2016 Fiscal Year Annual Research Report
Reasons for the changes in ancient rice cooking method in Japan and Korea: focusing on the variability of rice types.
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15H03269
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Research Institution | Hokuriku Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 正史 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授(移行) (50225538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 博司 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (20326755)
木立 雅朗 立命館大学, 文学部, 教授 (40278487)
鐘ヶ江 賢二 鹿児島国際大学, 公私立大学の部局等, 書記 (00389595)
長友 朋子 (中村朋子) 立命館大学, 文学部, 准教授 (50399127)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 調理方法 / 米蒸し / 炊飯方法 / 弥生 / 古墳 / 米品種の交代 / 韓半島 / 煙道付き竈 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度はススコゲ観察ワークショップ、民族誌調査、複製土鍋による調理実験を行った。 ワークショップは、横川里遺跡(三国時代、韓国ウリ文化財研究院)、中世の草戸千軒遺跡(広島県立歴史博物館)、弥生後期~古墳前期の山持・古志遺跡(島根県埋文センターで4・7・10月の3回)を開催した。また、岡山県上東遺跡と鳥取県博労町遺跡での3Dスキャナー実測によるスス・コゲ観察も実施した。 これらの土器観察を通して、①山陰地域においても、古墳前期における「湯取り法炊飯の茹で時間短縮化(焦げ付く前に蒸らしに移行)」が確認された、②5C後半~古代の米蒸し期を経て、中世には炊飯に転換したことが確認された、③韓半島では3世紀後半(日本で炊飯の茹で時間短縮化と浮き置き加熱への転換が起こった時期)に日本より200年ほど早く蒸し調理に転換したが、「竈に湯釜1個掛け地域」と「2個掛けも用いる地域」という地域差がみられたことから、日本における1個掛けと2個掛けの地域差と時間的変化が調理方法の違いに起因することが予想された、などの点が示された。 民族誌調査はラオス・オイ族の米作りと食文化の調査とインドネシア・バリ島のウルチ米を蒸す調理の調査を行った。前者では、米品種の粘り気度の違いが米品種の早晩性や水田の水条件と相関することが示された。よって、上述の「古墳前期における炊飯の茹で時間短縮化」をもたらした「米品種の粘り気度の増加」の背景として、より水条件の悪い水田への開発の進行が想定された。 バリ調査では、ウルチ米を(炊くのではなく)蒸す理由として、「粘り気度の異なる米品種を混ぜて調理したこと」と「2日分まとめて調理した(蒸し直す)こと」が示された。よって、韓半島と日本の古代におけるウルチ米を蒸す調理の普及と米蒸し時間の短縮化傾向も、米品種の粘り気度や「1回の穀物調理量」が関連することが想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、当初の研究計画に沿って、土器観察ワークショップ(韓国と国内数カ所)、民族誌調査(ラオス・オイ族の調理と米作り調査とインドネシア・バリ島でのウルチ米の蒸し調理調査)、調理実験などの事業を行った。これまでの科研調査から、日本と韓半島では、「東南アジア民族誌と同様に、粘り気の弱い米品種を湯取り法で炊いていた弥生・古墳時代(韓半島では青銅器時代~原三国時代)」から、「蒸したウルチ米が主食となる古代」をへて、「現代と同様の粘り気の強い品種を炊干し法で炊くようになる中世」という米調理方法の変化がみられるが、これは東南アジア的な粘り気の弱い米品種から、現代の極東地域の粘り気の強い品種への転換過程を示すことが明らかとなってきた。今回のラオスとバリ島の民族誌調査では、以下の点で、韓半島と日本における米調理方法(米品種の粘り気度)の変化を生み出した要因が示唆された。 第一に、ラオス・オイ族の民族誌調査で明らかとなった「米品種の粘り気度は早晩性や水田の水条件と相関する」ことを参照すると、弥生時代から中世まで一貫して見られる「米品種の粘り気度の増加傾向」の要因の一つとして、水条件の劣る環境への水田開発の進行が示唆された(小林・外山2017など)。 第二に、バリ島の米蒸し民族誌調査において、ウルチ米を(炊くのではなく)蒸した理由として、粘り気度の異なる米品種を混ぜて調理したことが示唆された。日本・韓半島の古代の米蒸し期は、「弥生時代以来の粘り気の弱い米品種」と「現代につながる粘り気の強い米品種」の交替・並存期に当たることから、同様の要因で説明することが可能と考えられる。 なお、研究成果の公開は、日本考古学協会総会での「米蒸し調理」分科会と考古学ジャーナルの特集号「道具としての土器(土器使用痕研究)」などの形で行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2017年度は、土器観察ワークショップ(韓国と国内)、民族誌調査(ラオス・オイ族の調理と水田稲作の第5次調査)、複製土鍋による炊飯実験、などを行うと共に、3年間の研究成果の取りまとめを行う。 土器観察ワークショップでは、これまでと同様に韓半島と国内数カ所で開催する予定である。テーマは、①古墳前期における湯取り法炊飯の茹で時間短縮化(直置きから浮き置きへの転換と連動)、②古代の米蒸し期における調理方法の具体的復元(竈構造やオカズ調理との関連、食器から見た食べ方との関連)、③中世の米調理方法(草戸千軒遺跡の土器観察の継続)、④弥生~古墳前期における東日本と西日本の炊飯方法の違い、などを設定している。 ラオス・オイ族(2017年度が第5次)とバリ島(2017年度が第3次)の民族誌調査では、上述の点をさらに補強・展開するための調査を行う予定である。例えば、ラオス・オイ族の調査では、①2011年の第1次調査からの時間的変化を観察する、②水田区画単位でより詳細に米作り工程や米品種の変化を記録する、③隣接するラオ族(蒸したウルチ米が主食)との比較、④水田の水条件が異なる他のオイ族集落との比較、などの展開を計画している。 また、複製土鍋を用いた炊飯実験を金沢と山形で数回行う予定である。成果の公表は、次年度春の学会などで行う予定である。
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Research Products
(26 results)