2016 Fiscal Year Annual Research Report
社会の制約と個人の制約-対人行動戦略に対する関係流動性と市場価値の交互作用効果
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15H03445
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
結城 雅樹 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50301859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会生態学 / 適応 / 関係流動性 / 対人行動 / 個人差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人間の対人行動戦略の社会間分散と社会内分散を統一的に説明する理論仮説の検討である。注目する社会生態学的変数は関係流動性、個人差変数は配偶価値である。今年度は、計4セットの研究を実施した。 研究1:昨年度までに収集した世界規模の調査データの綿密な分析を行った。世界最大のSNSであるFacebookの39ヵ国のユーザー約1万7千人分のデータを分析するとともに、生態学的・人口統計学的データとの関連を検討した。その結果、1)関係流動性尺度の因子構造の高い汎文化共通性、2)関係流動性の国別得点と当該国の人々の対人行動戦略や心理傾向との関連、そして3)当該社会環境の特性等との関連が、いずれも予測と一貫する方向で見られた。現在、以上を報告する雑誌投稿論文を執筆している。 研究2:配偶者市場におけるパートナー獲得方略と保持方略に対する関係流動性と配偶価値の影響を調べるために社会比較調査研究を行った。その結果、獲得戦略(研究2-1)に関しては、一部を除いて予想外の結果が得られた。この原因は獲得方略を測定するための測度の問題による可能性があるため、次年度以降に改善した測度を用いた追試を行う。一方の保持方略については(研究2-2)、高流動性社会においては、配偶価値が高い女性ほど積極的なパートナー保持を受けているとの予測通りの結果が得られた。 研究3:新千歳空港において、国内外からの旅行者を対象とした土産品購買行動の調査を行った。予測通り、高関係流動性の欧米諸国の旅行者と低関係流動性のアジア諸国の旅行者とは、土産品を買う際に考慮する方略が異なっていた。 研究4:大学生を対象とした多国間比較研究の準備を開始した。プロの翻訳家を雇用し、英語版のオリジナル質問紙を様々な言語に翻訳する作業を行った。現在、翻訳内容の確認を進めており、調査実施は来年度以降となる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・研究1は、論文執筆に至るまでに予想外の時間がかかった。だが、じっくりと分析に時間をかけたおかげで、潜在的なインパクトが極めて高い知見を得ることが出来た。結果的には大成功であったと言える。 ・研究1に思いのほか時間がかかった結果、本年度開始予定であった大学生を対象とした多国間調査(研究4)の開始が遅くなった。 ・研究2-1では予想外の結果が見られたが、測定尺度の改善につながる発見があった。 ・研究3は、当グループでは初めてのフィールド調査であったが、重要な知見が得られるとともに、街頭における一般市民からの適切かつ効率的なアンケート収集法などについて学ぶことが多かった。
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Strategy for Future Research Activity |
・来年度は、1)大学生を対象とした多国間比較調査、2)文化人類学データベースHRAFを用いた多民族間比較、3) パートナー獲得方略の検討(方法論の改善)、4) パートナー保持方略の検討(追試)、等を行っていく。 ・多国間比較調査の質問紙完成、および各国におけるデータ収集までにはかなりの時間がかかることが予期される。全てのデータ収集の完了が再来年度にかかることも念頭に入れつつ、全てのプロセスをできるだけ効率的に進めることを図りたい。
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[Presentation] Relational mobility and interpersonal relationships: A 39 nation cross-societal study.2016
Author(s)
Yuki, M., Thomson, R., Kito, M., Schug, J., Kavanagh, C.
Organizer
23rd International Congress of the International Association for Cross Cultural Psychology
Place of Presentation
ウィンクあいち, Nagoya, Japan
Year and Date
2016-07-30 – 2016-08-03
Int'l Joint Research
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