2016 Fiscal Year Annual Research Report
強磁場下の超高強度レーザー駆動無衝突衝撃波とイオン加速
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15H03758
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
田口 俊弘 摂南大学, 理工学部, 教授 (90171595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三間 圀興 光産業創成大学院大学, その他の研究科, 特任教授 (30033921)
城崎 知至 広島大学, 工学研究院, 准教授 (10397680)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レーザープラズマ / 超高強度レーザー / 強磁場 / 無衝突衝撃波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,強磁場下でのレーザープラズマ相互作用とビーム伝播に関して,研究代表者と分担者がそれぞれの分野について以下の研究を行い,以下の結果を得た. 1.強磁場下での電子ビーム伝播のシミュレーションにより見つかった電子流のせき止め現象については,せき止める原因となる大強度ホイッスラー波の発生が斜め伝播波の非線形結合によるものであることがほぼ特定されたため,論文にまとめて投稿した.この際,3人のレフェリーによる様々な質問が出されたため追加のシミュレーションを行い,最終的に掲載された.また,ここまでの研究ではビーム電子が粒子で背景電子が流体のハイブリッドコードを用いて,イオンを動かさずに解析していたが,最終目標である無衝突衝撃波との関連を調べるために,イオンの運動を粒子として取り扱うことのできる計算オプションも追加してイオンの影響も調べた. 2.超高強度レーザーと相対論的遮断密度近傍(NRCD)プラズマとの相互作用シミュレーションでは,レーザー吸収による高速電子の生成・伝搬とレーザーの輻射圧が誘起するイオン流の研究を進めることができた.高速電子については,2流体不安定性により発生する強い電磁場揺動による散乱とエネルギー緩和により,局所的に電子がほぼ熱平衡分布になることを発見した.一方,輻射圧によりイオンも運動してプラズマが圧縮されるが,圧縮波は衝撃波として伝搬し,その構造が高速電子由来の電磁場の揺らぎと強く結合して決まることを発見した. 3.高速点火核融合における強磁場の電子ビームガイドへの応用に関しては,加熱実証実験に対する統合シミュレーションにより,磁場ガイドによる加熱効率の向上(1.6倍)を示し,燃料中に添加したCuからのKα過程から放出される光子数と加熱率の関係を評価することによって実験との比較を進めた.また点火実証実験においてビームガイドに要する磁場強度評価計算を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大強度ホイッスラー波による電子ビームのせき止め効果については,Journal of Plasma Physicsに投稿した結果,レフェリーから様々な質問に答えるため追加のシミュレーションを行わなければならなかったが,本筋の結果に対して特に否定的な意見は出ず,最終的に掲載された.また,イオンの効果を含んだシミュレーションコードへの改良も行い,イオンの効果の解析を開始することができた.
NRCDプラズマと超高強度レーザーとの相互作用については,大学院生を研究補助として雇用して粒子シミュレーションを行なわせることで様々な新しい現象を見つけることができ,その結果現れる電磁プラズマ現象を解析して,中国深セン市における2016 IHEDP等の国際会議で発表するとともに,一部論文としてまとめることができた.また,本科学研究費のメンバーと大阪大学の長友准教授のグループとの研究協力により,NRCDプラズマにおけるイオン加速についての研究を新たに開始し,結果を国際会議(DDFI Workshop)において発表を行なうと共に論文を執筆することができた.
高速点火レーザー核融合における外部印加磁場による電子ビームガイディングに関しては,加熱実証実験を対象とした統合シミュレーションの結果を欧州物理学会の招待講演で発表し,論文としてまとめた(T. Johzaki, et al., Plasma Phys. Control. Fusion 59, 014045 (2017)).また,点火実証実験に対する粒子シミュレーションによる予備計算を行い,10kT級磁場がガイディングに必要であることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
強磁場下での電子ビーム伝播による大強度ホイッスラー波の発生に関しては,イオンを動かすシミュレーションコードを作成して解析を開始しているが,これを様々な条件の下でのパラメータランを行い,無衝突衝撃波発生との関連を調べる.また,その際起こると思われるイオン加速などの様子も解析する予定である. NRCDプラズマプラズマと超高強度レーザーとの相互作用の研究に関しては,ワイベル不安定性とそれに続く逆カスケード(自己組織化)で現れる大きいスケールの電子電流フィラメントと輻射圧により発生する無衝突衝撃波との相互作用を明らかにする.また,レーザー強度の変調によるリップル衝撃波の発生と伝搬について研究を行い,無衝突衝撃波によるイオン加速への効果を明らかにする予定である.さらに,ここまでの研究を総合することで,強磁場下での電子乱流とイオン乱流との相互作用の基礎課程を明らかにする予定である. 高速点火核融合における強磁場の電子ビームガイドへの応用に関しては,引き続き,加熱実証実験における加熱効率評価法の確立と,点火温度実証のための条件を明らかにする.また点火実証実験を対象とした電子ビームガイディング特性とともに,10kT級強磁場下での電子加速特性について,解析を進める.
今年度は本研究課題の最終年度なので,以上の3研究を取りまとめて,強磁場下での無衝突衝撃波の理論の構築と応用分野への指針を確立すると共に,次期科研費申請に向けて強磁場下でのレーザープラズマ研究における新しい枠組み構築への方向性を探る.
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Research Products
(24 results)