2015 Fiscal Year Annual Research Report
企業ソーシャル・キャピタルに注目した企業統治研究の新展開
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15H03387
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
金光 淳 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (60414075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 陽二 日本大学, 法学部, 教授 (30366520)
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (60454469)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 企業統治 / コーポレート・レピュテーション / 統計分析 / 取締役ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
東芝の不正会計や三菱自動車の欠陥隠蔽など、企業不祥事は後を絶たない。この研究は、(1)取締役会の人的構成、生え抜き度(2)役員派遣 をリンクとする企業間のネットワーク構造(3)ウェブ調査によるコーポレート・レピュテーション(4)企業業績のデータ、に依拠しつつコーポレイト・ガバナンス・コード導入期における、2010年から2015年の日本の企業統治構造の変化を分析し、企業のソーシャル・キャピタルがどのように企業の業績、良い企業ガバナンスに結びついているかを 計量的に明らかにすることである。 仮説1 (結束的ソーシャル・キャピタル仮説)役員間の属性的同質性が高く、役員生え抜き度が高く、凝集的な企業間結合をしている企業、つまり結束的ソーシャル・キャピタルで特徴付けられる企業ほど、コーポレイト・レピュテーション、企業不祥事の頻度、企業業績は中程度である。 仮説2 (開放的ソーシャル・キャピタル仮説)役員間の属性的同質性が低く、役員生え抜き度も低く、外に開かれた開放的な企業間結合をしている企業、つまり橋渡し的ソーシャル・キャピタルで特徴付けられる企業ほど、ほど、コーポレイト・レピュテーション、企業不祥事の頻度、企業業績は中程度である。 仮説3 結束的ソーシャル・キャピタルと橋渡し的ソーシャル・キャピタルの両方が欠如する企業、役員間の属性的同質性が高くも低くもなく、役員生え抜き度が高くも低くもなく、内向きでも外向きでもない企業は、コーポレイト・レピュテーションが低く、企業不祥事も多く、企業業績も低い。 仮説4 (企業ソーシャル・キャピタルの最適ミックス仮説) 凝集的ソーシャル・キャピタルと開放的ソーシャル・キャピタルの最適にミックスされた企業は、コーポレイト・レピュテーションが高く、企業不祥事が少なく、企業業績が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子データの購入に替えて紙ベースのデータベースの購入に切り替え、新たにアルバイトを雇い集計させているために生え抜き度の測定に関して予定よりも時間を要している。また同様の理由で役員ネットワークデータの構築にも予定よりも時間を要していることが大きな理由としてあげられる。 またコーポレート・レピュテーションの理論的な整理が遅れ、研究全体の方針が定まらなかった点も影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
コーポレート・レピュテーションの理論的な整理を行い、研究の方針を決定した上で、28年度は27年度の作業の遅れを取り戻し、以下の作業を行う。(1)研究協力者の北見が中心となり、コーポレイト・レピュテーションの指標化の理論化を行う。その後ウェブ調査会社に業務委託して企業経営層をサンプル抽出してもらい、ウェブ調査により各上場企業の2015~16時点の年コーポレイト・レピュテーションを測定する。(2)『役員データ』によって得られた役員派遣リンク・データでモデル化された企業間のネットワーク(2010年、2015年)の構造的分析を行い、ネットワーク変数を作成する(金光)、(3)企業統治の専門家である斎藤が中心となって企業統治の2010年から2015年の変化を分析し、良い企業ガバナンスの条件とは何かを理論化する。(4)日経NEEDS-Cgesから企業の業績変数を抽出し、加工する。
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