2016 Fiscal Year Annual Research Report
包括的地域再生に向けた順応的ガバナンスの社会的評価モデルの開発
Project/Area Number |
15H03425
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
菊地 直樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (60326296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淺野 敏久 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00284125)
豊田 光世 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (00569650)
敷田 麻実 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40308581)
清水 万由子 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (60558154)
田代 優秋 和歌山大学, COC+推進室, 特任助教 (90467829)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 包括的地域再生 / 順応的ガバナンス / 自然再生 / 社会的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)以下の事例研究を進めた。1)自然再生の活動プロセスの「社会的評価ツール」を用いて、島根県・鳥取県にまたがる中海の自然再生に取り組む認定NPO自然再生センターのメンバーとワークショップを実施し、活動プロセスの社会的評価を試みた。現場に結果をフィードバックし、ツールとしての妥当性と課題を検証した。さらに自然再生に関わる関係者と協働で、自然再生の社会的評価チェックシートを作成し、それを用いたワークショップを実施した。その結果、自然再生の社会的プロセスが関係者の間で可視化されるとともに、コミュニケーションを促進するツールとしての可能性を見出すことができた。2)広島県東広島市豊栄町で、社会的評価ツールを用いたワークショップを開催し、オオサンショウウオの保全とその生息環境の再生の活動プロセスの社会的評価を行った。また、その成果を関係者にフィードバックし、ツールとしての妥当性を検証するとともに、課題も議論した。3)包括的地域再生としてのジオパークに注目し、自然再生との比較調査を進めた。ジオパーク専門員に焦点を当て、地域に暮らす専門家が包括的地域再生において果たす多面的な役割に関するアンケートを実施した。4)タンチョウを軸にした包括的地域再生を目指す北海道鶴居村において、農家へのアンケートを実施し、農業と自然再生の関係性を検討し、包括的地域再生の現状と今後のありうべき方向性を検討した。 (2)総合地球環境学研究所(京都市)で研究会を開催し、(1)で実施した調査の結果を分析し、本科研で開発しているツールは自然再生の活動プロセスを社会的に評価するものとしては、概ね妥当であると判断した。課題としては、活動プロセスを社会的に評価するだけではなく、未来に向けたありうべき姿を共有するツールの開発が必要であることが共有された。 (3)自然再生の社会的評価に関する論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査は、おおむね順調に進展している。自然再生の社会的評価ツールを用いたワークショップを、島根・鳥取両県にまたがる中海の自然再生、広島県東広島市豊栄町をフィールドに、それぞれ複数回開催し、ツールの検証と課題の洗い出し作業を行うことができた。常に現場の関係者へのフィードバックを行うことにより、現場での有用性を確認しながら開発を進めていくことができている。 研究成果の発表は、中海の自然再生の活動プロセスの社会的評価ツールに関する原稿の公表、豊栄町でのワークショップの結果の学会報告を行うなど順調に進んでいる。さらにジオパーク専門員のアンケートの分析を進め、専門員の属性と包括的地域再生に果たす多面的な役割の解明を目指した論文の執筆を進めている。北海道鶴居村の農家アンケートについても、データの分析を進め、論文執筆作業を進めているところである。成果発信はおおむね順調に進展している。 以上のように、現場の関係者と協働的に研究を進めており、自然再生の当事者が使いこなせる社会的評価モデルにむけた方法論の確立を目指しているところである。 ただ、研究者と多様な関係者による研究会は開催できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)事例研究の推進:兵庫県豊岡市、鳥取県・島根県にまたがる中海、広島県東広島市豊栄町、新潟県佐渡市を予定している。事例研究は、引き続き社会的評価ツールを用いたワークショップを中心に行い、検証と課題の抽出、評価をさらに進めていく。本研究の特徴の一つは、絶えず関係者に結果をフィードバックしていくことにより、研究と実践の融合を図っていくことにある。ワークショップで出てきた新しい視点、問題点などを順応的に取り入れていく。事例研究は現場への還元と一体的に進めていく。 (2)研究会の開催:平成29年度は研究会を2回開催する。研究会では、以下の議論を進めていく。 a)(1)で行う社会的評価モデルを用いたワークショップの結果を整理しデータ化するとともに、社会的評価ツールの検証と評価を試みる。b)以上の分析から、各事例の共通性と異質性を明らかにし、社会的評価ツールの開発を進める。c)自然再生の社会的評価ツールをさらに発展させ、地域のヴィジョニングツールの開発を進めていく。これらの研究を進めることにより、包括的地域再生に向けた順応的ガバナンスの社会的評価モデルの開発を試みる。さらに、NPO関係者、行政担当者、自然保護関係者といったゲストスピーカーによる報告も実施し、社会的評価モデルの検証を実施する。そして、本研究の総括を行う。 (3)本研究の成果発表に向けて、論文・原稿の執筆を進める。
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Research Products
(30 results)