2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03248
|
Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
橋本 道範 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 専門学芸員 (10344342)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 幸代 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10315921)
里口 保文 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 専門学芸員 (20344343)
鎌谷 かおる 総合地球環境学研究所, 研究部, 特任助教 (20532899)
瀬口 眞司 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, その他 (20742258)
佐々木 尚子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 研究員 (50425427)
村上 由美子 京都大学, 総合博物館, 准教授 (50572749)
大久保 実香 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 学芸員 (50636074)
小椋 純一 京都精華大学, 人文学部, 教授 (60141503)
苅米 一志 就実大学, 人文科学部, 教授 (60334017)
藤岡 康弘 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, その他 (60505022)
林 竜馬 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 学芸員 (60636067)
矢田 直樹 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, その他 (60742278)
保立 道久 東京大学, 史料編纂所, 教授(移行) (70092327)
高梨 純次 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, その他 (70742279)
篠原 徹 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 館長 (80068915)
春田 直紀 熊本大学, 教育学部, 教授 (80295112)
市川 秀之 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80433241)
渡部 圭一 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 学芸技師 (80454081)
澤邊 久美子 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 学芸員 (80626135)
亀田 佳代子 (小川佳代子) 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 総括学芸員 (90344340)
妹尾 裕介 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 学芸員 (20744270)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 地域環境史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、成果のとりまとめに向けて、議論の核となる自然観論の整理、各議論の座標になる地域人口論、森・水辺・湖論の整理を行い、個々の研究成果を全体に位置づける作業を行った。また、研究成果の一部をアメリカ合衆国オハイオ州立大学で発表するなど、成果の国際的発信を始めた。 まず、本研究では、環境を重視した「人間中心主義でも環境決定論でもない新しい試行錯誤」(小塩和人2003)であるEnvironmental History(「環境史」)や文学に現れる自然と現実の自然とのギャップを分析するEcocriticism(「エコクリティシズム」)という新たな世界的研究潮流に注目することとした。そこでは、自然そのものの変化を取り上げるとともに、これまでの科学史的自然観論や人類学的・民族科学的・民俗学的自然観論とも異なる、Secondary nature「かくあるべき自然」と現実とのギャップに着目する第三の自然観論についても議論を行った。 また、本研究では、琵琶湖地域を対象として「地域環境史」を描くことに挑戦しているが、その際、琵琶湖の「水辺」に重点をおくこととした。ここでいう「水辺」とは、「記録に残る過去最大の洪水である明治29年(1896)の洪水(B.S.L+3.76m)時に湛水した陸域から、およそ水深7mの琵琶湖沿岸帯」(国土庁大都市圏整備局ほか1999)のことを指す。そして、琵琶湖地域を「湖と水辺」と、地域のおよそ半分を占める「森と林野」とに区別して扱うことになった。なお、水田や草地は、湿性のものは「水辺」に、乾性のものは「森と林野」に含めて考察することとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、「ムラと自然観」について、滋賀県立琵琶湖博物館がよって立つ生活環境主義を批判的に継承している本研究によって、生活者が形成している現在の「大字」に相当する「ムラ」の歴史的意義が明確になりつつある。このムラの世界史的特質がその前史との比較によっても明らかになりつつあるとともに、掟、信仰、民俗儀礼などムラの自然観の実態が明らかになりつつある。 次に、「消費と自然観」について、首都京都を中心とした消費とムラを基盤とする生業との関係が明らかになりつつある。特に、消費については、材の消費と魚介類の消費実態について研究が進展した。また、滋賀県における出土木製品用材データベースの解析が進み、古代にはスギのみならずヒノキ・ヒノキ属も卓越することが明らかになり、材の流通や人々の用材観にも関わる重要な変化が見出された。さらに、1895年から2009年までの全漁獲量に占める魚種の割合の変化が明らかになった。 次に、「生業と自然観」について、ムラの自然観と生業との関わりを明らかにする基盤が構築された。特に、琵琶湖地域の古植生に関しては、今回大きな成果を得ることができた。琵琶湖博物館所蔵の「琵琶湖真景図」(1866年)と大津市歴史博物館所蔵「琵琶湖眺望真景図」との比較によって両史料が当時の植生をかなりよく反映していることが明らかになった。また、遺跡の古生態学データの分析によって、過去1万年における通時的な森林植生の変化、すなわちコナラ亜属優位からアカガシ亜属優位への変化、イネ科・マツ属の出現から優位への変化、スギ花粉の減少等も明らかになっている。これにより、森や材の価値付けなどの自然観の変化、資源利用の変化と現実の自然との照合作業が可能な状態となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1、個別研究の原稿化と研究会の開催について:最終年度であるため、年度末に向けて、各研究分担者が論文の執筆を進める。そのため、データの整理、補充の文献の収集・整理、補充の調査等を行う。また、成果を報告しあう研究会を実施する。 2、出版に向けた原稿のとりまとめについて:本研究課題の成果については、当初より刊行物として公表する計画である。研究会において併せてその計画・内容・構成等を議論したい。現時点では、第1部「ムラと自然観」、第2部「森と林野」、第3部「湖と水辺」という構成としたいと考えている。 3、公開セミナーの開催について:引き続き研究会を開催するが、研究成果がまとまりつつあるので、1月を目途に滋賀県立琵琶湖博物館の公開セミナーで成果の概要を報告する。 4、成果の常設展示への反映について、本研究課題の成果については、刊行物として公表するだけでなく、2020年にリニューアルオープンする琵琶湖博物館の常設展示B「湖と人間の2万年―身近な自然と暮らしの歴史―」に反映させる計画である。2018年度は、こうした点についても議論を行い、展示実施設計策定に寄与したい。
|
Research Products
(32 results)