2018 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少時代の地域における自治体経営の在り方に関する実証的・理論的財政分析
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15H03361
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 伸郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯之上 英雄 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (10509590)
広田 啓朗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (10553141)
齊藤 仁 神戸国際大学, 経済学部, 講師 (50707255)
倉本 宜史 甲南大学, マネジメント創造学部, 准教授 (70550309)
宮錦 三樹 立教大学, 経営学部, 助教 (70733517)
足立 泰美 甲南大学, 経済学部, 准教授 (80734673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人口減少社会 / 自治体合併 / 教育財政 / 医療財政 / インフラストラクチャ― |
Outline of Annual Research Achievements |
全体会合を学会等の開催時に合わせて3回(6月、8月、10月)開き、研究の方向性を議論した。またユニット別の会合も随時実施し、研究を進めた。研究にあたり必要なデータを順調に揃えることができたが、引き続き省庁へのデータの問い合わせも行っている。加えて、分析に必要な統計ソフトを入手し、活用している。 そして研究代表者と分担者により、2018年度中には6本の学術論文の刊行と7回の学会報告、6回のセミナー報告が行われた。学会等での研究報告が論文執筆と繋がっており、着実に研究が進められている。特に、「市町村合併とコモン・プール問題」は学会賞(日本地方財政学会 第18回佐藤賞「論文の部」)を受賞という評価を得ている。また、各財政指標間の相互依存関係に焦点を当てた財政調整行動の検証や市町村合併時における共有財源問題について因果効果を分析した研究など、近年に確立した分析手法を用いての研究を行っている。なお、分析データの工夫として都道府県別の長期パネルデータを用いての動学分析や国内に適切なデータが存在しない場合は他国の自治体データを用いた分析も行っており、国際研究雑誌への投稿に向けて作業している。 この他、国内現地調査として人口減少が進む中、日本海側唯一の政令市であり、これまで積極的に市町村合併を行ってきた新潟県・新潟市に伺い、長期的なまちづくりの視点からの管理・運営に関する行政への聞き取り調査や民間事業者への観光産業振興の在り方に関する質疑応答を行った。特にまちづくりは近年の居住人口の減少や中心市街地の空洞化のもたらす財政への影響や、そもそもの人口減少の原因に関する話を伺うことができた。これらは、実証分析の結果を解釈する際に用いられている。また、新潟市役所にて、新潟在住の大学の研究者を交えての研究セミナーを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度から2018年度までは、研究代表者と分担者により、まずはデータによる実証分析を行うに際して必要なデータについての整理を行った。その際、書籍やウェブサイトでの公表をされておらず、簡単に入手できないデータについては各自治体や研究機関、総務省などへの情報公開請求や問い合わせを行い、入手してきた。また、分析に必要な統計ソフトウェアを研究計画に沿う形で購入できた。 また、国内外での現地調査(人口減少に向けた取り組みの把握)については、国の地方事務所や地方自治体等の協力のもと、順調に行えた。これは分析結果の解釈や更なるデータの必要性、分析手法の改善等のヒントになっており、常に最新の情報を把握しておく必要があるため、2019年度も実施する予定である。 なお、データやハード・ソフトウェアの入手が順調であることから、各個別研究の学会やセミナーでの報告、学術雑誌への投稿や掲載はおおむね順調に行われていると言える。「社会資本整備総合交付金が地方自治体の社会資本整備に与える影響」をはじめ、幾つかの研究は学術雑誌へ掲載された。このほか、「地域における公教育投資と高齢化:性質別学校教育費の分析」などはこれまでの研究を順調に拡張しており、現在、ディスカッションペーパーとしての公表と査読誌への投稿をしている。「水道事業における費用・料金決定に関する実証分析」に関しては、昨年度中の学会報告が出来ていないが、学会誌等での公表に向けて2019年度中の学会での報告準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は最終年度のため研究全体のまとめを行う。2018年度に確認した方向性に基づき、追加研究の必要性を研究代表者・分担者間で相互理解できており、全体会合(3回程度開催する予定)ではまとめと個別分析の確認を行う。いくつかの既に国内外の学会やセミナーで報告した研究については、更なる分析結果を基に学術雑誌に投稿する。なお、「地方公共団体の財政規制に関する分析」は聞き取り調査を踏まえ問題認識を「会計調整」から「財政規制」に変更したが、分析は順調に進んでいるため、今年度中の学術雑誌への掲載を目指し、改訂している。また、研究の改訂に際して必要な追加データに関しては、聞き取り調査や情公開請求により入手する。特に水道事業や汚職等のデータの再確認と改訂が必要な研究は、2019年度中の研究雑誌への投稿を予定している。「地方財政健全化法施行時における地方自治体の財政調整行動の研究」については既に2本の論文を執筆し、査読付き雑誌に投稿中であるが、改訂も進める。「市町村合併時における共有財源問題の研究」も論文の執筆を進めており、今年度は各公共サービスの費用項目に着目した追加分析を予定している。また、海外の研究者との意見交換を目的に、オーストラリアにて開催予定のワークショップに参加する予定である。"The effects of population ageing on public education in Japan : A reinterpretation using micro data"や「合併による財政内部化の検証」も、引き続き改訂および投稿作業を行う。 また、国内外の学会での関連研究報告の確認や地方自治体での実際の人口減少化社会での財政運営の把握は、データを用いた実証研究を行う上で、新たな分析手法の知見を得るためや、分析結果の解釈を現実に即した形で行うために必要である。そのため、今年度も個別研究に関連する学会への参加や地方自治体での聞き取り調査を行う予定である。 これらの研究は計画通りに進んでいる。
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Remarks |
日本地方財政学会 第18回佐藤賞「論文の部」を受賞。広田啓朗・湯之上英雄 受賞論文:”Evaluation of the fiscal effect on municipal mergers:Quasi-experimental evidence from Japanese municipal data”Regional Science and Urban Economics, Volume 66
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Research Products
(19 results)