2015 Fiscal Year Annual Research Report
有限密度格子QCD ー 実験と観測への寄与を目指して
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15H03663
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 純 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (30130876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國廣 悌二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20153314)
大西 明 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (70250412)
保坂 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10259872)
初田 哲男 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 主任研究員 (20192700)
隅谷 孝洋 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 准教授 (90231381)
稲垣 知宏 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 教授 (80301307)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | QCD / 格子ゲージ理論 / 数値シミュレーション / 化学ポテンシャル / 相図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、有限密度状態のQCD(量子色力学)の振舞いを数値シミュレーションによって調べ、実験、観測と比較できるレベルの結果を得ることである。このための定式化としては格子QCDがもっとも基本的な枠組みであり、化学ポテンシャルを導入することで有限密度状態の数値的研究が可能となる。 しかし、有限密度格子QCDは「符号問題」という困難があることが知られており、これまで多くの試みがなされたが、小さな値の化学ポテンシャルでの計算しか計算が実行できなかった。この範囲では、有限密度での相転移を調べることはできない。 本計画では、カノニカル法という手法を採用し、その技術的困難と解決法、有限密度での物理量の測定とその検討を行ってきた。カノニカル法にはいくつかのアプローチがあるが、本年度は虚数化学ポテンシャルを使って計算を行う方法、バリオン化学ポテンシャル以外の荷電化学ポテンシャルに適用する可能性を検討した。 純虚数化学ポテンシャル領域では符号問題が存在せず、そこで得られたカノニカル分配関数を使って物理的な実化学ポテンシャル領域の情報を引き出すことができる。これまで、この試みは不安定であると考えられてきたが、通常の倍精度をはるかに超える有効数字100桁以上の多倍長計算で安定した結果が得られることがあきらかになってきた。また、電荷化学ポテンシャルは、クォークがバリオン数と電荷を持つことから、実際に構成することが可能であり、荷電分布などをカノニカル法で計算可能であることが明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高エネルギー重イオン反応の陽子数分布をカノニカル分布から導いたバリオン数分布と比較し、J-PARC、NICA等のエネルギー領域でQCD相図について重要な情報が得られる可能性を見いだした。 純虚数化学ポテンシャル領域で20点のバリオン数の期待値を求めることに成功した。このバリオン数からグランドカノニカル分布について計算する手法を見いだし、テストデータで正しい答えが得られることを確認した。このデータを内挿することで全虚数化学ポテンシャル領域のデータが求まれば、それから実化学ポテンシャル領域の情報が得られる。
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Strategy for Future Research Activity |
純虚数化学ポテンシャル領域で実測したバリオン数の期待値を、測定点以外の点に内挿するための、定式化を行う。 また、比較的小さなサイズにおいて、カノニカル分配関数を厳密に求め、純虚数化学ポテンシャルから得られたものと一致するか確認する。 カノニカル分配関数はバリオン数が大きくなると急速に減少する。クォーク・グルーオンの閉じ込め相(ハドロン相)でこの傾向は顕著である。このような小さな量が、モンテカルロシミュレーションの揺らぎの中で消えてしまうことはないのかを確認する。 荷電化学ポテンシャルからカノニカル法で求めた荷電分布やその高次モーメントを実験と比較する。 現在は、uクォーク、dクォークのシミュレーションを行っているが、これをs-クォークの入ったものに拡張し、ストレンジネス化学ポテンシャルの解析ができるようにする。
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Research Products
(7 results)