2015 Fiscal Year Annual Research Report
超遠方クェーサーを用いた初代ブラックホール形成と宇宙再電離の解明
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15H03645
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
柏川 伸成 国立天文台, TMT推進室, 准教授 (00290883)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 初期宇宙 / ブラックホール / 宇宙再電離 / 銀河形成 / 銀河共進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、すばる望遠鏡の大集光力と広視野撮像機能を駆使した系統的かつ独創的な手法によって、I)赤方偏移7を超える超遠方クェーサーを多数発見し、またII)赤方偏移6付近の遠方クェーサーの特に暗い種族を検出すること、を目的とする。これらはいずれもこれまで技術的な問題によってその達成が不可能であった。これにより、現代天文学の大問題となっている、1)初代ブラックホールの形成過程、とII)宇宙再電離の過程、についての新たな知見の獲得をめざす。これら初期宇宙に関する2つの未解決過程について初めて実効的な観測のメスを入れ、飛躍的な理解を得ることが、本研究の2本の大きな柱である。海外の同様な観測計画に対して既にリードしているこれまでの研究をさらに発展させ、周辺分野に波及するような初期宇宙の研究におけるブレークスルーを狙う。 本年度は撮像観測から効率的にクェーサー候補を選択するためのプロセスを確立し、メンバーに公開され始めたHSCデータに適用した。その結果、15個の遠方クェーサーならびに遠方銀河を発見することができた。このプロセス、取得されたデータの解析、近赤外撮像データとの照合、分光追観測について成果論文にまとめ、現在査読中である。現在は、検出されたクェーサーについて光度関数を決定するために、そのサンプルの完全性について調査している。また、近赤外観測および電波観測を行うことにより、遠方クェーサーについて、ブラックホール質量、ガス質量、宇宙再電離についての知見が得られるため、観測プロポーザルを複数提出した。 一方、これに関わる原始銀河団探査については、同じくHSCサーベイデータから効率よく原始銀河団候補を検出する手法を確立し、初期データについて応用したところ131個の原始銀河団候補を検出した。銀河団銀河の特徴、クェーサーとの空間的相関などについて現在調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSCサーベイ観測は当初予定に比べて若干の遅れがあるものの概ね順調に進行している。画像処理やカタログ生産の面でまだまだ技術的に不備な点が多く、現在、多くの研究者が協力してこのプロセス確立に注力しているが、本グループも遠方クェーサー、遠方銀河の検出する過程で発見されたデータ処理や側光方法の不備についての問題について指摘し、グループ内で問題を共有し、その解決に貢献した。新しいクェーサー選択手法の開発については、独立な3つのサンプルにおいてその有効性を実証しており、分光追観測では芳しい結果は得られなかったが、まだ細かな課題を抱えているので今後解決していきたい。初期大規模構造については、理論モデルとの定量的な比較方法を提案し、われわれの発見した初期銀河団が現在どれくらいの質量をもつ銀河団に成長しているか、どれくらいの宇宙空間範囲にある初期銀河が将来銀河団銀河に成長するかについての知見を得た。この方法は今後の研究に大いに活かされることが期待される。これらの成果については内外の学会で成果報告を行い、いづれも高い評価を受けた。今後論文にまとめる予定である。さらなる成果を挙げるために、これまでの観測やデータ解析の手法に改良を加えている。またこの問題と関わるダークマターとバリオンの関係について探る研究について予備研究の結果を成果論文に仕上げた。 また新たに、QSO吸収線系から探る原始銀河団候補探査、QSO周囲環境における銀河形成に関わる研究など、本研究に密接に関連しながら当初は予定していなかった研究の方向性も萌芽しており、海外研究者との共同研究が開始され、本観測に向けて着実に準備を進めている。また、さらに遠方のクェーサーを検出するための新しい観測装置の提案を着想し、多くの問題点を洗い出すとともに順次その問題点を解決するために、将来的な大型科研費の獲得に向けて活動を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
本グループの手中にはまだ多くの遠方クェーサー候補天体が残されており、この追観測を精力的かつ系統的に行い、サンプルを増やしていく。サンプル数を増やすことにより赤方偏移6の光度関数を精度よく決定し成果論文に仕上げたい。電波観測や近赤外観測などの追観測についても観測提案中であり、これらから再電離や初期ブラックホールに関する新たな知見を得たい。特に再電離の過程を知る上で重要なクェーサースペクトルの減衰翼プロファイルや近接領域サイズの測定について、現データでどこまでできるか解析に着手した。一方で分光追観測で副次的に得られた遠方銀河のスペクトルについて新たな研究の方向性も探っている。 再電離のトポロジーに関わる初期大規模構造の研究については前年度までの成果について論文提出中であったが、査読者との長期間にわたるやり取りの結果、まもなく受理される見込みである。現在解析中のHSCデータにおける原始銀河団についても、クェーサーとの空間相関について面白い結果が出たので、この信頼性をさらに高め、来年度中には成果論文にまとめたい。できれば理論予測との比較を行いたいので適切な理論モデルを選定し、理論研究者の協力を仰ぎたい。遠方QSOの研究と並行して研究を進める上で、初期宇宙における環境と、再電離、そしてブラックホール、QSO活動性の発現、の間の相関について、さらにはブラックホールと銀河の共進化についての考察を進めたい。 同時にQSO吸収線系の研究という新たな方向性について海外研究者と共同研究を開始した。これについても観測提案中であり、今後観測時間が獲得できれば、銀河から検出される高密度領域とガスから検出されるそれとの違いを系統的に調査していきたい。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Physical Properties of Spectroscopically Confirmed Galaxies at z~6. III. Stellar Populations from SED Modeling with Secure Lyα Emission and Redshifts2016
Author(s)
Jiang, Linhua; Finlator, Kristian; Cohen, Seth H.; Egami, Eiichi; Windhorst, Rogier A.; Fan, Xiaohui; Dave, Romeel; Kashikawa, Nobunari; Mechtley, Matthew; Ouchi, Masami; Shimasaku, Kazuhiro; Clement, Benjamin
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 816
Pages: 16-33
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The Quasar-LBG Two-point Angular Cross-correlation Function at z~4 in the COSMOS Field2015
Author(s)
Ikeda, H.; Nagao, T.; Taniguchi, Y.; Matsuoka, K.; Kajisawa, M.; Akiyama, M.; Miyaji, T.; Kashikawa, N.; Morokuma, T.; Shioya, Y.; Enoki, M.; Capak, P.; Koekemoer, A. M.; Masters, D.; Salvato, M.; Sanders, D. B.; Schinnerer, E.; Scoville, N. Z.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 809
Pages: 138-151
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] TMT2015
Author(s)
柏川伸成
Organizer
天文・天体物理 夏の学校
Place of Presentation
ホテル圓山荘(長野県)
Year and Date
2015-07-27 – 2015-07-30
Invited
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[Presentation] PFSへの期待2015
Author(s)
柏川伸成
Organizer
PFS ワークショップ
Place of Presentation
国立天文台(東京都)
Year and Date
2015-07-09 – 2015-07-11
Invited