。 (1)英語シャドーイングにおいて、「動画+音声」「静止画+音声」と「音声のみ」を比較し、3条件下でのシャドーイングの行動データ(再生率等)、眼球運動データにどのような影響がみられるか検証する。 (2)上記3条件下における脳内処理プロセス(NIRS データ)と「動画」に対する眼球運動、および2種類のシャドーイングトレーニング後の黙読における脳内処理プロセスと眼球運動にどのような関連(相関)がみられるか検証する。 このような実験で使用予定のアイカメラの購入に関連して、既に設置済のNIRS と今回導入したアイカメラの同時データ計測が、前頭葉領域および言語処理に関わる側頭用領域ではほぼ問題なく実施できる見通しを得るためのデモ(予備実験)を実施し、その結果を踏まえて実験研究計画(検討課題、手続き等)を明確化することができた。 以上により、シャドーイング練習時に、学習者が顔動画のどこをみているか計測することが可能になり、NIRSによる脳内処理計測と眼球運動計測の同時データ収集を実現するためのさらなる一歩を踏み出すことができたと言える。この意味で、平成27年度は、上記実験開始に至るまでの準備作業を行うという目標を達成し、ほぼ順調な実績をのこすことができたのではないかと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで設定した上記の研究目的(1)(英語シャドーイングにおいて、「動画+音声」「静止画+音声」と「音声のみ」を比較し、3条件下でのシャドーイングの行動データ(再生率等)、眼球運動データにどのような影響がみられるか検証すること)の検討に向けて、検討課題の精緻化、実験材料となる英語パッセージ・音源の選定、実験手続きの確定など具体的な検討をすすめる。そして実際に実証研究(実験)を実施することにより、話し手の顔動画を視覚呈示することがシャドーイングにどのような学習者効果をもたらすかについて詳細に検証したい。 以上の研究を遂行することを通じて、話し手の顔動画をみながらのシャドーイングのトレーニングが、トレーニング後の黙読(silent reading)やその他の言語運用活動にどのような影響(学習転移)をもたらすかを明らかにできるようになる。認知的にチャレンジングな、目標言語との距離が遠い第二言語習得状況にある日本人英語学習者が、認知的にあまりチャレンジングでない、目標言語との距離が近い母語の第二言語学習者と比べて、異なる学習・習得プロセスを仮定することが不可欠であるが、この点で、以上の実験研究はシャドーイング学習法によって「認知的にチャレンジングな学習条件を生み出すこと」の重要性をあらためてモデル化することの必要性につながるのではないかと考えられる。
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[Journal Article] The Effect of Shadowing on the Subvocal Rehearsal in L2 Reading: A Behavioral Experiment2016
Author(s)
KADOTA, Shuhei, KAWASAKI, Mariko, SHIKI, Osato, HASE, Naoya, NAKANO, Yoko, NORO, Tadashi, NAKANISHI, Hiroshi, KAZAI, Koji
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Journal Title
Language Education & Technology
Volume: 52
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
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