2016 Fiscal Year Annual Research Report
超遠方クェーサーを用いた初代ブラックホール形成と宇宙再電離の解明
Project/Area Number |
15H03645
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
柏川 伸成 国立天文台, TMT推進室, 准教授 (00290883)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 初期宇宙 / ブラックホール / 宇宙再電離 / 銀河形成 / 銀河共進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、すばる望遠鏡の大集光力と広視野撮像機能を駆使した系統的かつ独創的な手法によって、I)赤方偏移7を超える超遠方クェーサーを多数発見し、またII)赤方偏移6付近の遠方クェーサーの特に暗い種族を検出すること、を目的とする。これらはいずれもこ れまで技術的な問題によってその達成が不可能であった。これにより、現代天文学の大問題となっている、1)初代ブラックホールの形成過程、とII)宇宙再電離の過程、についての新たな知見の獲得をめざす。これら初期宇宙に関する2つの未解決過程について初めて実 効的な観測のメスを入れ、飛躍的な理解を得ることが、本研究の2本の大きな柱である。海外の同様な観測計画に対して既にリードしているこれまでの研究をさらに発展させ、周辺分野に波及するような初期宇宙の研究におけるブレークスルーを狙う。 昨年度に引き続き撮像観測データから効率的にクェーサー候補を選択し、順次分光観測することによってクェーサーであることを確定する作業を精力的に行った。その結果、これまでに32個の遠方クェーサーならびに9個の遠方銀河を発見することができた。ここまでを成果論文の2本目としてまとめ、現在査読中である。また、近赤外観測および電波観測を行うことにより、遠方クェーサーについて、ブラックホール質量、ガス質量、宇宙再電離についての知見が得られるため、観測プロポーザルを複数提出し、いくつかについては観測が実行され現在データ解析中である。 一方、これに関わる原始銀河団探査については、同じくHSCサーベイデータから効率よく原始銀河団候補を検出する手法を確立し、初期データについて応用したところ179個の原始銀河団候補を検出した。初期成果としてサンプルの性質、およびクェーサーとの空間的相関について論文を提出したところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSCサーベイ観測は当初予定に比べて若干の遅れがあるものの概ね順調に進行している。追観測についても時間獲得には成功しているものの、これまでにない暗い種族であることから期待されたほどのクオリティのデータが得られておらず、今後再検討が必要である。しかしながら順調に観測データは蓄積されつつあるので今後一層研究を加速させていきたい。成果論文については現在2本を提出、査読中であり、優れたペースで成果を獲得しつつある。 初期大規模構造についても、初期データから代表的なサンプルを構築することができた。ここに至るまでには紆余曲折あり、数々の問題に直面したが、研究協力者の協力もあって従来のサンプル数に比べて50倍というこれまでにない大規模サンプルの構築に成功した。初期成果としてのクェーサーとの空間相関については内外の学会で成果報告を行い、いづれも高い評価を受けた。これまで統計的なサンプルがなかったために解決できなかったこの課題についてユニークなアプローチを用いることによって初めて得られた成果である。こちらも現在2本の論文を提出、査読中である。これらを応用発展した研究の方向性についても検討をし、いくつかについては解析を開始した。この問題と関わるダークマターとバリオンの関係について探る研究について、昨年よりも遠方における宇宙についての成果を挙げ、受理された。昨年から開始した新たな発展研究として、QSO吸収線系から探る原始銀河団候補探査、QSO周囲環境における銀河形成に関わる研究なども海外研究者と協力しながら継続して行っているが、残念ながら望遠鏡の技術的なトラブルに見舞われて期待されたデータは未だ得られていない。超遠方のクェーサーを検出するための新しい観測装置の提案を着想し、多くの問題点を洗い出すとともに順次その問題点を解決するために、将来的な大型科研費の獲得に向けて活動を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本グループの手中にはまだ多くの遠方クェーサー候補天体が残されており、この追観測を精力的かつ系統的に行い、サンプルを増やしていく。サンプル数を増やすことにより赤方偏移6の光度関数を精度よく決定し成果論文に仕上げたい。電波観測や近赤外観測などの 追観測についても観測提案中であり、いくつかについては観測が実行されたので、来年度にはこれらから再電離や初期ブラックホールに関するある一定の成果を得たい。一方で分光追観測で副次的に得られた遠方銀河、および銀河とクェーサーの両方の性質を持つ新たな天体種族ついてのスペクトルについて新たな研究の方向性も探っている。 初期原始銀河団についても、クェーサーとの空間相関について興味深い結果は得られたが、一方で新たな謎も生まれた。これを解決するための新たなデータ解析を開始したので、これについても一定の成果を得たい。できれば理論予測との比較を行いたいので適切な理論モデルを選定し、理論研究者の協力を仰ぎたい。遠方クェーサーの研究と並行して研究を進める上で、初期宇宙における環境と、再電離、そしてブラックホール、クェーサー活動性の発現、の間の相関について、さらにはブラックホールと銀河の共進化についての考察を進めたい。 同時にQSO吸収線系の研究という新たな方向性について海外研究者と共同研究を開始した。これについても観測提案が受理されたが、望遠鏡の技術的トラブルに見舞われたため、来年度再挑戦してデータを取得する予定である。このデータに基づき銀河から検出される高密度領域とガスから検出されるそれとの違いを系統的に調査していきたい。 新たな観測装置開発についてはメーカーとの協力のもと進めているが、なかなか技術的な壁が大きく、大幅な進展はみられていない。来年度の進展に期待したい。
|
Research Products
(18 results)
-
-
-
-
[Journal Article] The redshift-selected sample of long gamma-ray burst host galaxies: The overall metallicity distribution at z < 0.42017
Author(s)
Niino, Yuu; Aoki, Kentaro; Hashimoto, Tetsuya; Hattori, Takashi; Ishikawa, Shogo; Kashikawa, Nobunari; Kosugi, George; Onoue, Masafusa; Toshikawa, Jun; Yabe, Kiyoto
-
Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 69
Pages: 27-37
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Discovery of an Enormous Lyα Nebula in a Massive Galaxy Overdensity at z = 2.32017
Author(s)
Cai, Zheng; Fan, Xiaohui; Yang, Yujin; Bian, Fuyan; Prochaska, J. Xavier; Zabludoff, Ann; McGreer, Ian; Zheng, Zhen-Ya; Green, Richard; Cantalupo, Sebastiano; Frye, Brenda; Hamden, Erika; Jiang, Linhua; Kashikawa, Nobunari; Wang, Ran
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 837
Pages: 71-81
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Similarities and uniqueness of Ly α emitters among star-forming galaxies at z = 2.52017
Author(s)
Shimakawa, Rhythm; Kodama, Tadayuki; Shibuya, Takatoshi; Kashikawa, Nobunari; Tanaka, Ichi; Matsuda, Yuichi; Tadaki, Ken-ichi; Koyama, Yusei; Hayashi, Masao; Suzuki, Tomoko L.; Yamamoto, Moegi
-
Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
Volume: 468
Pages: 1123-1141
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Direct evidence for Lyboldsymbol{alpha } depletion in the protocluster core2017
Author(s)
Shimakawa, Rhythm; Kodama, Tadayuki; Hayashi, Masao; Tanaka, Ichi; Matsuda, Yuichi; Kashikawa, Nobunari; Shibuya, Takatoshi; Tadaki, Ken-ichi; Koyama, Yusei; Suzuki, Tomoko L.; Yamamoto, Moegi
-
Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters
Volume: 468
Pages: L21-L25
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
[Journal Article] Detection of an oxygen emission line from a high-redshift galaxy in the reionization epoch2016
Author(s)
Inoue, Akio K.; Tamura, Yoichi; Matsuo, Hiroshi; Mawatari, Ken; Shimizu, Ikkoh; Shibuya, Takatoshi; Ota, Kazuaki; Yoshida, Naoki; Zackrisson, Erik; Kashikawa, Nobunari; Kohno, Kotaro; Umehata, Hideki; Hatsukade, Bunyo; Iye, Masanori; Matsuda, Yuichi; Okamoto, Takashi; Yamaguchi, Yuki
-
Journal Title
Science
Volume: 352
Pages: 1559-1562
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
[Journal Article] A Systematic Survey of Protoclusters at z ~ 3-6 in the CFHTLS Deep Fields2016
Author(s)
Toshikawa, Jun; Kashikawa, Nobunari; Overzier, Roderik; Malkan, Matthew A.; Furusawa, Hisanori; Ishikawa, Shogo; Onoue, Masafusa; Ota, Kazuaki; Tanaka, Masayuki; Niino, Yuu; Uchiyama, Hisakazu
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 826
Pages: 114-138
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
[Presentation] The Redshift Selected Sample of Long Gamma-Ray Busrt Host Galaxies: The Complete Metallicity Measurements at z < 0.412016
Author(s)
Niino, Y.; Aoki, K.; Hashimoto, T.; Hattori, T.; Ishikawa, S.; Kashikawa, N.; Kosugi, G.; Onoue, M.; Toshikawa, J.; Yabe, K.
Organizer
Eighth Huntsville Gamma-Ray Burst Symposium
Place of Presentation
Huntsville(アメリカ)
Year and Date
2016-10-24 – 2016-10-28
Int'l Joint Research
-