2017 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the factors that promote people to change the current social system: How can we break the paradoxical relationship between disdentification and bolstering of status system?
Project/Area Number |
15H03448
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
池上 知子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (90191866)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会系心理学 / システム変革動機 / 社会的不平等 / 格差是正 / 社会的アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、不平等な構造を持つ社会に生きる人びとのシステム変革動機の発動過程を規定する要因を解明することにある。 平成29年度は、平成28年度に日本と米国で社会人を対象に実施したWEB調査をドイツと韓国においても実施し知見の通文化性を検討した。結果を通覧すると、総じて、社会的不平等が低減する方向へ変わりつつあるという現状認識を持つ者ほど、社会変革の実行可能性を強く信じ、社会システム変革に向けて動機付けが高まりやすく、弱者救済につながる社会政策を支持する度合いが強まるという一連の心的過程を確認することができた。ただし、韓国の場合は、変革の可能性への自信が変革動機に必ずしも結びついていなかった。また、総じてモデルの適合度が芳しくなく、想定外の経路を含んだモデルの検討の必要性が示唆された。 さらに、平成29年度は、集団脱同一視の潜在指標を開発し、顕在指標にあたる質問紙により測定された集団脱同一視との関係を検討した。集団脱同一視は、認知的側面である所属集団と自己の無関係性と感情的側面である所属集団への不満の2側面から構成されているが、本研究では、それぞれを顕在・潜在の両レベルで測定し対応関係を検討した。すると、両側面とも顕在指標と潜在指標の間に相関が認められたが、その程度は弱く、両レベルは比較的独立性の高い異なる心的過程を反映していることが示された。さらに、認知的側面では潜在と顕在の間に正の相関が認められたのに対し、感情的側面では潜在と顕在の間に負の相関がみられた。これより、認知的側面では、潜在と顕在が相反することはないが、感情的側面では、両者が拮抗し潜在レベルの負の感情を顕在レベルで隠蔽しようとする心理機制の存在が示唆された。 今後は、集団脱同一視が、潜在、顕在の両ベルにおいて上述のシステム変革動機の発動過程にどのような影響を及ぼしているかを実験的手法により検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会人を対象としたWEB調査に関しては、当初、日本国内のみの調査を想定していたが、米国、ドイツ、韓国でも調査を実施することができ、通文化性の検討を国際レベルで展開していく見通しが立った。ただ、シナリオを用いた質問紙実験が大学生を対象としたものに止まっており、社会人を対象に実施するWEB実験が先送りにされている。一方で、集団脱同一視の潜在指標の開発は本年度に終えることができ、仮説検証のための本実験も一部実施できた。以上を総合すると、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査を当初より数多く行っているため、詳細な分析が追いついていない。2018年度は、これらの分析を精力的に行う予定である。 また、国内における社会人を対象とするWEB実験を行い、大学生を対象に実施したシナリオ実験で得られた知見の一般性の検討を行う予定である。 また、システム変革動機の発動過程に及ぼす集団脱同一視の影響について、顕在指標と潜在指標を用い、そのメカニズムの詳細を実験的に検討する予定である。
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Research Products
(8 results)