2015 Fiscal Year Annual Research Report
非定常ダウンバーストシミュレータの開発とその建築物風荷重・耐風性能評価への応用
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15H04071
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
植松 康 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60151833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 泰雄 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 建築災害対策研究官 (70201994)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ダウンバースト / 非定常性 / 風荷重 / シミュレータ / 数値流体計算 / 風洞実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダウンバースト(DB)については、わが国ではほとんど研究が行われておらず、不明な点が多い。本研究では、DB内の気流性状やDB内に置かれた建物に作用する風圧・風力の特性を明らかにするために、独自にDBシミュレータを作製した。 DBは、台風等従来の設計で対象としている境界層乱流とは異なり、1)瞬発的噴流であること、および、2)親雲の移動に伴って移動することにより、強い非定常性を有する。本研究では、この非定常性が建物に作用する風圧・風力に及ぼす影響に着目し、実験並びに数値計算を行うことで、対DB設計用風荷重の提案を目的としている。 平成27年度は、まずダウンバーストシミュレータの製作を行った。現有の装置(平成22~23年度科研費「挑戦的萌芽研究」により作製)を改良し、上記の非定常性をそれぞれ再現できるように改良した。具体的には、送風機の吹き出し口にシャッター(開口速度最速約0.2秒)を設けることで瞬発的噴流を再現し、また、送風機を一定速度(最速約2m/s)で移動させることで実現した。 DBシミュレータを用いた実験により、DB内の風速分布と時間変化を測定し、既往の観測結果と比較することで概ね適切にDBを再現できることを確認した。次に、建物模型を用いて風圧分布の時間的変化を測定した。それらの結果を境界層乱流を用いた風洞実験結果と比較したところ、建物に作用する風力はDBに対する建物位置によって向きも大きさも大きく変化し、境界層乱流中での値の1.3倍以上にもなること、境界層乱流中では屋根には上向きの風力が作用するが、DBの場合には位置によっては下向きの風力が発生するため、自重や雪荷重との組み合わせを考える上で重要となることを示した。 次に、クーリングソースを用いた数値流体計算を行い、下降流の気温が流れ場や建物に作用する風圧分布に及ぼす影響を検討し、その影響の大きいことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成22~23年度の挑戦的萌芽研究「ダウンバーストシュミレータの試作と風荷重評価の試み」の成果に基づく研究であり、これまでの研究で得た数多くの知見が活かされているので、概ね予定通りに進んでいる。 先の研究では、定常DBを再現する装置を試作し、その妥当性を検証したが、ダウンバーストのもつ大きな特徴は、「瞬発的噴流であること」および「親雲の移動に伴ってダウンバーストも移動すること」による非定常性である。これらの非定常性を適切に再現できるよう、本研究では装置の改良を行った。すなわち、送風機の吹き出し口にシャッターを設けることで瞬発的な噴流を再現し(シャッター速度は最速約0.2秒)、送風機自体をレール上で一定速度で移動できるようにした(最大移動速度約2m/s)。 非定常ダウンバーストによる地表近傍の風速分布や建物に作用する風圧分布の時間的な変化を実験により把握することができ、対ダウンバースト設計に対して基礎的な知見を得ることができたと考えている。 また、数値流体計算を試み、下降流の気温が風速分布や建物の風圧分布に少なからず影響する可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は概ね予定通りに研究が進んでいるので、平成28年度も当初のスケジュールに従って研究を進める予定である。特に、力を入れる課題は、1)建物に作用する非定常風圧・風力の特性の詳細な把握と境界層乱流中での結果との違いの明確化、2)建物形状(特に屋根勾配)が風圧・風力の特性に及ぼす影響の把握、3)数値計算モデルの妥当性検証と改良、である。3)に関しては、下降流の気温の影響を把握するため、空気より重い流体を用いた流れの可視化を試みる。
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Research Products
(2 results)