2017 Fiscal Year Annual Research Report
A scientific research on the process of spread of agriculture in the North-Eastern Asia by the botanic archeology
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15H03266
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮本 一夫 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60174207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
田中 克典 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (00450213)
三阪 一徳 九州大学, 人文科学研究院, 助教 (00714841)
小畑 弘己 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80274679)
上條 信彦 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (90534040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宇木汲田貝塚 / 炭化米 / 弥生時代 / 炭素年代 / 土器植物圧痕分析 / イネのDNA分析 / 山東烟台 |
Outline of Annual Research Achievements |
弥生早期の貝塚遺跡である宇木汲田遺跡1984年調査の土壌資料をフローテーション分析し、弥生早期の炭化米400点を採集した。このうちⅩa層の炭化米2点、Ⅸa層の炭化米2点の炭素年代を測定した。また、同じ宇木汲田遺跡の土器内面付着炭化物の炭素年代3点を測定した。この他、江辻SX1の土器付着炭化物あるいは有田遺跡貯蔵穴出土炭化米の年代測定を行い、弥生早期から前期の標準試料の年代測定を行った。これにより、弥生時代の開始が紀元前9~8世紀であることを実証した。この成果は、12月の九州史学会考古学部会で発表し、新聞記事としても取り上げられた。さらに論文を『考古学雑誌』に投稿し出版される予定である。また、宇木汲田貝塚出土炭化米のDNA分析を田中が行い、熱帯ジャポニカと温帯ジャポニカを検出した。 11月に、山東省烟台市において、宮本、上條、小畑、三阪が参加して龍山文化・岳石文化遺跡の石器使用痕分析・土器植物圧痕分析や土器の製作技術分析を行い、龍山文化・岳石文化期の当該研究分析を行うことができた。また小畑・三阪は6月・7月に京都大学所蔵の遼東半島の羊頭窪遺跡の土器植物圧痕分析や土器の製作技術分析を行い、遼東半島青銅器時代初期の当該分野の資料を増やすことができた。 山東省楊家圏遺跡のボーリング調査を2016・2017年度に行ったが、これまで谷部の一部で見つかっていたイネのプラントオパールが谷全体に及ぶ可能性が高まり、その植物珪酸体の分析を宇田津が行った。これらの研究結果は、宇田津と宮本がまとめ、中国語論文として中国語雑誌『東方考古』に投稿中である。同じく、2016年度に実施した小畑による遼東半島王家村遺跡の土器植物圧痕分析の成果を中国語論文として『東方考古』へ投稿中である。 これらの結果については、2018年2月に九州大学で開催した研究会において研究成果を持ち合い、研究の方向性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中国山東省楊家遺跡のボーリング調査により、山東龍山期の水田がこれまで確かめられていた以上の広い空間に存在する可能性が明らかとなり、当時の総生産量の想定を大きく変える必要がある発見をもたらした。 また、イネの山東半島から遼東半島への伝播が龍山文化期に遡ることが、土器圧痕分析によって証明された。また、その段階のイネにこれまで知られていた熱帯ジャポニカ以外に温帯ジャポニカも存在する可能性がたかまった。この温帯ジャポニカが弥生時代に普遍化するが、炭化米の粒度分析からも、弥生初期には熱帯ジャポニカと温帯ジャポニカの両種が共存する可能性が明らかとなってきた。また、そのイネの到来の年代まさに弥生時代の始まりが、宇木汲田遺跡の炭化米および土器付着炭化物の年代測定により、紀元前9~8世紀であることが明確となった。この新発見に関しては新聞でも報道された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を発信するため、まず2018年5月の日本考古学協会でのセッションにて研究発表を行う。その後、研究成果を世界に発信するため、2018年6月に中国南京で行われる東アジア考古学会にて、研究成果の特別セッションを企画し、英語で発表を行う。12月には九州大学で山東大学の研究者も交え、研究成果の報告会を予定する。また、今年度中に研究成果の成果物として報告書を印刷する。
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Research Products
(14 results)