2016 Fiscal Year Annual Research Report
入校児童の変化からみた児童自立支援施設の歴史像―北海道家庭学校を中心に―
Project/Area Number |
15H03467
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
二井 仁美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50221974)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 剛志 静岡大学, 教育学部, 教授 (10340043)
家村 昭矩 名寄市立大学短期大学部, その他部局等, 特任教授 (10412876)
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60322210)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 家庭学校 / 児童自立支援施設 / 少年教護院 / 教護院 / 感化院 / 留岡幸助 / 留岡清男 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、感化院・少年教護院・教護院を前身とする児童自立支援施設の通史的把握をめざす基礎研究である。北海道家庭学校を事例として、百年の歴史における生徒の様態の推移とそれに対する教育の変化の様相の解明により、児童自立支援施設の歴史像を描出し、当該施設の今後のあり方を考える一助とすることを目的としている。「どのような子どもが入校し、どのような教育を経て卒業し、卒業後、どのように生きたか」について、同時代の他の感化院の様態に目を配りながら、家庭学校における在籍者の歴史的推移とそこでの教育を把握することをめざすために、以下のことを行った。 ①北海道家庭学校教務関係記録データベース化のためのフォームをファイルメーカープロにより作成し、児童福祉法施行から2014年度末終結までのデータは、約1000件、全体の2分の1に相当するデータの入力を終了した。②1945年から2000年までの北海道家庭学校事業計画および事業報告書のスキャニングを行い、「北海道家庭学校百年史編纂用復刻資料」として編綴製本し、分析資料の基礎データを作成した。③家庭学校社名淵分校において作成された、少年教護法施行期における生徒自治会一群会機関紙『一群』および一群会関係資料をデジタルカメラにより撮影し、影印本史料集を作成した。④北海道家庭学校所蔵映像資料の一部をデジタル化した。⑤国立武蔵野学院図書資料室、栃木県立那須学園、富山学園、愛媛県立えひめ学園において、感化院、少年教護院、教護院、児童自立支援施設関係資料調査を行うと共に青森学園元園長への聞き取り調査を実施した。⑥国内外の学会および研究会で研究の中間報告を行うと共に、学会誌等にその成果を論文として発表した。⑦研究成果出版のための検討会を行い目次構成と執筆要綱を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道家庭学校に「どのような子どもが入校し、どのような生活を経て、卒業後いかに生きたのか」を歴史的に検討するために、①北海道家庭学校所蔵資料の教務関係情報入力によるデータベース化を行った。研究期間内に分析を行うために必要な記録のデータベース化を試み、児童福祉法施行期については全体の約1/2の入力が終了した。『ひとむれ』掲載記事により、確認が困難でった予後情報についても一定数の手がかりも得た。ただし、データベース入力は未完成である。②北海道家庭学校所蔵資料中、少年教護法施行期の生徒自治会一群会に関する影印本史料集を作成した。これにより少年教護法施行期における家庭学校社名淵分校の生活と教育を分析する手がかりを得た。③1945年から2000年までの北海道家庭学校事業計画、事業報告書をスキャナーによる電子化作業により入手した。これにより、戦後における家庭学校社名淵分校および北海道家庭学校の経営と主要な教育と生活の状況を把握する基礎データを得た。④留岡幸助校長時代の未整理書簡、留岡清男校長時代および谷昌恒校長時代の未整理文書の目録作成を計画していたが膨大な量があり未完成である。今後も継続の必要がある。⑤分析に必要な北海道家庭学校所蔵映像資料のデジタル化は予算の関係上、一部に留まった。⑥北海道家庭学校元職員への聞きとり調査を当初計画していたが、高齢や病気等のため調査が困難な状態が改善されず、当初の予定ほど聞き取り調査を実施することができなかった。⑦家庭学校の状態を相対化すると共に家庭学校外にある感化院、少年教護院関係資料を収集するために、武蔵野学院やえひめ学園での調査を実施したが、他の施設で未見の資料を調査する必要がある。⑧研究成果の中間報告を行うと共に、研究成果出版のための準備が進捗している。以上、次年度に継続課題を残しながらもおおむね順調に研究は進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、北海道家庭学校百年の歴史において、「どのような子どもがいかに入校し、どのような生活を経て、卒業後いかに生きたのか」を検討する。このため、およその家庭学校社名淵分校および北海道家庭学校史を捉える時期区分として、①感化法制期である留岡幸助校長時代、②少年教護法制期の牧野虎次および今井新太郎校長時代、戦後の児童福祉法制期は教護院の③留岡清男校長時代、④谷昌恒校長時代、⑤児童自立支援施設時代に分ける。今年度は、第一に、①および②の時期については、『一群』や生徒の日記、教職員の日記、家庭学校社名淵分校の記録、書簡類等、北海道家庭学校所蔵資料を用いて分析を行う。その際、未完成の留岡幸助校長時代の未整理書簡の目録作成を進める。第二に、③~⑤の時代については、1945年から2000年までの北海道家庭学校事業計画、事業報告書を分析し、戦後における家庭学校社名淵分校および北海道家庭学校の経営と主要な教育と生活の状況を描出する。あわせて、留岡清男校長時代および谷昌恒校長時代の未整理文書の目録作成を進め、病気等のため調査が困難で実施できなかった北海道家庭学校旧職員に聞き取り調査を実施する。第三に、児童福祉法施行から2014年度末までの時期の北海道家庭学校所蔵教務関係記録について、入校の法的根拠、入校時年齢、初発非行年齢等の入校時関連情報、在籍期間、卒業時年齢、進路先等、卒業時関連情報等を分析する。なお、卒業後の状況については、『ひとむれ』記載記事のテキストマイニングを試みる。第四に、家庭学校の状態を相対化するためにに、武蔵野学院や青森学園、萩山実務学校等、未見の資料を調査する。第五に、それぞれの研究分担者、研究協力者、研究代表と共に研究会および学会等の機会を設け、研究成果の中間報告を行うと共に、研究成果出版のための準備を進める。なお如上の作業に必要なデータ入力、資料目録作成を行う。
|
Research Products
(11 results)