2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03553
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小椎八重 航 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (20273253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 道康 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (30396519)
筒井 健二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所放射光科学研究センター, 上席研究員 (80291011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁気skyrmion / antiskyrmion |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の研究対象となる磁気テクスチャは,格子定数よりも十分に大きな長さスケールで特徴づけられる空間構造をもつ.翻せば,そのダイナミクスは数千~数万あるいはそれを超える多くの磁気モーメントが織りなす協力現象に他ならない.この多自由度運動方程式の取り扱いのため,我々は,数値的手法を開発するとともに並列計算機を導入・駆使することにより,研究を進めた.そして,計画初年度となる今年度ですでに,多くの研究成果を挙げてきた.その一例であるantiskyrmionの理論を,ここで掘り下げてみよう.磁気skyrmionの位相幾何学的な特徴は,いわゆるskyrmion数により同定される.これは正にも負にもなる.我々は,このskyrmion数の符号に依存する磁気テクスチャの駆動方法を確立した.これにより,skyrmion数は,あたかもトポロジカル粒子の価数,すなわちトポロジー価としての役割を持つこととなる.我々は,互いに符号を異にするskyrmion,antiskyrmionのダイナミクスを調べ,磁石の中で粒子・反粒子の生成,消滅,衝突の物理を展開することに成功した. 磁気テクスチャの外場(熱,磁場,電場,電流)応答の理論的研究にも進展がみられた.現在多くのストレージで利用されているフラッシュメモリーのアーキテクチャを参考にして,磁気スキルミオンを用いたストレージデバイスの研究を進めた.また,様々のスピン系や,遷移金属酸化物の電子状態の理論的研究も行われた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画であった,理論的手法の確立,そしてこれを用いた磁気位相構造の時間発展の物理の研究が十分に進められた.とりわけ研究計画のうち,数値的手法,すなわち多自由度古典スピン系の実時間発展を取り扱う計算機プログラムの開発が,前倒しする形で進展した.この計算機プログラムはまた,今年度導入された並列計算機に最適化され,様々の数値的研究を加速することが可能となった.これによる結果は論文として出版され,また国際会議での招待講演としても研究成果を世界に向けて発信された.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度導入した計算機資源は,十分にその威力を発揮し,本計画を進めていく上でとても重要な武器となった.これに特化した数値的手法も十分に確立されてきた.これにより,当初の研究計画をより発展させる形で,磁気テクスチャがともなう多自由度古典スピン系が織り成すベリー位相の空間構造の実時間発展の研究を推し進めていく.これは磁壁の運動に目を向けると,「ひも」の実時間ダイナミクスに,そしてskyrmionに目を向けると,様々のトポロジー価を担う粒子の物理学に繋がっていく.今年度成功裏に終わったskyrmionの衝突の理論の構築は,新たな視点,skyrmionの反応の物理の着想をもたらした.単連結の磁石だけでなく,磁気的相互作用により結びつく複数の磁石が構成するスピン空間における実時間ダイナミクスは,トポロジカルな粒子そして「ひも」の反応の様子を詳らかにする.これら基礎物理学的観点からの成果はまた,応用面での新たなデバイスの理論構築の基礎を与える.基礎と応用を両輪とした形で,本計画は進められる.
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Research Products
(27 results)