2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本と韓半島の米調理方法の変化要因の解明: 米品種の多様性の視点から
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15H03269
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Research Institution | Hokuriku Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 正史 北陸学院大学, その他部局等, 教授 (50225538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 博司 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (20326755)
木立 雅朗 立命館大学, 文学部, 教授 (40278487)
鐘ヶ江 賢二 鹿児島国際大学, 公私立大学の部局等, その他 (00389595)
長友 朋子 (中村朋子) 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (50399127)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 土器機能研究 / 炊飯方法 / 民族考古学 / 深鍋 / カマド / 韓半島 / ススコゲ / 土器使用痕研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、事業計画に沿って、1)土器使用痕分析ワークショップの開催、2)炊飯民族誌の比較分析(民族誌調査)、3)炊飯実験の事業を行った。 ススコゲ観察会: 讃良郡条里遺跡の古代土器(5~6世紀、大阪府文化財センター中部事務所、4月24日)、多摩ニュータウンno399遺跡の古代土器(東京都埋蔵文化財センター、7月10日)、八日市地方遺跡の弥生中期深鍋(4~7月に3回の観察会、小松市埋蔵文化財センター)、宮城県中筋遺跡の古墳前期深鍋(2016年2月、東北学院大学)島根県山持(ざんもち)遺跡の弥生後期深鍋と古志本郷遺跡の古墳前期深鍋(2016年3月末、島根県埋蔵文化財センター)などの観察会を研究分担者・協力者の方々と共に行った。 この他に、榛名山の6世紀の大噴火により埋没した群馬県中筋遺跡などの資料調査を4月に行い、竈の出土状況を観察した。出土した鍋釜も観察したが、残念ながら廃棄後被熱によりススコゲを観察できなかった。また、2016年度韓国ワークショップ(昌原市ウリ文化財研究院で2016年5月3・4日に開催)の事前資料調査を2016年3月に分担研究者の長友朋子氏が行った。 炊飯民族誌調査: 2015年8月22日~9月20日にラオス・アタプー県のオイ族集落(チョンプイ村など)において調理と水田稲作の民族誌調査(第3回目)を、ラオス文化遺産局およびタイ国立ウボン大学(Sureeratana Babpha講師)との国際共同研究として実施した。また、2015年8月8~15日にインドネシアの中部ジャワとバリ島において米調理(サル取り法)の民族誌調査をインドネシア科学院LIPIとの共同研究として実施した。 炊飯実験: 金沢市の北陸学院大学キャンパスと山形市東北芸術工科大学において、複製弥生深鍋による炊飯実験を数回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、当初の研究計画に沿った3分野の事業を開催できた。ただし、当初、2015年5月の連休時に計画していた韓国ワークショップについては、準備が間に合わなかったため、2016年度のワークショップの事前調査のみを行った。 上述した発掘された鍋釜の使用痕(ススコゲ)分析、炊飯民族誌の比較分析、調理実験の3つを組み合わせた分析により、弥生時代から中世までの米調理方法の変化過程とその要因がかなり明らかになってきた。 また、本科研の重要な目的である「道具としての土器の研究(土器機能研究)の普及」については、国内各地での土器観察会、韓国ワークショップ(2016年5月に開催)、中国浙江省田螺山遺跡博物館での土器観察会(小林を研究分担者となっている別の科研事業)などにおいて、ススコゲの観察方法を普及させるための活動を行った。これらの普及活動を通して、土器機能研究が徐々にではあるが普及する兆しが見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度も、当初の研究計画に沿って、発掘された鍋釜の使用痕(ススコゲ)分析、炊飯民族誌の比較分析、調理実験の3つを組み合わせた研究を進める。 これまでの分析により、弥生時代から中世までの米調理方法の変化過程とその要因(米品種の交代が主要因)がかなり明らかになってきた。これを「米品種交代仮説」を名づけ、今後、具体的な証拠をさらに固めるための調査を継続する。なお、日本と韓半島の古代の米蒸し調理については、日本考古学協会で分科会を開催し、研究成果を公開する。 2年目の2016年度は、韓国、台湾、中国、タイ・ラオスの研究者との土器観察ワークショップを活発に展開し、「米品種の種類と調理方法の関連」「調理方法や土鍋の変遷と地域差」について東南アジア・東アジアという広い視座で分析を進める予定である。
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Research Products
(22 results)