2016 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス憲法の「現代化」と比較憲法モデル構築のための綜合的研究
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15H03292
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
柳井 健一 関西学院大学, 法学部, 教授 (30304471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉持 孝司 南山大学, 法務研究科, 教授 (00153370)
岩切 大地 立正大学, 法学部, 准教授 (00553091)
杉山 有沙 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助教 (00705642)
愛敬 浩二 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10293490)
松井 幸夫 関西学院大学, 司法研究科, 教授 (30135892)
大田 肇 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 教授 (30203798)
小松 浩 立命館大学, 法学部, 教授 (40234877)
江島 晶子 明治大学, 法務研究科, 専任教授 (40248985)
成澤 孝人 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (40390075)
佐藤 潤一 大阪産業大学, 教養部, 教授 (40411425)
植村 勝慶 國學院大學, 法学部, 教授 (60213394)
松原 幸恵 山口大学, 教育学部, 准教授 (80379916)
宮内 紀子 九州産業大学, 基礎教育センター, 講師 (70755800)
河合 正雄 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (90710202)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イギリス憲法 / 憲法改革 / Brexit / EU離脱 |
Outline of Annual Research Achievements |
第79回比較法学会総会(関西学院大学、2016年6月4日)において、ミニ・シンポジウム「イギリスにおける『憲法改革』の行方」と題する共同報告を行った。報告者と題目は以下の通りである。 ・企画の趣旨(倉持孝司)・イギリス憲法改革と地域的権限委譲‐スコットランド(倉持孝司)・イギリス憲法改革と議会制民主主義(小松浩)・イギリス憲法改革と議院内閣制の現在(成澤孝人)・イギリス憲法改革と司法部の位置づけ‐不適合宣言に関する判例法利を中心に(岩切大地)・イギリス憲法改革と憲法の成文化(柳井健一) 以上の学会報告については、『比較法研究』第78巻において公表済みである。本ミニ・シンポジウムでは、リアルタイムで進行するイギリス憲法の改革動向を、各研究分担者の分担テーマに即して実証的に検討・分析をしており、イギリスにおける憲法制度の概要を全体像、立法府、行政府そして司法部の各領域ごとにほぼ網羅的に取り扱うことで、本共同研究の方向性を示しえたものと理解している。 他方、本共同研究の企画・立案時において想定していなかった憲法的一大事が出来した。それは、Brexitについてのレファレンダムの結果、イギリスのEUからの離脱が決定されたことである。当該事態が本研究にとって有するインパクトの重大性に鑑み、まずはイギリス憲法にとってこのBrexitが持ちうる影響について考察するため、イギリスでの最新の議論状況を紹介するための作業を行った。KDユーイング著元山健・柳井健一共訳「Brexitの憲法理論」(法律時報89巻3号、2017年3月)の公表である。平成029年度は、Brexitが本共同研究に対してもたらしうる影響について考慮しながら、イギリスにおける憲法の「現代化」状況を総括することとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要でも簡単に述べたとおり、EU離脱の可否を問う国民投票の結果、大方の予想に反して離脱との結論(=Brexit)が決定されたことが重大な課題をもたらすことになった。 そもそもイギリス憲法の「現代化」との理論的把握を枠付けていた憲法状況の大部分はイギリスがEUに加盟をしていることを前提として成立していた。その意味で、EUを離脱すること自体がイギリス憲法がこの数十年間拠っていたところの憲法的パラダイムを全面的に見直すことにつながるものである。 とはいえ、どのような形での離脱が行われることになるのかは今後の両当事者(EUとイギリス)との交渉によって決せられるものであり、本共同研究としては交渉の推移を見守りつつ、個別の研究領域ごとにそのインパクトを分析するという受身の対応をせざるをえない。 いずれにせよ、ヨーロッパの統合の進展を所与の前提としてきた近時の比較憲法研究にとって当該事態は興味深い憲法的実践となることは間違いない。
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Strategy for Future Research Activity |
BrexitをめぐるEUとイギリスとの交渉過程を具に、リアルタイムに把握することに努める。人権保障制度および司法制度についてはヨーロッパ人権条約とヨーロッパ人権裁判所の取扱が重要な論点となることが当然に想定されるため、当該論点についての実証的把握と理論的分析を試みる。 また、地域的分権についても、スコットランドがEUに残留することを強く求めているため、イギリスからの離脱が再度重要な政治問題化することが当然に予想され、場合によってはレファレンダムが最後行われることさえも想定される。このことから、スコットランドの政治・社会状況の把握が何よりも強く求められる。 議会制度および内閣制度については、上記の各分野との比較ではBrexitの影響は相対的にみて少ないのではないかと考えられる。このため、当該研究テーマについては、現状についての理論的な分析を前提としながら、Brexitが提起しうる新たな憲法的論点を想定した分析を行うこととなる。
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Research Products
(13 results)