2015 Fiscal Year Annual Research Report
地方自治体における新公会計システムの導入と運用に関する理論的・実証研究
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15H03400
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山浦 久司 明治大学, 専門職大学院会計専門職研究科, 教授 (70104685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 恵子 日本大学, 経済学部, 教授 (70343647)
石津 寿惠 明治大学, 大学院経営学研究科, 教授 (70337004)
大塚 成男 千葉大学, 大学院人文社会科学研究科, 教授 (20213770)
尾上 選哉 大原大学院大学, 会計研究科, 准教授 (00341199)
兼村 高文 明治大学, 専門職大学院ガバナンス研究科, 教授 (70204584)
齋藤 真哉 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 教授 (40215538)
佐藤 綾子 富山国際大学, 現代社会学部, 准教授 (20746614)
古庄 修 日本大学, 経済学部, 教授 (90219113)
松尾 貴巳 神戸大学, 大学院経営学研究科, 教授 (80316017)
吉本 理沙 愛知大学, 経営学部, 准教授 (40550661)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地方自治体の公会計 / 複式簿記 / 発生主義会計 / 国際公会計基準 / 地方自治体の予算制度 / 説明責任(アカウンタビリティ) / 地方自治体の監査制度 / 発生主義予算 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方自治体(以下、自治体)の財政状況が厳しさを増す中で、行財政運営の効率化・適正化を高め、また住民や議会等のステークホルダーへの説明責任を果たすために財政の一層の透明性を図ることが喫緊の課題として認識されている。かかる認識のもと、総務省は 数次にわたって自治体の公会計制度の改革を進めてきたが、その改革は、地方公会計の標準化を図る一方で、現行の予算・決算制度を補完し、あわせて地方行財政運営の合理化に資するシステムとして、複式簿記化と発生主義化を進める形で行なわれてきた。そして、これらの改革は最終段階にあるといえる。 本研究は、このような新しい地方公会計に焦点を当て、その理論的構造と目的適合性、自治体現場での適用状況と実務的諸問題、自治体経営への新会計モデルの活用実態、さらに新しい地方公会計を導入した後に課題となる地方公監査のあり方等を研究することを目的とする。具体的には、(1)基礎理論、(2)新公会計システムと予算運用との関係に関する理論と実務、(3)国際的公会計との比較、(4)新公会計システム導入の実証研究、(5)新公会計システムの自治体現場での利活用、(6)新しい監査制度、という6つの分野に分けて研究を続けてきている。これまで10回の研究会を開催し、調査研究のための海外と国内への各数次にわたっての出張、各出張に関しての調査報告書、学会報告、著書の発刊、論文等の執筆を行なってきたが、とくに、(1)と(3)につては、それぞれについて大きな成果を上げてきたと考える。また、(2)(4)(5)(6)については、今年度(平成28年度)に実施する自治体アンケート調査と訪問調査によって明らかになる実態を踏まえて、より踏み込んだ研究を目指すことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に則して「研究実績の概要」に記した(1)から(6)までの研究分野のうち、(1)と(3)については、10回にわたる研究会でも特に力点を置いて研究してきた。その中で、自治体の公会計改革、すなわち複式簿記・発生主義化の主眼が、住民・議会を中心とした自治体ステークホルダーへの説明責任の推進と自治体行財政の合理化・効率化を目指したものであることを明確にした。また、この点は、海外国家政府レベルでの公会計改革の先行事例(先進国としてEU、ならびに英国、開発途上国としてのマレーシア・フィリッピン)を現地調査する中でも明らかにされ、成果も出ている。さらに、(2)、(4)、(5)、(6)の各分野については、研究メンバー間で担当を割り振り、いくつかの自治体を現地訪問して調査したり、先行研究者を招いて講演してもらうなどして知見を高めるようにし、また一定の成果も出ている。これらの分野の研究は、今年度(平成28年度)に実施するべく準備している自治体へのアンケート調査によって、さらに実態を踏まえたものとなるはずである。 以上、平成27年度の研究は、当初の研究計画に沿ったものであり、おおむね順調に進展してきたと言えよう。 なお、今後の研究の鍵となる、自治体を対象とするアンケート調査を今年度とした理由は、総務省の自治体公会計制度改革の工程計画にある。すなわち、平成30年度を改革の完了時期としているからであり、平成27年度の時点で各自治体は、新公会計システムの導入に向けて、制度改正や導入作業にあたっている最中であるために、アンケート調査をしても効率的な回答を得られないと判断したためである。また、アンケート質問事項の編集には、ある程度の現状認識が必要であり、平成27年度の研究には、そのためのパイロット調査も含んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、「研究実績の概要」に記した(1)から(6)までの研究分野のうち、(2)、(4)、(5)、(6)の各分野の研究に主眼が移る。 まず、自治体を対象とするアンケート調査を今年度に実施するために、平成27年度中に準備を重ねてきているが、この調査を成功裏に終わらせ、また今後の研究の完成に役立てるには、調査質問事項の編集作業が極めて重要となる。そのために、この編集作業のためのワーキンググループを平成27年度中に立ち上げて、数次の会合を重ね、これを全メンバーが揃う研究会で何度か討論し、平成28年度5月現在、調査事項の編集は、ほぼ完成の段階にある。編集作業の完了後、直ちにアンケート調査票の送付になるが、送付は6月を予定し、回収を7月下旬と見込んでいる。また、回収した調査票の解析は外部業者に依頼し、その結果に関する所見を平成28年度中にまとめる予定である。なお、以上の調査研究にあてる経費については、本年度科学研究費補助金から重点的に割り当て、支障がないように措置している。 これらの調査は、上記、(2)、(4)、(5)、(6)の研究の目的それ自体であったり、基礎資料を提供するものであったりするのであるが、本年度の研究活動の主力が傾注される予定となっている。 また、あわせて、回収した回答から、自治体の公会計システム導入とその利活用に関する特筆する自治体の事例があれば、当該自治体への訪問調査を行い、事例集をデータベース化していくことにしている。さらに、公会計制度改革の流れは、わが国のみならず、世界的なものであり、引き続き、海外の動向にも注意を払う必要があるので、そのような調査研究や外国での学会やシンポジウムへの出席も計画している。
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Research Products
(22 results)